親の進路アドバイスで子供は時代遅れになる!?

黒坂岳央です。

子を持つ親としては積極的に受け入れたくはない事実に、「親は子供に無用な進路アドバイスをしてはいけない」というものである。おそらく、この発言は一部の親から猛烈な反感を買うだろう。それはよくわかっている。だが、令和に入り世界の変化がこれまで以上に早くなった。そんな現代において、親がアドバイスをするほど子供の進路のジャマになると思っている。

実際、良かれと思ってしたアドバイスが子供の人生のジャマをしていると感じる光景はかなり見てきた。親が子供にやれることはアドバイスではなく、環境作りだけであろう。これは賛否がわかれそうなテーマだが、あくまで個人的な独断と偏見による持論を展開したい。

Vagengeym_Elena/iStock

親と子の感覚のズレは激しくなった

親が子供の進路にあれこれと口を出すのは、まさしく親心からであり意図的にジャマをしようとしていないのは明白だ。しかし、親子世代でのジェネレーションギャップは、時代の変化が激しくなる分、ドンドンその差は開いていく一方である。熱心にアドバイスをすることで、子供は時代遅れになる。

筆者は企業採用のインタビューページを時々見るのだが、そこで若手が答えている内容に驚かされることがある。

先日見た自衛隊については、「お金が溜まりやすい。仕事が安定しているからと親に勧められて入隊。親も安心してくれました」というものだし、ある大手企業についていえば、「小さい頃から親の憧れの企業で手に職を勧められたから」というものだった。

また、過去に自社採用したパートさんの子供は3人共自衛隊に就職、その理由は「安定してるから勧めた。武器メンテ役は敵地に赴かなくてもいいので安心」と答えており内心とても驚いた。

さらに仕事柄、20代前半の若い人からキャリア相談を受けることがあるが「今の会社(業種)は親の勧めで。親に転職するつもりだと伝えたら”石の上にも三年”と返され悩んでいる」という話もある。中には「IT系は安定してないからやめとけ」と言われ、公務員になった人もいた。

当然だが、親の世代と現世は大きな感覚の違いがある。昔の古い感覚を今の世代に伝えると、選択をミスリードしかねないし、実際そうなっているケースは少なくない。

親の過干渉が優秀な子をダメにする

これは何度も実際に見てきたのだが、正直な話親の過干渉が優秀なはずの子をダメにすると思っている。

ある東大・東大院出身者が「親から受けた教育やしつけで最もよかったことはなんですか?」という質問に対して次のように答えていた。「余計な干渉をせず、放置してくれたこと」と。そして「勉強しろ、は一度も言われなかった。勉強しろと言われないとできないようなら、勉強に向いていない」と回答していたのがすごく印象的だった。これはネグレクトからの放置ではなく、尊重しての見守りであり、学習環境は与えられたと思うのだ。

実際、東大合格者インタビューなどを読んでも「親の熱心なアドバイスのおかげ」といったことは書かれているのはあまり見ない。人によって多少違いはあれど、自主的に勉強し、質の高い教育を受け、そっと応援してくれたことで合格に導かれたという趣旨の回答をしている。

親は環境と経験を与えるだけでいい

前述の通り、令和はあまりにも変化の速度が早い時代だ。親が子供の進路に余計な口出しをするほど、子供は時代遅れになってしまう。それでは親が子供にできることは何もないのだろうか?否、それは環境や経験を与えるのである。

子供が特定の分野に興味を持ったら、意向を尋ねてその興味関心を伸ばしやすい教育を与えるなどである。筆者の妻の弟は昔からコンピューターやゲームに興味があったそうで、両親は積極的に欲しがるものを与えてきた。

賛否はわかれるかもしれないが、新作人気ゲームの発売日などでは、何でも屋を雇って早朝から行列に並んで入手を代行するくらいに希望するものを徹底して与え続けたそうである。そんな彼は今、東京でエンジニア職についている。

また、筆者の妻は親に頼んで海外留学をして英語に興味を持ち、大学では英語ディベートで活躍して英語力を磨いた。やはり子供が興味関心を持つものに、資金援助をするなど積極的に与えるのが本来の親の役割だろう。

これは仮に子供が高額なコンピューターを求めれば、アルバイトをして自分で買わせるよりこちらで用意してやり、一日も早くそのコンピューターでやりたいことを好きにさせる、というイメージである。

その際見極めるべきは、自分が本心からやりたいことがあって求めていることか?もしくは他人の影響を受けて一時的にほしいと思わされている状態なのか?である。他人に触発され、求めることには意味がない。手に入れた瞬間に興味を失うからだ。しかし、本心からやりたい何かがあり、それを叶えるための道具として求めているなら親は多少頑張ってでも与えるのがよいと思っている。

親は子供を想うからこそ、つい進路に口出しをしたくなると思う。しかし、それは多くの場合においてジャマにしかならない。親が真に求められているのはアドバイスではなく、子供をそっと見守る胆力ではないだろうか。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。