コロナ規制は去り、ウイルスは留まる:規制の撤廃は当然のステップ

オーストリアのヨハネス・ラウフ保健相は1日、閣僚会議後の記者会見で「2020年以来施行してきた新型コロナウイルス規制は6月末をもって終了する。ただ、コロナウイルスは今後も私たちのところに留まるだろう」と述べた。

コロナ規制の完全撤廃を発表するラウフ保健相とエドシュタドラ―憲法担当相(右)オーストリア連邦首相府公式サイトから、2023年2月1日

コロナ規制の完全撤廃を発表するラウフ保健相とエドシュタドラ―憲法担当相(右)オーストリア連邦首相府公式サイトから、2023年2月1日

閣僚会議で決定した内容は、6月末までに全てのコロナウイルス危機対策を終了すること、コロナ下で実施されてきた予防接種、検査、投薬は、通常の医療システムに統合され、その後はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)は届出対象疾患から削除される。個々の州が特別なコロナ規制を実施することは認められない(ウィーン市はこれまで他の州のコロナ規制より厳しい対策を実施してきたが、今後は連邦政府の決定に従わなければならない)。

同保健相は今回の決定の理由として、①国民の間にはコロナウイルスへの高い免疫が出来ていること、②コロナ治療薬が入手可能となったことを挙げている。ラウフ保健相は、「ウイルスは依然、留まり続けるから、私たちはウイルスと長期的に共存していくことになるが、コロナ規制下の危機モードから抜け出し、通常の業務を開始することになる」と説明した。

具体的には、4月30日を期して、病院や介護施設などでのマスク着用義務は終る。リスク・グループに対しても同様だ。そして6月30日をもって新型コロナは届出伝染病ではなくなり、陽性者に対して現在実施されている移動規制は終了する。全ての危機管理チームと委員会は解散される。7月1日から完全な正常化となる。

一方、6月末以降も留まる措置としては、予防接種とコロナ薬は今後も無料で提供し、コロナ検査は症状のある患者やリスクのある患者には無料で実施するが、予防接種センターは解体される。通常の医療システムに移行する。コロナ薬は社会保険によって支払われ、予防接種の費用は連邦政府、州、および社会保障基金の間で分担されることになっている。

報告義務が終了した後もパンデミックの経過をフォローするために、全国48カ所の下水処理場の排水の評価とPCRサンプルの分析を実施していく。ラウフ保健相によると、「人口の半分以上がカバーされるように、廃水の監視を拡大する」という。

同時に、保健省は防疫法の抜本的な改正に取り組んでいる。同保健相によると、「目標は新しいパンデミック法を作成することだ。関連団体や専門家たちを動員して、年末までに新しい伝染病法の草案をまとめ、審査を受けるようにすることだ」という。

ラウフ保健相とともに記者会見に出たカロライン・エドシュタドラ―憲法担当相は、「政府のコロナ規制が全て完璧だったわけではない。将来のためにパンデミックから教訓を学ぶべきだ」と強調し、政府が過ちを犯したことを認めている。

政府の間違いとして、ラウフ保健相は「学校の閉鎖は間違いだった」と述べている。また、「関係大臣、関係省、専門家たちとのコミュニケーションの面でも間違いがあった」と認めている。ただ、ワクチン接種に対する批判に対しては「ワクチン接種は今日まで、新型コロナによる死亡、集中治療室への入院、またはロングコビッドへの感染を防いできた」と指摘し、医療関係者に感謝している。

参考までに、野党の社会民主党の保健スポークスマンであるフィリップ・クヒェー議員は、「措置を安全に段階的に廃止することは非常にいいことだ。ただ、パンデミックは依然進行中だ。残っているのは、隅々まで亀裂のある医療システムだ。私たちは緊急にパンデミックから教訓を学ぶ必要がある」と述べている。極右政党「自由党」のヘルバルト・キックル党首はコロナ規制の終わりを発表した保健相に対し、「コロナ規制の撤廃という列車は既に出発している。保健相だけが1人プラットフォームに立っていることに気が付いていない」と述べ、コロナ規制の撤廃決定が遅すぎたと批判している。

なお、保健相がコロナ規制の終わりを発表した日(1日)、オーストリアの1月31日の新規感染者は5361人(死者7人)だった。クリスマス以来の高い数字だ。

世界を席巻しているオミクロン株は感染力が強いが、致死力はないことから、欧米諸国ではコロナ規制を撤廃してきた。米国発の新しい変異株も感染力は強いが重症化しないという情報があるため、コロナ規制の撤廃は当然のステップだろう。

ただ、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は先月30日、コロナウイルスのパンデミックにより、宣言された最高の警戒レベル、緊急事態を維持すると発表している。同事務局長によると、「コロナ感染状況は改善されてきたが、過去2カ月間で世界で約17万人がコロナ感染で死去している」という。WHOによると、世界で6億6500万人が感染し、670万人がコロナ感染が原因で死去している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。