一瞬で人生を終わらせてしまう「余計な一言」

黒坂岳央です。

口は災いの元と言われる。実際、これは本当にそのとおりだ。問題行動をして社会的な信用を失ったり、犯罪に抵触してしまうなど、口を使わない行動で人生を棒に振るケースはかなり少ない。だが実際に手足を動かさずとも、「余計な一言」を口から出して人生を終わらせてしまう人は相対的に数は多い。

口から言葉を出すことの恐ろしさは、一度出してしまうともうそれを取り消すことができない点にある。もちろん、四六時中発する言葉に気をつけて生きて行くのは窮屈極まりない。そこで「これだけは言わない方がいい」とされるカテゴリを頭に入れておき、それだけは言わないと意識するのがよいだろう。

今回は筆者の独断と偏見で取り上げたものを紹介したい。

AaronAmat/iStock

1. 差別発言や誹謗中傷

過去において、一体どれほどの人が差別発言、誹謗中傷で人生をダメにしてしまっただろうか。有名人タレント、インフルエンサー、時には無名の一般人が勢い余ってSNSや動画で発言してしまった差別発言や誹謗中傷がピックアップされ、拡散してしまい、学生なら退学、会社員なら退職、フリーならビジネスの名誉を傷つけるということが起こっている。

誹謗中傷についていえば、影響力のある人物にSNSで絡みにいき脅迫や名誉毀損に該当する発言をすることで訴訟を起こされ、決して安くない金額と謝罪を余儀なくされるケースがある。Twitterなどで検索すればこうした事例は日次であちこちで発生している。

差別と誹謗中傷はしない方がいい。言われた相手への心理的ダメージも大きいが、それ以上に発言者自身に返ってくるダメージのほうがあまりにも甚大だからだ。つまり、登場人物は全員不幸になる。

そのため、たとえ心の中で思っていても口に出すべきではないだろう。一瞬のスカッとした気持ちを得る代償としては、あまりにリスクリワードレシオ(この表現が適切かはさておき)は悪い。未来永劫、封印して生きるべきであろう。

2. 酔った勢い

酒の勢いで人生を自ら破滅する人はとても多い。酒の失敗といえば、飲酒運転が脳裏に浮かぶ人も多く「自分は運転をしないから」と安心している人もいるはずだ。しかし、安心するのはまだ早い。酒の失敗はそれだけではないからだ。

これは過去の記事でも取り上げた事があるエピソードだが、会社員だった頃に同僚が酒の勢いで役員に絡んだ結果、遠方の支店に飛ばされ左遷された話がある。また、お酒に酔って楽しくなってしまい、「あの男性は未だに母親と一緒に住んで自立できていない」といった根も葉もないデタラメをでっち上げて、相手に知られて大変なことになり、仕事でも人的信用を失ったという話もある。

普段からつい勢いで話しすぎてしまう傾向のある人はそもそも、お酒を飲まないほうがいいだろう。理性のブレーキが外れてしまえば、勢いでどんなまずいことを発言してしまうか分からないからだ。「お酒は飲んでも飲まれるな」という言葉があるが、これは「自分を制御できる範囲内で楽しみなさい」という警告である。

3. 他人への注意

日本は平和である。だが、見知らぬ他人に積極的に注意しにいく正義感の強い人も注意した方が良い。相手が悪ければ返り討ちにあってしまうからだ。これを「余計な一言」にカテゴライズするべきかは賛否分かれるが、自分の身を脅かす発言である可能性を内包することから取り上げることにしたい。

歩きタバコや食事マナー、電車マナーを注意したことで相手から暴力を振られたり反撃して逮捕されてしまったという話は世の中、あまりにも多い。特に注意したくなるほどマナーが悪い相手は、常識的かつ冷静な話し合いが通じない可能性が高い。

理知的に思考できる人は、そもそも目に余るレベルのマナー違反という非合理的な行動を取らないからだ。世の中で起きている目に余るレベルのマナー違反は、この逆の性質の人物が行っている可能性が高い。実際、過去に注意した相手が逆上したパターンでは過去に逮捕歴があったり、すぐに暴力を振るうなどの問題行動を起こしていたことが明らかになっている。相手が悪ければ注意した側は甚大なダメージを被ることになる。それ故に他人に注意する時はそのリスクを考慮した方がよいだろう。

「他人に注意してはいけない」などとは言わない。注意できる人は勇気ある人だろう。だが、世の中には話し合いが通じない人が存在する。「正義がどちらにあるか?」ということなど、やすやすと乗り越えてやってくる危険な人は世の中にいるのだ。

口は災いの元、起こってしまってからではもう二度と発言を取り消すことはできない。その場の感情や勢いだけで発言をすると、自分の人生に大きなダメージを負うこともある。若ければ許されるが、中高年の立場ではそうはいかない。しかし現実問題として中高年世代の方が軽々しく危険な発言をする傾向にある。自分が発言する言葉にはもっと意識して然るべきだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。