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RichLegg/iStock
1. 高齢世代の就業率
前回まで15~64歳の現役世代についての就業率や失業率について共有しました。日本は先進国の中で就業率が高く、失業率の低い国のようです。
今回は65歳以上の高齢世代について、就業率や失業率を見てみましょう。
日本独特の傾向がみられそうです。
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図1 就業率 65歳以上
OECD統計データ より
図1は65歳以上の高齢世代の就業率です。
各国とも1970年代から徐々に低下傾向がみられ、1980~200年代を底にして上昇傾向となっています。
就業率 65歳以上 単位:%
日本/アメリカ/ドイツ
1970年 31.6 / 16.4 / 10.4
1980年 25.9 / 12.1 / 4.5
1990年 24.1 / 11.4 / 3.0
2000年 22.1 / 12.5 / 2.7
2010年 19.5 / 16.2 / 4.0
2021年 25.1 / 18.0 / 7.4
日本は他の主要国と比較してかなり高い水準で推移しているのが特徴的です。近年では25%程度となりますので、65歳以上の高齢世代の4人に1人は働いていることになります。
韓国はその日本よりもかなり高い水準です。
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図2 就業率 2021年 65歳以上
OECD統計データ より
図2が2021年の就業率の比較です。
韓国がもっとも高い水準ですが、日本も先進国で3番目に高いようです。日本は高齢世代の中で働く人の多い国と言えそうですね。
逆にドイツやイタリア、フランスはかなり低い水準と言えます。アメリカ、カナダは高めです。
このあたりの順位は、再分配や貧困率などの順位とも関係していそうですね。
就業率 65歳以上 2021年
単位:% 38か国中
1位 34.9 韓国
3位 25.1 日本
9位 18.0 アメリカ
15位 12.9 カナダ
22位 10.3 イギリス
27位 7.4 ドイツ
30位 5.1 イタリア
36位 3.4 フランス
平均 12.6
2. 高齢世代の失業率
高齢世代の失業率についても眺めてみましょう。
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図3 失業率 65歳以上
OECD統計データ より
図3が高齢世代の失業率の推移です。
各国とも現役世代より低めの水準で推移しているのがわかります。イギリスが2000年ころにかけて急激に低下しているのが印象的ですね。
日本は1~3%で推移しているようです。近年ではドイツより高く、イタリアやイギリスと同じくらいですね。
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図4 失業率 20年間平均
OECD統計データ より
図4が高齢世代の失業率について、直近20年間の平均値を比較したグラフです。
ドイツは0.8%で極めて低い水準ですが、日本は21%で先進国平均並みです。
アメリカとカナダが先進国の中では高い水準になっています。
3. 高齢者の働く国日本
日本は高齢世代の就業率が高く、失業率も現役世代に比べて低い国になりそうです。
先進国の中で最も高齢化が進む日本で、高齢世代の就業率が高いという事は、労働者に占める高齢世代の割合がかなり高いことを意味すると思います。
労働者に占める高齢世代のシェアについても見てみましょう。
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図5 労働者数 シェア 65歳以上
OECD統計データ より
図5が労働者数に占める高齢世代のシェアです。
韓国以外の他の主要国が数%代の低水準で推移しているのに対して、日本は極めて高い水準です。
直近では14%近くになります。
労働者の7人に1人が65歳以上の高齢世代となります。
4. 高齢世代の労働者の特徴
今回は65歳以上の高齢世代について、就業率や失業率、シェアをご紹介しました。
日本の高齢世代については、次のような特徴があるようです。
- 就業率が高い
- 失業率が現役世代より低く、先進国では平均並み
- 労働者に占める割合が非常に高い(14%)
高齢世代の就業率は1970年代の方が高かったわけですが、働き方が大分異なる可能性が高いですね。
当時は、女性の場合は家族従業者が多かったと想定されます。男性の場合は、自営業主や役員が多かったと想定されます。
近年では、男性も女性も、自営業主が減り、非正規雇用が増えている傾向があるようです。(参考記事: 男性でも進む「非正規化」、「非正規労働」ばかり増える女性)
もちろん働きたくて働いている高齢者が多いのも事実と思いますが、生活を維持するために働かざるを得ない高齢世代も多そうです。
ドイツやフランスでは高齢労働者が非常に少ないのに対して、日本でこれだけ働く高齢者が多いのは特徴的ですね。
人手不足と言われる低賃金労働を、日本では高齢労働者が担っているとも言えそうです。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。