「学ぶ力」がない人からオワコン化する

黒坂岳央です。

人間はほとんど無力で生まれ、生後の真っ白なキャンパスにいろいろな知識やスキルを書き込み資本主義社会をサバイバルする力を高める。これは生後程なくして、天敵から走って逃げる力を持って生まれる馬などとはかなり異なる。人間は生後の成長のために未熟で生まれることを受けいれた、極めて特殊な動物である。

学び続けることはサバイバル力に直結する。だが、社会に出ると「学んだ力」だけで勝負し、「学ぶ力」が衰えていく一方という人はかなり多い。

BeritK/iStock

学んだ力では生き残れない

かなり多くの日本人の知力ピークは18歳である。ここでいう知力の意味するところは、先天的に獲得済の才能などの他、勉強をして知識をつけることも含まれる。つまり、多くの人は大学受験期に本気で学ぶが、その後の人生はOJTや仕事中に得た知識・スキルだけで仕事をして新たに学ぶことをほとんどしない。

しかし、高学歴で「学んだ力」はかなりの力を持って社会に出た人でも、10年、20年と経過するとその学んだ力だけでは世渡りは難しくなっていく。世の中は絶えず高速で変化しており、その時代に必要な知識やスキルがなければ要求水準に見合わない人材になってしまうためだ。

自社の取引先の中には、未だに手書きFAXがテキストコミュニケーションという法人もある。直接来訪か電話のみでなければ発注を受け付けない企業すらも存在する。

これまではそのスタイルでもやってこられた。しかし、このようにコミュニケーションコストが高ければ、取引を敬遠するところも出てくるし、新規取引先の開拓にはつながらない。必然的にジリ貧になっていく。筆者が知るフルーツ業者はAmazonや楽天などに出店し販路を広げて繁盛しているところもあれば、ITを拒絶し続けて先細りしていく業者もある。

明暗をわけたのは、「学ぶ力」の差だ。

学んだ力より、学ぶ力の方が重要

人は学生時代までは専業学習者となる。学生の本分は勉強であり、勉強のみに集中することを許された身分は、世界的に見て非常に恵まれている。

だが、これからの時代に求められるのは「学ぶ力」の方である。学生時代の勉強で得られることの本質は「頭の使い方」「あらゆる分野に通じる教養やスキル」である。だが、ここまでで勉強を終えてしまえば、今の仕事場でしか通用しない人材になってしまう。そうなれば、実質的な市場価値は年々落ちていく一方だ。一般論として加齢とともに体力の衰えや扱いにくさから、採用に後ろ向きになる企業が増える。そのため、相対的価値は年齢とともに下がっていくのが普通だからだ。

だが、学ぶ力が高ければいつからでも市場価値を高めることは可能だ。特に新しい領域については、分かる人が極端に少ない。ITの一部の分野は海外で盛り上がっていても、日本では分かる人が極端に少なく、情報も英語でしかリーチできない分野も多く存在する。そういった分野なら、ライバルも少なく伸びしろもあるので既存の産業に比べて参入障壁は小さい。

現時点で知識やスキルが一流レベルでなくても、過去の学んだ力は求められることなく必要最低限のことを学べばすんなり参入することができるのである。後は仕事をしながら学び続ければその道のフロントランナーであり続けられる。つまり、学ぶ力は過去に学んだ力を凌駕するチャンスにあふれているのだ。

学ぶ力に必要なこと

新しい良識をイチから学ぶために、必要な知識やスキルには何があるだろうか?

これは学生時代に歴史の年号を暗記する、というものとは質的に異なる。「この分野の全体像はどうなっている?押さえるべき木の幹はどこか?優先度の高いものはなにか?」といった、素早く重要性の高い部分を把握し、限られたリソースを優先度の高いものにアロケーションしていく力である。

筆者はWeb制作や動画編集、PhotoshopやIllustratorの使い方は、それぞれ数日間の独学で使い方を覚えた。分厚い専門書を買ったり、講義形式で授業を受けるといったことは一切していない。「自分がやりたい成果物を決める→そのためには何が必要か?」というゴールから逆算して、必要最低限のものを使いながらセルフOJTしていったイメージである。

Photoshopの使い方やスキルは、ある1つのYouTube解説動画を頼りに、途中で一時停止しながら紹介される操作をひたすら真似して使い方を獲得した。今ではブログやYouTubeで使い方をわかりやすく説明しているものが多数あるので、活用しない手はないだろう。

「未知の分野はどう学べばいい?」と惑う人はまず、自分がやりたいことを明確にしてその最終目標から逆算して1つずつのプロセスを身に着けていくやり方が最も速習できるはずだ。そしてこの方法は即日から誰でも取り組める。コストほほぼゼロで済む。テキストも教師も要らない。

新しい分野を何も学ばず、スキルを身に着けなければ時代に取り残されてしまう。恐ろしいことだが、誰一人このトレンドに抗うことはできない。「昔はすごかった」という過去の人にならないためにも、学ぶ力は常に磨いて置く必要がある。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。