「高所得貧乏」にならないためのたった1つの方法

黒坂岳央です。

「年収1000万円くらいあれば、もうお金のことで悩まなくて済むのに」と思う人は多いのではないだろうか?しかし、それは誤りだ。

所得の増加にマネーリテラシーがついてこなければ、その分出費が増えてしまいいつまでも経済的な不安は解消されることはない。いわゆるパーキンソンの法則である。筆者の住んでいる地元の経営者の中にも所得や資産は多いのに、昔からずっとお金で苦しみ続ける経営者はかなり多い。

「高所得貧乏」にならないためにはどうすれば良いのだろうか?本稿は昇給や転職で収入アップを果たしたものの、なぜかお金に困ってしまうという現象を解消できるよう意識して執筆した。少しでも参考になれば幸いである。

ismagilov/iStock

収入は幻想、支出は現実

経営者、フリーランス、高額所得者サラリーマンと立場は違えど、誤って考えがちなことが「現在の収入が続くことを前提に人生設計をする」ということである。

高額な所得があるということは、大体何らかのチャンスを掴んでいる事が多い。事業で当たったとか、時流に乗って伸びたということである。筆者の知り合いの経営者にもいるのだが、一時期流行ったタピオカ店で稼いだみたいなイメージである。

しかし、そこで浮かれて散財したり生活レベルを引き上げるのは危険である。なぜならこうしたチャンスには賞味期限があり、往々にしてそれはとても短いからである。「一発当てた!」みたいな稼ぎ方をしたビジネスマンは、海の潮がさーっと引くように収入も一気に下がってしまう。これは過去に何度も実例を見てきた。すでに収入は激減してしまった現実があるのに、それを受け入れられずいつでも取り戻せると考えてしまい高額支出を続けてしまう。

だが見るのは幻想ではなく現実である。そう、収入は幻想だが支出は現実なのだ。「今の収入が10年続けば、このくらいの資産になって…」みたいな幻想を前提とした皮算用をして、身の丈に合わない家や車を買うと、それが計算通りにいかなくなった時に非常に苦しむことになる。サラリーマンでも役員待遇で転職したものの、思うような成果を出せず退職することになり次の転職先で収入が半分になったという人も実際にいた。どんな立場の人でも高額な収入に浮かれてはいけないのである。

今の収入が続くという想定で人生の固定費を決めてはいけない。いざ、それが計算通りにいかずなくなった時に困ることになる。

高額支出要素に気をつける

散々脅かしてしまったが、かといって外出時に水筒にお茶を入れて持参する、コンビニを絶対使わず買い物は遠くのドラッグストアでまとめ買い、といった極端な節約はやる必要はないだろう。

少し余談だが「お金持ちほどケチでコンビニは絶対使わない」という話があるが、筆者は違うと思っている。高額所得者ほど可処分所得があり、対時間当たりの経済的価値は高い。そのため、遠方に移動して数十円、数百円ケチっても時給負けして損をすることになるため、この主張には論理的な合理性がない。仮にコンビニで毎日1000円の買い物をしたとして、30日でも3万円程度である。月3万円程度の出費で高額所得者がたちまち生活が困窮してしまうことはありえない。コンビニは時間や利便性が付加価値の本質なのである。

筆者についていえば、昔より収入が増えたことで逆にコンビニの利用回数が増えた。少々コスト高でも、安いものを求めた結果、時間を失う方が圧倒的にダメージはでかいのだ。話を戻すがコストは高額支出にだけ気をつければいい。すなわち「住居、車、見栄」である。高所得貧乏のケースを見ると、そのほとんどがこれらの罠にハマっている。

まずは住居である。「将来の値上がりを期待できるから」と自分に言い聞かせて、身のために合わないタワマンを購入するも当初の目論見通りに資産価値が上昇せず収入が減ってしまうことがあれば今度は返済で苦しむことになる。

究極的にいえば防音や広さなど住居はある程度の機能性を担保できれば、それ以上金額を出してもQOLに違いはない。10億円と1億円のマンションで、生活上の幸福度は10倍は違わないのではないだろうか?身の丈に合い、自分に必要なニーズを満たしてくれるバリューの住居を選定すればいい。

そして車である。特に都心では車はなくても不自由はなく、移動にすべてタクシーを使っても高級車を買って維持するより安い。筆者は昔、高級車に手を出したがすぐやめて今はずっとプリウスである。高級車は概してサイズが大きく運転や駐車がやりづらい。洗車や給油も色々と面倒だ。無用な嫉妬を招くのも本意ではない。その一方でプリウスは燃費がよく、給油の回数も少ないのでとても便利だ。これは人によるがあくまで個人的には、高級車はコスト高で面倒な手間が増えると感じられた。

最後に見栄である。これほど徹底的に無価値でコスト高な出費はないと言える。上述した住居や車でムダに高くする理由もこの見栄という心理的効果に紐づいている。つまり、見栄をなくせば住居や車も高額支出的要素を抑えることができるのだ。コスト高な見栄をなくす方法はここで論じると長くなるので、過去記事お金で解決するべきではない「承認欲求」という病を参照されたい。

筆者は「収入と支出を一緒にあげたらむしろ不幸になる」「収入は幻想、支出は現実」とずっと考えてきたので、年収が増えても経済的負担を感じない工夫を意識してきた。お金など所詮は人生を便利に生きるツールにすぎない。そのツールに振り回されているのでは本末転倒である。人生の主役はどこまでいっても自分自身であり、お金は常に脇役だ。多少、所得が増えたというくらいでお金に主役の座を明け渡してはいけないのである。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。