ニュージーランドのアーダーン首相が辞任を表明しました。しかも2月7日までに辞任と。与党の労働党は急いで党首選を準備し、公式発表からわずか3日後の22日に選挙をするそうです。ずいぶん性急な話だと思います。私はニュージーランドの与党候補者のことは存じ上げませんが、普通、3日後に党首選があると言われたらいくら何でも候補者の心の準備も立候補の検討余地も、そして支援する側の体制を決める余裕すらありません。私だったらそんなに急いで党首選をせず、首相代理を立てて一時をしのぎ、一月後ぐらいに党首選をやるべきだと思います。
さて、この突然の投げ出し辞任とも思われる展開はアーダーン氏が抱えたストレスのように見えます。一直線で低下する支持率は33%と低迷、コロナ対策やコロナデモ、更には51人も亡くなったモスク銃撃事件などが42歳と若い子育て中の首相には心労となったようです。
この心労、案外最近、よく聞かれるようになった気がします。れいわ新選組の水道橋博士参議院議員がうつ病で議員辞職すると発表したのはつい最近です。私の取引先担当者もごく最近、長期休暇となり、お休みするのでご迷惑をかけると連絡がありました。私の日本のクライアントもひどいうつで1年ぐらい頑張ったのですが、相当苦戦しているようで、今回本格療養に入ると連絡が来ました。
何がそこまでストレスフルなのでしょうか?
個人的にはSNSによる情報過多がそうさせる気がします。ご承知の通り、私はこのブログを2007年から本格的に書き始めています。15年間、一度も休まずです。その間、おびただしい数のコメントを皆さんから頂戴していますが、初期の頃、割と心無いコメント、それも1行にも満たないような内容に心を痛めたものです。が、途中で考えを切り替えたのです。「そうか、誹謗中傷に近いコメントを書く方はボキャブラリー不足か表現力が稚拙なのだろう。きっと普通に面と向かえばそんなことを言えないはず」と思い返したのです。つまり、SNSという短いやり取り故に起きる「事故」なのだと。
そう思い始めると悪口を書く人にがぜん会ってみたい気がしてきて、そのうち感情的反応が一切なくなってしまったのです。乗り越えた、ということでしょうか?なので、私は今でも本文に対して「反論ウェルカムです!」の姿勢です。なぜなら自由討論でいろいろな意見を聞きたいのだから好きなように書いて頂くのがこのブログのモットーだからです。但し、誹謗中傷と下品な内容はダメ、一言ではなく理由を述べよと。そしてコメンテーターにも異論を受け入れる気持ちを持って頂くことが大事です。このルールを守れば誰でもウェルカムなのです。
私が北米で学んだ最大の収穫の一つが「答えは一つではない」です。いくらでも思いつく回答案の中から自分にとっての最適解を出すというアプローチは私自身のメンタルを異様に強くしたと思います。
渡辺淳一氏が「鈍感力」という作品でスマッシュヒットを飛ばしました。私はあの読後感はあまりよくなくて、鈍感力が良いというより私は研ぎ澄まされた感性の中で相手を受け入れる包容力こそうまく生き延びるコツではないかと思うのです。私は鈍感、つまり「にぶ男(鈍い男)」ではありません。悪い癖なのですが、相手が反論をして来たら「あぁ、なるほど、その手を使ったのね」という自分の手持ちの答えのリストと照らし合わせて納得してしまい、驚きもしないし、痛くも痒くもないのです。完全に想定外の場合のみ「目からうろこ」なのです。そんなケースは正直、あまりないです。
社長業をしていると判断する際に様々な意見が出てきます。その中で会議をすれば声のでかい奴、口の上手い奴、プレゼンが上手な奴が要領よく人の気を引き、勝者になりやすいのです。私が大の会議嫌いである理由は判断する際にその余計なバイアスが邪魔なのです。だからある決め事をする場合、「意見徴収期間」に様々な外野の声をフラットに聞き、自分でも調べ、考え、最後、決める時は一晩寝てから決める、です。案外すっきりします。なぜなら自分で納得した解だからです。
ストレスを溜めるというのはプレッシャーに押されるか、思いっきり批判され自己否定されるケースが多いと思います。プレッシャーは必ずある時点で終了するので私の場合はむしろ、自分を高めていく調整をします。テストや講演、納期までの作業など多くのプレッシャーは明白な目標と日時が確定しているものが多いのです。これは乗り越えられます。
問題は自己否定です。これは辛いですね。ケースバイケースなので答えを一義的には申し上げられないですが、自己否定されたら普通、殻に籠りますよね。そうではなくて「それならいい。自分は自分の道を歩む」で遊牧民のように新たな仲間を見つけるぐらいの切り替えが一つのヒントになるのではないでしょうか?
上述のアーダーン首相が「もう1年だけでなく、もう1期(首相を務めるため)の準備をする方法を見つけようとしたが、できなかった」(日経)とあります。これは相手とガチンコ勝負するための手法を考えようとするからできないのです。首相が何にストレスを溜めてるのか個別案件がわかりませんが、政治にまい進したいなら子供を夫に1年預けるぐらいのアイディアも必要だし、個別の政治案件でとん挫するなら新たな切り口を出せばいいのです。
その点、岸田首相はストレスに強いのです。首相は今度は子供対策に全力を挙げると。支持率の観点から360度包囲網でとにかく何でも全部手を付けるのです。中途半端なものも多いけれど自分で目線を変えてストレスから逃れているのですね。確信犯かどうかわかりませんが、ある意味、上手な生き方だと思います。
ストレスなんてまっとうに受けるものではなく、かわし方が全てだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月20日の記事より転載させていただきました。