ジョアン・ミッチェル展&モネ - ミッチェル展@ルイ・ヴィトン財団(パリ)

早起き美術館。

”ジョアン・ミッチェル展”&”モネ – ミッチェル”展@フォンダシオン・ルイ・ヴィトン。

マイナス気温の中、9時ちょっと前に到着。いつもなら50人以上待ってる人がいるのに、あまりに寒いからか、20人足らずの列。待つほどもなく入館。人気のない早朝美術館、まずはジョアン・ミッチェルにボンジュー。

ほぼ初めましての画家。色使いのセンスや筆遣いの躍動感に、強い生命力とわくわくを感じる。

とても心地よい色のファランドール。色を嗅げるわけではないのに、思わず深呼吸して、色彩を体に引き入れたくなる。

恒例、”企画展で一枚もらえるなら”は、悩む余地なく、詩と共存させたパステル3連作、Daylight, Sunset, Sundayをセットで。とっても好みの色ニュアンス♪

ミッチェルの作風をしっかり見た上で、”モネ – ミッチェル”展へ。

この2人を繋げたキュレーターに、まずブラヴォ!印象と表現、感覚と抽象の、見事な共鳴と対比。

ミッチェルは、モネが暮らしたヴェトゥイユに居を構え、印象派巨匠と同じ景色を視覚に収めていた。

モネ

ミッチェル

普通に見比べるだけですごく楽しいのだけれど、なんと言っても素晴らしい、というか貴重なのは、ほぼ全ての作品が、モネを含めて(!)額装されてないこと。1~2点、ごくシンプルな額装(というか枠)だったりガッツリ保護ガラスに覆われてる作品もあるけれど、ほぼほぼ生身。だからなのかしら、最近のアート作品への暴挙多発のせいなのか、監視員の数、いつもの倍くらい。

額装されていないからこそ、作品の生々しい息遣いがより伝わるし、作品への没入感もものすごい。

そつなく上手なセノグラフィーの中、2点のモネ越しに見える4点並んだミッチェル、の構造がとりわけ素敵。2人の画家が完全に響き合ってる。

この辺でもう、ワクワク満載というかテンション上がりまくりの中で、最後に、個人的に大興奮の作品が待っていた。

ブルー、モーヴ、オレンジのミッチェル大作の後ろからあらわれのは、同じ色彩を纏ったモネの3枚綴りグランド・デコラシオン(大装飾画)。

オランジュリー美術館にある8点のグランド・デコラシオン同様、ビロン館の庭に計画されたモネのためのパヴィヨンに飾られる予定だったそう。最終的に、オランジュリーに入ることもなく、バラバラに売られ、アメリカの3つの美術館が所蔵してる。

単体としても、ミッチェルとの見比べにしても、圧巻。ひゃ~すばらしい・・・。

なのだけど、大興奮したのはこれではない。

グランド・デコラシオンを満喫した後、ふと振り返ると、目に入ってきたのは、うわぁぁぁ~、”グリシヌ”ではないですかっ!しかも、え?え?2枚!?

左の”グリシヌ(藤)”は、マルモッタン美術館で、最愛”レ・ローズ(バラ)”に次いで、欲しくて欲しくてたまらない大好き作品。ここ数年、いくたびに展示されていなくて恋しかった。愛するグリシヌと、ここで巡り合えるとは、なんと嬉しい。でも、右の作品はなに?これ、知らない。

タイトルを見ると、同時期に描かれていて、右のもマルモッタン所蔵だそう。2枚一緒にいつも飾っておいてよ~。

この連作も、本当ならビロン館パヴィヨンに入れられる予定だったそう。幻のパヴィヨンの壁を、オランジュリーやここに並んだ睡蓮池のグランド・デコラシオンやグリシヌ連作が飾っているのを想像して、くらっとする。クレマンソーがもちょっと頑張ってくれればよかったのにねぇ。ちょっぴり残念。

どの部屋も、ほぼほぼ一番乗りで、ゆっくり静かに作品と向き合える。

グリシヌに見惚れているうちに人が増えてきて、赤ちゃん&幼児相手のアトリエが始まる。いいね、こんなチビのころから、こんな素敵な美術体験ができて。

ミッチェルに触れ、モネ&ミチェルの響き合いを楽しみ、額装なしモネ作品という貴重な体験をし、離れ離れになった連作の再集合にじーんとし、愛する作品との久しぶりの邂逅に歓喜する、素晴らしき週末の朝。

普段なら、美術館は平日朝イチに行くのだけど、FLVは週末だけ63番バスがここまで走り(ただし10時以降)、ダイレクトに家に帰れるので、ここだけは週末に来る。さあ、バスは何時かな?とチェックすると、ありゃりゃ、工事中でここまで走ってない・・。

仕方なく帰りもメトロ。寒さに凍えながら併設公園を散歩していると、孔雀が寄ってきて挨拶してくれたり、リスが顔見せてくれたり、寝起きでうとうとしてるクロヅルが固まってたり。こんな寒いのに、子供たちはもうアトラクションでキャーキャー言ってる。元気だねぇ。

再訪間違いなしの、素敵な展覧会。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。