ロシアで存在感増す民間軍事請負会社=ワグナー・グループ

ロシアのプーチン大統領はウクライナ戦争でワグナーの傭兵グループ(Wagner-Gruppe)に依存してきた。民間軍事請負会社(PMC)のワグナー・グループはウクライナ東部のドネツク地方での戦闘で重要な役割を担当し、時には正規のロシア軍を指揮下に置いているという。

「新年の希望の木」チャリティーキャンペーンに参加したプーチン大統領(2022年12月22日、クレムリン公式サイトから)

ウクライナへの攻撃において、オリガルヒのエフゲニー・プリゴジン氏はワグナー・グループに毎月1億ドル以上を投入しているという。ちなみに、プリゴジン氏は2014年にウクライナのドンバス戦争に戦闘員を派遣するために「ワグナー・グループ」を設立。中南米やアフリカ諸国にも傭兵を派遣するなど様々な軍事活動に関わってきた。プーチン氏の全面的支援を受けるプリゴジン氏はクレムリン内でもその存在感を強めている。

ワグナー・グループは、ロシア国防省とは独立し、「プーチン氏の私兵」と呼ばれる。ドンバスの戦いでは何カ月もの間、ロシア軍はワグナーの傭兵に頼ってきた。「ワグナーが、ロシア軍や他のロシア省庁にとってライバル的な勢力となってきた」と受け取られている。

ワグナー・グループの傭兵軍は最大5万人規模と推定され、そのうちの1万人が戦闘経験のあるベテラン戦闘人。傭兵の4万人はロシアの刑務所からの囚人兵の新兵という。過去数週間、ワグナーの傭兵たちは主にドネツク地域に配備された。ウクライナの都市バフムットでの戦いでは、約1000人の傭兵を失う大きな損失を被っている。

興味深い情報は、ワグナー・グループが使用する武器は北朝鮮からの装備だという。ドイツ民間ニュース専門局n-tvが22日報じた。米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は、「ロシアの傭兵グループは戦闘では北朝鮮からの武器を使用している」と指摘。それに先立ち、ロイター通信社はアメリカ政府高官の発言を引用して、「北朝鮮が先月、歩兵が使用するミサイルを提供した」と報じていたが、それを裏付けたものだ。

米軍関係者によると、「北から輸送された軍事物資の量は、ウクライナの戦争の行方を左右するほどではないが、北朝鮮が今後もワグナーに多くの戦争物資を供給しようとしていることに懸念を抱いている」と報じた。カービー報道官は、「北朝鮮は明らかに国連の制裁に違反している」と批判した。

米諜報機関は9月初め、「ロシアが北朝鮮から弾薬を購入している」と報じていた。具体的には「米当局者は短距離ミサイルと砲弾の疑いがある」という。西側軍事専門家はロシアが北朝鮮から武器を入手していることについて、①ロシア軍の武器が不足してきたこと、②対ロシアの制裁が効果をもたらしていること、と分析している。

なお、北朝鮮が11月、ロシアに鉄道で軍需物質を輸送したという情報について、北朝鮮外務省報道官は22日、「荒唐無稽で、事実ではない」と完全否定し、「事実無根の朝露間の武器取引説より、ウクライナ軍に殺人武器を提供している米国の行動に関心を注ぐべきだ」と反論している。

参考までに、ベラルーシの民主化活動家アレシ・ビャリャツキ氏やロシアの団体「メモリアル」と共に2022年ノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権擁護団体「市民自由センター」のリーダー、オレクサンドラ・マトイチュク氏はn-tvとのインタビューで、「プーチン大統領はウクライナ侵攻の理由としてウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題を挙げていたが、プーチン大統領はNATOなど恐れてはいない。恐れているのは自由だ。ウクライナが民主化され、ウクライナ国民が自由を得ることを恐れてきたのだ」と述べ、「ウクライナ戦争は単にウクライナとロシア間の戦いではなく、全体主義的独裁国と世界の民主国との戦いだ」と指摘し、「ウクライナ戦争を止めることができなければ、プーチン・ロシアは他の地域でもその覇権を拡大していくだろう」と警告を発している。

プーチン大統領がウクライナ戦争でワグナーの傭兵グループに頼り、北朝鮮からは弾薬や軍事物質を入手している、という情報が事実とすれば、軍事大国ロシアの名が廃る。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。