開き直った岸田文雄が日本を救う

政府与党政策懇談会で会議の取りまとめを行う岸田総理
首相官邸HPより

岸田文雄首相が、次々とやるべきことをやり始めた。

これまで、世論からの攻撃、支持率低下を恐れて、触れることのできなかった、当たり前にやるべき政策を次々と実行しようとしている。

まずは、原発再稼動、耐用年数延長、新規建設だ。温暖化対策、資源高、円安からの景気低迷に対する経済対策としてという観点だけからでなく、当たり前にやるべき、まっとうな正しい政策であれば、論理的に議論を行い、合理性のある政策であれば、世間が雰囲気で情緒的に忌み嫌っているものでもやる、日本政治そのものを真っ当化するための政治行動とさえ言える。

第二に、防衛費の財源は増税で賄うという政策だ。世論も自民党も、増税は最後の手段であり、ほかの手段を尽くしてもどうしようもなければ、最後、国民に信を問う選挙を行うべきだ、などといっているが、そんな議論がまかり通るのは、世界中で日本だけだ。米国は、新しい政策を提出する場合には、財源とセットで提案しなければならず、増税もしくはほかの政策を削ることが前提になっている。これこそが真っ当であり、「普通の」議論である。

そして、これらの議論への批判は、政策の中身だけでなく、進め方にも及んでいる。国民への説明が不十分だ。聞く力の総理はどこへいった。まったく国民の意見を聞いていない、と。政策を打ち出すなら、信を問うために解散総選挙を行うべきだ。

しかし、この議論にも、岸田首相は屈しない。丁寧に説明する。議論は、これから国会で行う。国会で議論を尽くす。そして、テレビの報道番組にも出演し、質問にははぐらかさず、正々堂々と答えている。防衛費増額のための増税については、必ずその増税の法律の国会での決定の前に選挙はあるはずだから、とはっきりと述べた。

この言葉の揚げ足を取って、各社が、増税前に解散を行う、といつ見出しで報道したが、これは嘘で、岸田氏ははっきりと、増税は先だから、それまでに必ず選挙があるはずだ、つまり、衆議院の任期はそれまでに切れるはずだから、選挙がある、と言ったのであって、解散するとはまったく言っていない。

NHKはきちんと事実をそのまま報道したが、それ以外の多くの大手新聞社は、増税するなら解散する、と報道した。しかし、それでも岸田氏はまったくひるんでいない。ぶれない。肝が据わっている。というより、肝を据えた、といったほうがよさそうだ。

岸田氏の態度は立派というより当たり前のことであるし、岸田首相がやろうとしている政策も、すべて当たり前のことだ。しかし、これまで、日本の政治では、この20年、まったくできていなかった。そして、岸田首相も最初の1年は、それほど思い切ったことをしてこなかった。それが、ここにきて、批判を恐れず、戦いを恐れず、踏み込んだ発言、政策の打ち出しを行っている。何があったのか?

おそらく何もない。

閣僚の辞任が相次ぎ、追い込まれて開き直った、という解釈も可能だが、そういうことではないと思う。

あるいは、旧安倍派の次のリーダー争いが空回りし、彼ら(彼女ら)が、勢いを無くしたからでもないと思う。

これら2つの説が、巷の説であるが、私は違うと思う。

それは何なのか。

私の説は、なんでもない、という説だ。

何も起こっていないし、何も不思議はない。何の理由もない。ただ、岸田氏がやるべきことをやりだした。それだけのことだ。

岸田氏がまっとうに振る舞い、真っ当な政策を打ち出す。真っ当なんだから、そこに何の不思議もない。それをいぶかしがる日本のメディア、政治評論家、世論、そちらの方が問題なのだ。君たちには何があったのか。いつから、こんなおかしなメディア、世論、社会、日本になってしまったのか。

ここは日本の試金石だ。日本が真っ当な国、普通の国に戻ることができるかどうか。それを岸田首相は確かめようとしているのだ。

これまで、目先のメディア批判を恐れて、議論となりそうなところはすべて避けてきた。ポピュリズムとメディアに怯え、すべての議論を避け、誰からも文句を言われない、誰にも痛みを与えない議論と政策で逃げ切ろうとしてきた。

しかし、実際には逃げ切れない。日本は破綻する。だから、岸田首相は逃げずに、正面から課題と、日本の課題、日本の運命そして日本社会そのものと向き合うことにしたのだ。

あえて、岸田氏が開き直った理由を挙げるとすれば、それは、日本の状況が追い込まれすぎて、何をしても破綻する状況に陥ったから、そうであれば、正面から堂々と正論で突き進むしか、活路はないと見えたからであろう。

岸田首相の正面突破。これしか、日本を救う道はないのだ。