今年の10大ニュース、国内編は安倍氏殺害、これがあまりにも強烈で他はいらないというぐらいでした。派生的に旧統一教会問題がランクインしていますが、実は2022年はニュースネタが割と少なかった年でもあります。実際、10大ニュースの本家本元、読売新聞の国内10大ニュースランクを見ると10のうち、5つがスポーツと将棋という平和ぶりとなっています。
では本当にそんなにニュースネタがなかったのか、と言えば印象に残るニュースは限定されていたかもしれませんが日本を取り巻く外交問題はいろいろありました。また国内を見れば政治がらみでは常に何らかの不満があったと思います。その中で、岸田首相の評価が7月10日の参議院選頃から突如逆風にさらされます。ご記憶にある方も多いと思いますが、それまでは「聞く力」を訴えた首相でした。著書「聞く力」が爆発ヒットした阿川佐和子氏は昨年、岸田首相と官邸で会っています。ただ、企画の思惑通りにならず、阿川氏の影響はあまりなかったようだと阿川氏は後述しています。
岸田氏は本当に聞く力があるのか、これが私には全然わからないのです。聞いたフリのような気もするし、数ある意見のうち、ある特定の意見だけを聞き入れてあとは聞き流すどころか、耳にすら入っていないような感じが見受けられる時もあるのです。
「聞く力」は民主的政治手法と言えます。民の声に耳を傾け、その声を反映させるべく政治を行うという訳です。が、物理的にそれは不可能であります。なぜなら意見は無数に出るわけでその中から万人に満足してもらえる名案を一つ提示することはできません。集合の最大公約数という考え方と同じなのですが、小学校の時の授業で習ったように最大公約数など全体のごくわずかであり、中途半端すぎて誰も満足しないのです。
では、51対49の理論で過半数が満足なら49%が不満でも推し進めるという民主主義の原型に立ち戻るべきか、となれば最大公約数型に慣れてきた人々は旧来型の51:49はもはや、受け入れにくくなっていると言えるでしょう。
安倍晋三氏は首相時代に自分の信念を政治に反映した方でした。何をやっても常に反対派が強烈な拒否反応を示します。これはドナルド トランプ氏と重なる部分でもあります。両者とも私が見るにしっかりした情報を基にあるべき方針を固め、反対派を押しきる準備を当初から周到に行っていました。ある意味、策士です。
最近、思うことは岸田氏は、安倍氏型の政治姿勢を真似したいのではないか、と思うのです。直近の旧統一教会関連法案、防衛費、原発の建て替え方針など比較的唐突で頑なな姿勢を見せています。一方、支持率はそれに反比例するように下がっています。なぜなのでしょうか?
私は岸田氏がイメージ戦略を間違えたのだと思います。阿川佐和子氏が首相は私の本は読んでいなかったようだと述べています。首相に聞く力などそもそもないのに、自分のセールスポイントを安倍氏の剛腕型と対比させ、国民に寄り添った優しさのある政治をやりますよ、という間違ったメッセージを国民に送ったように見えるのです。
が、その化けの皮が剥がれてきたのが選挙のあとで、安倍氏が暗殺されて仮面を被っているどころではなくなります。閣内からは不祥事が相次ぎ、初めは慮る姿勢を見せましたが今となっては何人辞表を書かせても同じだろう、といった具合となり「首切りフミオ」ならぬ「ジェイソン フミオ」と申し上げたいです。(「13日の金曜日」というオカルト映画シリーズで仮面を被ったジェイソンが次々首を斬っていくのが思い浮かびました。)今、秋葉復興相の更迭が決まりそうですが、閣僚からはそれ以外に更に数名の更迭、交代候補者が取りざたされています。
岸田氏は安倍氏のような判断力、決断力、実行力のある政治家を目指し、できれば偉大で歴史に残る日本の首相になりたいと思っているでしょう。が、実際のそのスタイルは個人的には立憲の野田元首相に似ている気もします。自らではなく、押されて動くのです。今、改めて2012年11月14日の解散総選挙を決めたあの有名な野田/安倍両氏の党首討論を見たのですが、岸田氏は安倍氏のようにはなれないな、とも思ったのです。
国民が持つ岸田文雄という人物像に対して今、我々が目にする岸田氏は別人物です。内閣支持率がいまだに下げ止まらないのは国民が岸田文雄評に迷いが生じているからかもしれません。岸田氏には安倍氏ほどの訴える力はありません。というより安倍氏が出来すぎで近年の日本の政治界ではまれに見る才能を持っていたといったほうがよいでしょう。岸田氏はまずは国民とのパーセプションギャップ(認知差異)を修正すること、そして丁寧に自分の言葉で国民との対話をすることに努めた方が良い結果をもたらすのではないか、と思います。
私の見る限り、岸田政権は当分、続くとみています。だからこそ、岸田氏には気がついて欲しいのであります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月27日の記事より転載させていただきました。