人はなぜ、お金に固執するか?:日本人がお金を消費に回さないわけ

「大人のクリスマス」があったらソックスの中に札束が入っていればいい、と思う方は多いでしょう。では、その札束、何に使うのか、と聞けばうーん、今は思いつかないからとりあえず貯金しておく、という人もこれまた多いのが事実かと思います。

コロナを介していろいろ配られたお金が消費に回っていないと麻生副総裁が苦言を呈していたのを覚えている方も多いと思いますが、これは日本人の性でもあります。「お金はいくらあっても邪魔にならない」と言いながら結局、使い道がないままあの世にも持って行けず、残念無念となるのは誰でも同じです。そこで笑うのは財務大臣。「へへへ、これでまた相続税ががっぽり入るぞ」と。

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日本人は清貧を美徳とします。もちろん、そうではない人もいますし、そもそもいくらまでが清貧なのか、具体性に欠ける部分もあります。ウォーレンバフェット氏の生活が地味なのはよく聞く話。なぜなのか、私は分かる気がするのです。彼ほどの富豪になると欲しければ手に届かないものはないけれど、最新のものより、使いやすく、使いこなすことに意義を感じているのだと思っています。

私はロードバイクに乗りますが、せいぜい15万円ぐらいのものでしょう。この世界としては相当の安物です。理由はどれだけ高性能な自転車を買っても性能を引き出せるほどの脚力がないのです。「豚に真珠、猫に小判、ヒロに高級自転車」という格言そのものなのです。

数日前、会社の人達と事務所の前に新しく出来たイタリア料理店に行きました。書き入れ時のはずなのに客はディナータイムに最初から最後までいて我々を入れて3組だけ。フードが出てきてわかりました。見栄えは悪くないけれど、どれもこれも不合格なのです。私はグルメではないけれどこの程度なら普通に家で作れる、と。

私はお金を払うこととはその価値を買うことだと考えています。例えば握り寿司は家で絶対に出来ません。理由は寿司ネタの刺身は1枚ずつ買えないからです。もちろん、シャリも無理です。1合、2合を普通に炊いてもあの味は出せないでしょう。(なぜ、日本のスーパーで「おうち握り寿司キット」を売り出さないのか、不思議ですよね。)

先日、介護疲れでご主人と息子を殺害した妻の事件簿をちらっと見ました。何十年にも渡る介護疲れについては理解します。そのストレスを発散するため、毎日のようにタクシーで買い物に出かけ、一日1万円ぐらい使っていたと。多分、ろくなものを買っていなかったと思います。何でもよいのです。お金を払って手にすることに快感を感じているだけで無意識の行動だからです。酒やタバコと同じなのです。

この手の使い方をするのは女性に多いのもあらかた統計で分かっています。100均やドン キホーテに群がるのは6-7割が女性でしょう。これは洋の東西を問いません。無数にある商品からお宝を探すのが大好きなのです。男性はそういうのは面倒くさいのです。ピンポイントでこれと決めています。事前に欲しいものを調べる点は男女とも変わらないと思うのですが、女性は目の前に想定外の商品があると突然方針転換することがしばしば起きます。今夜のおかずの焼肉をスーパーに買いに行ったら焼き魚になった話は日本の常識話です。

では年寄りはどうでしょうか?私の知る日本人の高齢男性は「がめつい」です。「金の亡者」と言える人も結構いらっしゃいます。特に不動産で小銭を稼いでいる方にその手の人は多い気がします。ではそのような方々はどこで散財しているのか、と言えば場末のスナックのママに貢いだりするのでしょうか?こんなのは昭和の話だと思うでしょう。でもその年齢の人たちは昭和の人なのだから当然です。(私も含めて)彼らは令和になった今でも昭和なのです。

私が俯瞰するに、日本人はモノに対しては「無いから買う」のではなく、「買い替えたいから買う」です。それは無くてもいいけれど、買うならこだわりぬくのです。そしてバーゲンを虎視眈々と狙っています。家電量販店はそのために存在するのですが、価値観という点では何も生み出していません。文化事業を大事にする豊島区長がまた家電量販店か、と苦言を呈したのはよく分かります。

では若い人はといえば「限定品」に飛びつく傾向が見て取れます。私がカナダに輸入している雑貨も限定品ばかり。言葉を返せば「多品種小ロット生産」のマーケティング以外の何物でもありません。先日ご紹介した中国の衣料アクセサリー会社、Sheinも1ロット100単位ぐらいですので常に「売り切れ」。だから今この瞬間にゲットしないともう買えないというマーケティングの手品に騙されてるわけです。

結局、売り手は様々な手を使って売らんとし、顧客は価値観を見出そうと騙し合いの世界のような気もするのです。

その中で人々がお金に固執するのはなぜか、立ち止まって考えてみるとよくわからないこともあります。老後の心配話は「いざ」という時のことですが、日本ほど医療レベルに恵まれ、高額医療費制度で上限の支払い額が決まっていれば病気療養の保険金が下りれば儲かることもしばしばです。結局、冒頭の話のように「札束はウェルカムだけどとりあえず、貯金かな」というのがオチです。特に年金暮らしの余裕がない方ほど貯金する傾向があるように感じます。となれば、お金に固執する確固たる理由が私には見いだせないのであります。誰かご存じなら教えて欲しいです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月25日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。