中国のゼロコロナ政策についに国民が声ならぬ「白い紙」を掲げ始めました。中国では体制に対する批判は厳しく罰せられるため、白い紙は無言の抵抗という訳です。政権からは明白な指針が聞こえきておらず、難しい判断を求められそうです。
きっかけの一つは11月24日に新疆ウイグル自治区で起きた火事でその際にコロナ規制があだとなり、相当数の死者が出たとされます。相当数の死者とは公になっている10名より実際ははるかに多いのではないかという情報の不確定さ故に断言できないのです。これは国民の不満が相当溜まっていて、きっかけがあればすぐに反応する状態だったともいえ、今後、似たような「惨劇」が起きれば一気に事態が悪化する公算はあります。
一方、政権の立場は不明瞭です。当初は習近平政権はある程度の折衷的な緩和策を提示するのではないか、とされました。そうすれば中国経済に改善の兆しが生まれるので世界経済としてもほっとできるという楽観的な見方もありました。アップル製品を作っている工場での抗議運動により稼働が落ちており、製品が十分に供給できない不安感からアップルの株価が下落するなど世界への影響も看過できない状況ともいえます。
しかし、政権は緩和すれば爆発的なコロナ感染の拡大とその対応で国内が大混乱することをより恐れているという立場のようです。様々なシナリオがあるようですが、大局的にみれば中国製のワクチンは効きが悪い、患者を収容する施設が十分にない、仮に何十万人もの高齢者を中心とした死者が出れば政権がぐらつく可能性がある、当然ながら習近平氏の手腕と中国経済のダメージは相当厳しいものが予想されます。世界経済へも波及し、その影響力は計り知れないものになる、と想像できます。
となれば上述の緩和策による経済復活という楽観視のシナリオはリスクと背中合わせで、日本やアメリカを含め世界が混乱に陥ることもあり得るとなります。
中国のコロナ対策は当初は素晴らしいものとされました。感染者を徹底的に追い込んだからです。平たく言えば「力づく」での対策です。それは考えるまでもなく、中国全体を一種の無菌状態にしようとしたわけです。ですが、抑え込みという発想そのものが私には荒唐無稽であります。100歩譲ってそれが出来たとして数年後、人工培養の中国人が諸外国の人と接点を持った時、中国人は自分を守る免疫がないので高いリスクを負うことにならないでしょうか?これでは中国発のコロナ無免疫者災害になりかねません。そんな事が起きればそれは人災という声すら上がるでしょう。
私は免疫学者でも何でもないので専門的なご意見はありがたく頂戴しますが、結局はゼロコロナ政策こそが中国の最大のリスクではないかと思うのです。イアンブレマー氏が2022年の最大のリスクはゼロコロナと年初に指摘していたのですが、本当にそういうことになりそうです。
習近平氏はイデオロギーの塊です。一度決めたことを簡単に方向転換するタイプでもありません。とすれば現状の「白い紙」抗議運動程度ならスルーする可能性は高いと思います。つまり国民は解放されないとみています。仮にこの抗議がより過激に、そして死傷者を伴うような当局と住民との衝突が起きればこれも軍隊なりを動員してでも力づくで抑えてしまうでしょう。ですが、それは習近平氏が大変な危機との背中合わせになるとも言えます。
だいぶ前に私はこのブログで中国を変えられるのは誰か、ということを記しました。それは外交的圧力でもないし、経済制裁でもありません。中国国内の国民の蜂起、これが最大のリスクなのです。文化大革命の際の終わり方もドラマがかっていましたが、実質は内乱という大混乱を通して政権が変わります。
習近平氏はアリババも不動産会社もIT企業も学習塾も抑え込むことに成功しました。香港も実質的に取り込み、政敵も今はほとんどいません。台湾政策も虎視眈々と進めるでしょう。が、これは習氏が裸の王様になりつつあるともいえます。独裁化すればするほど国内の反発力は高まり、何かあれば大きな衝撃になりやすくなるともいえましょう。
あくまでも個人的考えですが、免疫という発想は大事だと思うのです。人間は個体を守る本来の力を皆、持っています。が、その本来持てる力を人々は均等に発揮できません。出来ない人のために治癒方法として現代医学が進化しました。よって弱い人はワクチンを打つことである程度緩和できるかもしれませんが、ワクチンは万能でもないし、副反応や更に悪い結果をもたらすこともあります。こうなると確率論に近い気がします。
本質的にはヒトが本来持つ治癒させたり環境適応したりする能力を自然に身に着けることがより重要ではないかと思います。その点、中国の無理やりの政治ショーのような対策は大変不自然でその歪は必ずどこかでしわ寄せがくるだろうと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月30日の記事より転載させていただきました。