心理学者が教える、平気で人を裏切る人の恐ろしすぎる本音

残念な真実の一つですが、人の世は暴力で溢れています。よく野性の世界は弱肉強食の世界と呼ばれますが、実は人の世もそれなりに弱肉強食の世界なのです。

私たちも弱肉強食の世界を生き抜いたご先祖の末裔なので、このような人の世の一面もある意味では当然のことです。

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弱肉強食を協力の世界に変える共感能力

ですがご安心ください。弱肉強食の世界で私たちが疲弊してしまわないように、そして悲惨な人生をさけるために、私たちはそれを防いで穏やかに暮らせるシステムも獲得しています。それが、私たち人間の持つ共感能力、人の痛みを感じ取れる能力です。

この能力のお陰で、私たちはお互いに助け合う社会を作れるようになりました。言葉遊びではありませんが、弱肉強食を乗り越えて「弱肉協力」の社会を目指すのが今の私たちの良識です。

しかし、人の世の実態は…

ただ、すべての人がいつでも良識を持って行動してくれるわけではありません。時に共感能力を持たない平気で人を傷つける人に出会ってしまうこともあります。あなたの周りにもいませんか?良識が通用しない人。

殴る、蹴るといった身体的苦痛を与える物理的暴力は社会的制裁を受けやすい時代になったので、そう多くはないかもしれません。しかし、未だに学校でも職場でも、場合によっては遊び仲間の中でも散見されています。

証拠が残りにくく社会的制裁を受けにくい精神的苦痛、社会的苦痛を与える心理社会的暴力は手におえません。暴言はまだわかりやすいので近年では「ハラスメント」として社会的制裁の対象になりやすいのですが、無視や情報からの疎外といった暴力は社会的制裁を受けにくいです。結果、どこのコミュニティにおいても日常茶飯事として起こっていることでしょう。

被害者が気づくのに時間がかかる「裏切り」においては、もっと手におえません。その証拠もほとんどありませんし、場合によっては「正当化」できてしまいます。

裏切りは社会的制裁を受けにくい暴力の一つです。今日も明日も、そしてあなたの周りでも私の周りでも日常的に行われていることでしょう。

平気で人を傷つける人びと

このような「暴力」で平気で人を傷つける人はどういう人達なのでしょうか?彼らを外見で識別することは不可能です。彼らの行動から漏れ伝わる人間性を見ながら、あぶり出すしかありません。

そこで、彼らの恐ろしすぎる本音と、それを見破るサイン(指標)についてご紹介しましょう。

まず、平気で人を傷つける人は概ね次の3つに分類できます。それは、「サイコパス」「マキャベリスト」、そして「真っ当な人」の3つです。

ここでは多くの人が陥る可能性が高い「真っ当な人」に焦点を当てて解説します。

実はものすごく危険な「真っ当な人」

まず、C.ユングによると「真っ当な人」は治療が必要な人です。なぜなら、「真っ当」という概念そのものが人の世には存在し得ないからです。

「真っ当」とは言い換えれば「正論を貫くこと」です。「正論」ですから、言葉を変えれば「正義」です。この世に正義に勝る正しさはない…とあなたは思っていますか?

もし、思っているとしたら、あなたも平気で人を傷つける人の仲間入りができるかもしれません。なぜなら、「正義」とは立場や価値観で変わる相対的なものだからです。

正論とは相対的なものだが…

例えば、日々頑張って働いている従業員にとって、勤労の努力に報いて報酬を上げることは正義です。しかし、仮に5000人の従業員がいる会社の場合、月に1万円報酬を上げると年間で6億円の支出増です。これだけの支出増になると会社の存続に影響が出るかもしれません。

この場合、会社の維持・存続と次の発展に責任を持つ経営者にとっては、6億の資金を従業員にばら撒くより、手元に残して経営の財政基盤の安定を図り、次の事業投資に備えることが正義であり正論です。

なお、労働者の正義と経営者の正義を調整する場として、日本では労働組合活動が保護されています。

このように正義も正論も、立場が異なれば変わってしまう相対的なものなのです。だから、自分は「正義である」、「正論に従っている」、「真っ当である」と思っている人は危険なのです。

独りよがりな屁理屈を「正論」にしてしまう脳の秘密

そもそも、人はそれぞれの立場に感情的にコミットしているので、その立場における「安全」を確保する行動を本能的に選択します。脳レベルで表現すると、理屈以前にひたすら安全を追求する「皮質下回路」と呼ばれるシステムで行動を選択しているのです。

それを調整するのが本来は大脳皮質と呼ばれる比較的新しい、特に人類に進化してから発達した脳の回路の役割です。この回路は他者の立場や気持ちも含めた状況を考慮して「自分だけの独りよがりな正論」に陥っていないか確認する役割を持っています。

しかし、自分を顧みられるほど成熟していない人は、大脳皮質が皮質下回路の判断を正当化する方向に働き始めます。これが「屁理屈」です。実際、このほうが楽ですし、「自分は正しい」という確認で私たちの脳は快楽物質が分泌されるので気持ちいいです。

この「楽さ」、「気持ちよさ」にはまった未熟な人は、「自分は真っ当である」と信じ切って、立場が違う人の正論や気持ちをとことん馬鹿にし、卑下します。こうして、共感能力を失って、自分の身を守るだけの一方的な正論を人に押し付け、それに沿わない人を攻撃する「真っ当な人」ができあがるのです。

他人を虫けら扱いできる心理

彼らの本音は、「自分以外はみんな虫けら以下」です。こういう言い方自体が罪のない虫には申し訳ないのですが、「真っ当な人」の本音はこうなのです。自分の意に沿わない人は「虫けらのように」踏み潰すべきだと思っています。そして、「踏み潰してあげることで、これ以上の間違いを犯す罪から救ってあげた。感謝してほしい。」と思っているのです。

こういう方々を心理学では「ナルシスト」と呼んでいます。ナルシストというと鏡を見てうっとりしているイメージを持つ方も多いかもしれませんが、自分の正論にうっとりするナルシストのほうが多いかもしれません。彼らの被害者にならないように気をつけましょう。

卑劣なナルシストの被害者にならないために

では、どうすれば卑劣なナルシストの被害者にならずに済むのでしょうか?

その答えは、S.フロイト、C.ユング、A.アドラー、3人の心理療法家の名言の中にあります。彼らは数え切れないくらい多くの方の心理療法(心理カウンセリング)を通して、私たちがどう生きれば幸せなのか考え出してくれています。彼らの珠玉の名言には現代をより幸せに生きぬく秘訣が満載です。

僭越ながら、あなたの幸せを願ってこの本を書きました。よかったらどうぞ目を通してみてください。

人は迷いをどう解きほぐせるか ―フロイトかユングかアドラーか

 

 

 

 

杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授)
「心理学でみんなを幸せに」を目指した心理学研究が専門。企業や個人の心理コンサルティングや心理支援の開発、NHKニュース、ホンマでっかテレビ、などTV出演も多数。厚労省などの公共事業にも協力。サッカー日本代表の「ドーハの悲劇」以来、日本サッカーの発展を応援。大人のゼミナール「幸せになる心の使い方」を主催、メンバー募集中。
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