佐倉市議会の文教福祉常任委員会で、委員長の不信任決議と辞職勧告決議が立て続けに可決したにもかかわらず、辞職を突き付けられた委員長が職に居座り続けるという「あきれた珍事」が発生しました。
今回の原稿では、委員長職を辞さないさくら会平野裕子議員の振る舞いと、地方議会の「委員長をクビにできない制度上のバグ」について報告します。
事件は、12月13日に開催された文教福祉常任委員会で発生しました。
常任委員会とは、その議会で審議する議案の「本気の審議の現場」です。
例えば文教福祉常任委員会なら、教育委員会や福祉関連部門の担当者と当委員会に委員として任命された議員が一堂に会し、上程議案についてその場で一問一答の真剣勝負の審議が行われます。
佐倉市議会では、4つある常任委員会はすべて動画非公開であり、公開が進まないのはひとえに「さくら会議員団」の数限りない反対の議決によるという事実はご存じのことと思います。
ここでは、一つだけ例をあげておきます。
問題発生
問題が発生したのは、佐倉市に新設される図書館の駐車場利用料の審議の際でした。
事案が発生した議案を説明します。
【審議議案概説】
2023年3月、佐倉市に図書館が新設される。ついては、主に違法駐車を予防する観点から、本図書館に駐車料金を設定したい。ただし、駐車後3時間まで料金は無料とし、それ以降の駐車については30分100円を徴収し、上限を700円としたい。
さらに、私より前に質疑した委員の審議により、図書館や隣接する市立美術館の他、周辺の商店街の店を利用した結果駐車時間が3時間を超えた方ならば、申出さえあれば駐車料金は免除する、という内容が明らかになりました。つまり、ほとんどのケースが、申出ひとつで無料となるという制度です。
私の前には3名の委員による入念な質疑がなされていたため、私としては用意していた質問はあらかた必要がなくなりました。そこで私は、3時間まで駐車料金無料という設定の根拠は何か?という質問の後、以下3つの要望を伝えることにしました。
- 図書館や美術館、近隣商店街に所在する商店や飲食店を利用して3時間を超えた来場者は駐車場が免除されるとのことだが「本規定を知る人と知らない人」との間で不公平が発生しないよう、その広報を(館内掲示物、ネット、広報誌等で)来場者や市民に対してしっかりお願いしたい。
- 3時間超の駐車に関する有料or無料の判断について、公平性が担保できるように、規定の整備をお願いしたい。例えば、新図書館近くに立地する佐倉小学校に運動会で来た市民は無料か?商店街内にあるお寺に墓参りに来た参拝者は無料か?商店街内に所在する宿泊施設に泊まった客は無料か?等詳細を詰めてほしい。
- 駐車場利用者中、不正利用を繰り返した場合、不正利用車両等の貼り紙をする場合もある、という件について執行部より説明があった。その姿勢は賛同する一方、貼り紙対応となる不正の頻度やレベルについて、明示的な規定を作成してほしい。
この要望を伝えている最中、あろうことか平野委員長が、「要望は質問ではないので発言は認めない」と私の発言を制止したのです。
平野委員長の謎の制止命令
全国で1700以上ある市町村議会の委員会審議で、執行部に要望を「してはいけない」議会など、間違いなくありません。もちろん佐倉市も同様で、これまで私や平野委員長を含むほぼすべての議員が、委員会で執行部に要望をしています。
私は、委員長がどうかしてしまったのかと思い確認したのですが、発言制止命令の主旨に誤認はありませんでした。さすがに委員長のこの振る舞いは、「議員の言論の自由」という議会の根幹を踏みにじる行為であり、過去の議会運営に照らしてもフェアではないため、「命令を取り下げなければ不信任決議を提出する」旨委員長に伝えましたが、それでも取り下げなかったために、やむなく「平野委員長の委員長不信任決議」を提出し、同委員会で速やかに可決しました。
さらにその後も、平野委員長は委員長席に着座したため、藤崎委員より「不信任決議が可決されてなお委員長職にとどまるつもりか?」と確認しましたが、続投を続ける旨本人から回答があったため、今度は川口議員から「平野委員長の辞職勧告決議」が上程され、これも可決しました。
しかし、それでもなお、あろうことか平野議員は委員長続投の意思表明をしたのです。自分がなした命令に対する反省も、私への謝罪もなく、ただ続投するとしました。議会事務局に確認したところ、委員長本人が辞職の意思表明をしない限りクビにはできないそうです。
以上、自分たちがこれまで武器として使い続けてきた「過半数の原則」を2度にわたり無視し、自分になされた不信任の総括すらしないさくら会平野議員の、驚くべき振る舞いに関するレポートでした。確かに、これでは動画公開したくないはずです。なお、この平野議員、ついこの間まで佐倉市議会議長でした。
皆さま、これが佐倉市議会の、嘘偽りない実態です。
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