ドイツの著名なウイルス学者クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)によると、Covid-19のパンデミックは収束したという。ウイルス学者の教授は26日、独日刊紙「ターゲスシュピーゲル」とのインタビューで、「ドイツで現在、多くの病原体が流行しているが、コロナ・ウイルスはマイナーな役割しか果たしていない。この冬は最初の風土病のCovidの波が来るだろう」と指摘している。
同教授は、「今の冬が過ぎると、国民の集団的免疫は非常に広範で弾力性があり、ウイルスは来夏までその感染力を維持できない。唯一の制限はコロナ・ウイルスの変異だが、現時点ではそれも非現実的だ」というのだ。要するに、中国武漢発の新型コロナウイルスは3年後、その牙を収め、通常の風土病になったというわけだ。ドロステン教授の警告解除表明といえるわけだ。
コロナのパンデミック終了宣言はドロステン教授だけではない。編集ネットワークドイツ(RND)とのインタビューで、連邦政府のコロナ専門家評議会のメンバーで集中治療医のクリスチャン・カラギアニディス博士は、「小さな波はまだ来るだろうが、コロナのパンデミックは段階的に収束するだろう」と予測している。
ドイツでは国民の免疫状況は堅調であり、集中治療室にいるCovid患者は大幅に減少している。常設ワクチン接種委員会(STIKO)のトーマス・メルテンス委員長は10月末に、「現在、コロナは風土病だ。パンデミックは主に、人々が免疫学的経験のない世界的に未知の病原体が集団に侵入するという事実によって定義されるが、それはもはや当てはまらない」と語っていた。
ドロステン教授は今年1月初めに、「年末までにはパンデミックは収束を迎え、風土病的な状況(endemischen Zustand)に近づくだろう」と予測していたから、状況はその通りになってきたわけだ。教授は、「われわれはコロナウイルスを防ぐために全国民に長期的にワクチン接種を持続的に行うことは出来ない。ウイルスは最終的には全ての国民に感染するだろう。それを回避することは出来ない。Sars-Cov-2(新型コロナウイルスの正式名称)を完全に制御下に置くことができると考える人はいたが、それは間違いだ。一方、Sars-Cov-2が無害であると考え、ウイルスの感染による集団免疫説が正しかったという意味ではない」という。(「『パンデミック』から『風土病的状況』へ」2022年1月18日参考)。
教授の説明によると、ワクチン接種を進めながら、コロナ感染の爆発をコントロールしていき、ワクチン接種率がある段階に到達すれば、ウイルスに感染の自由ハンドを与え、人間は免疫力を更新していく。そしてウイルスと人間が共存できる段階に入っていくというシナリオだろう。その段階になれば、コロナウイルスはパンデミックではなく、風土病的な状態に置かれるわけだ。
ドロステン教授のコロナウイルスのパンデミック収束宣言を受け、ブッシュマン法相は、「コロナ規制の完全撤廃を実施すべきだ」と要求している。
懸念材料は中国のコロナ感染状況だろう。12月7日、中国は習近平国家主席の「ゼロコロナ」政策から規制緩和に乗り出してきたが、ここで新規感染者が爆発的に急増してきていることだ。中国製ワクチンの効果を疑う声すら聞かれる。米国からワクチン提供の申し出もあったが、中国側はこれまでそれを断っている。
未確認の内部推計によると、中国での大規模な感染で今月最初の3週間に2億4800万人がコロナに感染した。それは人口の18%に当たる。中国南西部の四川省の8100万人の住民、首都北京の2100万人の住民の半分以上が感染しているという。病院は過密状態にあり、多くの火葬場では死体を十分に迅速に火葬することができなくなっているというのだ。専門家の予測によると、数十万人の死者が予想されている。中国当局は感染者数、死者数の公表を中止している。感染の爆発で全容を掌握することが難しくなってきたからだ。中国で数億人の感染者が出てくれば、ウイルスの変異株が生まれる可能性も完全には排除できないから、要注意だ。
新型コロナウイルスの感染起源問題は感染から3年が過ぎた現在もまだ全容解明されていない。中国側が感染初期段階のウイルス・データを公表拒否していることが最大の理由だ。パンデミック3年目に入って、欧米ではパンデミック収束宣言が飛び出してきた一方、中国共産党政権はこれまで「ゼロコロナ」でコロナ根絶で成果を上げたと自負してきたが、感染者が爆発的に増加し、対応に苦慮している。
ちなみに、ドロステン教授は中国の感染状況について、「中国の大きな過ちは、国民、特に高齢者の間でワクチン接種に対する意識がなかったことだ。一方、ドイツやヨーロッパでのワクチン接種キャンペーンは、パンデミックと戦うための決定的なステップだった」(ターゲスシュピーゲル紙)と述べている。
コロナウイルス発生起源問題の全容解明には中国の協力が不可欠だ。ウイルス感染症の戦いは人類の戦いであり、国や体制の壁を越えて連帯しなければならない。これが、世界で27日現在、累計感染者数約6億5990万人、死者数668万8524人を出した中国発のコロナ・パンデミックの教訓だったはずだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。