コロナを「5類にする」ってどういうこと?(アーカイブ記事)

池田 信夫

きょう岸田首相は関係閣僚と新型コロナを5類に変更することを協議する予定です。4月に変更するという報道もありますが、これまでも何度も「見直し」や「検討」をしては、厚労省の反対で先送りしてきました。今度はほんとにやるんでしょうか(2022年11月29日の記事の再掲)。

Q. 今コロナはどういう位置づけなんですか?

新型コロナは、特措法で新型インフルエンザ等感染症に分類されています。これはわかりにくい名前ですが、季節性インフルエンザとはちがう「全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」です。

Q. 「国民の生命及び健康に重大な影響を与える」とはどういう意味ですか?

病状の程度が「季節性インフルエンザにかかった場合の病状の程度に比しておおむね同程度以上」だという意味です(特措法15条)。この条件を満たさないと新型インフル等感染症とはみなされないので、特措法の対象にはなりません。

Q. コロナはインフルより病状の程度が重いんですか?

それはコロナとインフルの重症化率と致死率を比較すればわかります。財政制度等審議会の資料によれば、次のようにコロナ第7波(オミクロン株BA4・5)は60歳以上でも重症化率は0.14%、致死率は0.474%で、重症化率も致死率もインフルより低く、「季節性インフルとおおむね同程度以上」とはいえません。

財政制度等審議会の資料より

Q. つまりコロナは「新型インフル等感染症」ではないということですか?

法律上はそういうことです。政府のコロナ分科会に提出された大竹文雄さんと小林慶一郎さんの意見書でも、特措法の対象からはずすべきだと提言しています。

Q. 特措法の対象からはずすとどうなるんですか?

今の特別扱い(感染症法の2類以上)をやめ、季節性インフルと同じ5類扱いになるでしょう。今コロナの検査や治療にかかる費用は全額が公費負担ですが、次のように5類になると自己負担になります。

毎日新聞より

Q. 5類だと治療費は全額負担になるんですか?

全額が自己負担になるわけではありません。インフルと同じ扱いだとすると、検査や治療は3割負担、ワクチン接種は全額負担になります。

Q. ワクチンが全額負担だと、高くて打たない人が出てくるんじゃないですか?

コロナワクチンの原価は約4000円といわれているので、インフルのように全額負担にすると、接種が少なくなって感染が広がるかもしれません。どっちも同じぐらいの風邪なので、普通の保険診療と同じ3割負担にしてはどうでしょうか。

Q. 5類にすると、感染状況がわからなくなるのではありませんか?

2類以上は全数報告で、検査して陽性だった人を全員、入院させるのが原則です。でも実際には、オミクロン株の陽性は多すぎるので、全部報告すると発熱外来が混雑し、救急車が間に合わないケースが増えます。病院の現場では、実質的に5類相当の扱いにしています。

Q. では建て前は2類のまま、運用を5類と同じにすればいいのではありませんか?

最大の違いは費用負担です。上の表のように、今のままだと検査も治療もタダ(全額公費負担)なので、ちょっと熱が出たら発熱外来に行く人が多く、救急車も混雑します。引き取り手のないお年寄りが、ずっとベッドを占拠するケースも増えています。

Q. いつまでも2類以上の扱いになっているのはなぜですか?

コロナには莫大な補助金が出ているからです。会計検査院の調べによると、2020~21年度に使われたコロナ関連の補助金は94.5兆円。特に病床確保料は2兆円にのぼり、患者のいない「幽霊病床」が問題になっています。

これは病院にとってはすごい臨時収入で、補助金を当てにしてベッドを増やした病院も多い。5類に格下げされると、その設備投資がむだになるので、日本医師会は格下げに反対しています。

Q. コロナ感染者が増えると混乱するんじゃないでしょうか?

分科会の尾身会長は、8月の第7波のとき「感染者が多すぎて対応できないので、5類に落とすことも検討すべきだ」といっていましたが、第7波が終わると何もせず、今月になって第8波が始まったら「今は格下げを検討するときではない」といっています。

感染が増えたら「格下げしよう」と騒ぐが、のどもと過ぎれば熱さを忘れ、また感染が増えると「今はその時期ではない」という繰り返し。この調子では永久に騒ぎが続き、膨大な税金が無駄づかいされるでしょう。