「優秀で大胆に見える人」は実はとても慎重な理由

黒坂岳央です。

「優秀な投資家、ビジネスマンほど、リスクを取って大胆に攻める」という印象がある。確かにリスクを前にしても、まるで恐怖を感じる回路が壊れてしまっているかのような大胆さを見せる人もいる。

しかし、実際のところ社会的に大きな成果を納めるような人たちの話をよく聞いてみると、彼らはとても慎重である。統計データなどで示すことは難しい領域の話ではあるが、筆者の視点で取り上げたい。

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大胆に見えて実は慎重

人生は大胆にアクセルを踏んで勝負するべきフェーズと、積極的な攻めを控えて守りに入るべきブレーキ的フェーズにわけられる。優秀な人とはすなわち、客観的視点で自身の置かれた状況を俯瞰する力を持っているということであり、その上でアクセルとブレーキの踏み分けがとても上手だと感じさせられる。

彼らが大胆に見えるリスクテイクの裏には、複数のシナリオを想定しており、リスクリワードの良い局面で最悪を覚悟して最善を尽くす姿勢で取り組んで結果を出しているように見える。実際にはリスク限定的な局面かつ損切りという命綱を確保した上で攻めているのだが、周囲から見れば大きな勇気で全力でアクセルを踏んでいるように見えてしまうこともある。

参考までに筆者の事例を話したい。自分は自社商品を広告を出して販売しているのだが、まずはたくさん広告バナーを作成して少額の投資でスタートする。反応が悪いデータはどんどん削除し、改善を繰り返してデータを集めてその時点での最善手を発見するまで続ける。最も反応が良いデータを作ったら、それを全力で投下して売上を最大化する。

「よく広告ができますね!自分は損をする可能性が不安でできない」と言われたことがあるが、損をしないためにも慎重に慎重を重ねて採算が取れることを確認した上、集中投下しているので恐怖は感じない。アクセルとブレーキの踏み分けとはこのようなイメージである。

慎重だからスモールスタートになる

ビジネスでも投資でも最重要なポイントは共通している。それは「絶対にゲームオーバーになってはいけない」ということだ。

たとえば資金100万円を投資にまわす場合に、いきなり全額100万円を投じてはいけない。金融トレードで不慣れだと操作ミスで予期せず売買間違いをしたり、FXでロスカットになればいきなり退場することになってしまうからだ。

だからまったくの初心者が投資をするなら、まずは1000円だけで、要領を得るまでひたすらトレードの練習をし、リスクリワードやプライスアクションなどの基本概念を血肉化するまでは徹底的に少額で練習するべきだと考えるのだ。だが現実的には、退職金で得たまとまったお金を全額投じて、いきなり失うという人がいる。スモールスタートの概念を知らないか、忘れているからだ。

また、ビジネスにおいてもスモールスタートは重要である。筆者は常にそうしてきた。過去に起業で軌道に乗るまで何度も何度も失敗した。筆者は要領が悪く、人より不器用なので成果を出すまで時間がかかってしまった。いきなり脱サラしていたらおそらく、貯金が溶けていく恐怖から撤退、すなわちゲームオーバーしていただろう。

だが、週末起業でやっていたので2年間ビジネスが軌道に乗るまで、会社から給料を受け取りながら焦らずじっくりできた。だから退場せずに済んだ。その後もいろんなビジネスをやってきたが、その多くは失敗してきた。未だに新規の試みはよく失敗する。しかし、まずはスモールスタートで大き過ぎるリスクを取らなかったので、軌道に乗るまでじっくりやれたと思っている。

筆者は優秀な人物ではないが、優秀な人物が大胆に見えてその実極めて慎重な人ばかりであることを理解し、取り入れたことでなんとかなった。これはあらゆる場面で活用できる概念であると信じている。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。