もはや反カルトが脅威である

令和4年7月8日以降、旧統一教会を当然のこととして「カルト」と評価しておきながら誰一人としてカルトの説得的な定義ないし定義を導き出す方向をも示していない。ある人は霊感商法を根拠に旧統一教会をカルトと呼び、ある人は信者間の養子縁組の事実を根拠に旧統一教会をカルトと呼ぶが、結局、カルトとは何なのさっぱりわからない。

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夏頃には、いい大人がしかも政治家・編集委員・学者といった社会的地位も責任ある立場の方々が大真面目な顔で、時には沈痛な面持ちで「旧統一教会はカルトである。そんな組織が日本の政治に…」といった具合で論争していたわけだが、カルトのことがよくわからないまま論争していたと考えると頭が痛くなる。

カルトの定義について説得的な定義や共通理解がないままワイドショーでは10年以上前に他界した文鮮明の映像と共に旧統一教会のカルト性が強調され、そこから「カルト規制法」なるものの必要性が説かれ、それもいつの間にか消え、あろうことか内閣総理大臣が「旧統一教会解散のための質問権の行使」というあべこべとした言いようがない決定を下し驚いたと思えば被害者救済が異様に強調され、それを受け最近、団体への寄付に関する法律が制定された。

旧統一教会被害者救済新法が成立 「霊感」使った寄付勧誘に刑事罰 | 毎日新聞
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済法と改正消費者契約法が10日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決され、成立した。救済法について自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主が賛成し、共産とれいわ新選組は反対した。救済法は「霊感」を使って不安をあおる悪質な寄付勧誘行為を禁止し

この法律をマスコミは「旧統一教会被害者救済新法」とか「統一教会被害救済法」とか呼び、要は旧統一教会限定の被害者を対象とした法のごとく呼ぶが、実のところその内容は旧統一教会に限定するものではなく、それどころ宗教団体に限るものですらなく全業種に影響を及ぼすもの、要するに全国民に関わるものである。全国民に関わる法律になぜ「旧統一教会」の冠をつけるのか筆者にはさっぱりわからない。ただ報道モラルが底割れしたことだけは伝わる。

この法律の制定に最も影響を与えたのが仮名(小川さゆり氏)の人物、次いでペンネーム(鈴木エイト氏)の人物だろう。仮名の人物が国会に参考人招致されるなど憲政史に残る「珍事」ではないか。

7月8日以降、旧統一教会と政党との「接点」が問題視され、思うにそれは得体の知れない勢力による政策決定への影響を問題視することだと思うが、接点批判者は仮名とペンネームの人物が政策決定に影響を与えたことには何も疑問を感じないのだろうか。

仮名だろうがペンネームだろうか要は堂々とワイドショーで主張すれば良いのか。そんな理屈はないはずだ。

ちなみに接点批判は旧統一教会による日本国憲法第16条で保障された請願権の行使すら問題視している。請願権は参政権の原初であり、死刑囚でもテロリストでも認められるし認めなくてはならない。請願権の行使を批判することは反日本国憲法行為である。

https://rkb.jp/news-rkb/202212124078/

ここまでくるともうカルトよりも反カルトの方が社会的脅威である。反カルトの錦の御旗があればどんな無茶でもまかり通る。反カルトによって日本は時間の浪費を強いられている。核戦争の危険も高まりコロナ禍で空前の支出をしているときに何をやっているのだろうか。私達が今やることは特定宗教団体をカルトと呼び、その異常性を強調することではなくカルトを定義できなかった事実を真摯に認めることである。

そして法に依らなければ国民の権利を制限することはできない、法に依っても制限できない権利があるという常識を取り戻すことである。カルトの語から解放されることが政治の正常化への第一歩である。