黒坂岳央です。
筆者はかつて、とても怒りっぽい性格だった。それは子供の頃から起業するまで続き、気に入らないことをする相手にはとことん議論を詰めに行った。特に自分の場合は父親コンプレックスが激しかったので、年上の男性上司が特に苦手で食い気味に突っかかっていったこともあった。毎回、怒った後は「またやってしまった…」と自己嫌悪になったり、「すぐにカッとなる性格をなんとかしなさい!」と叱られたこともあった。
しかし、今はまったく怒らなくなった。ここ数年間、怒った記憶はまったくない。もちろん、生きていれば不誠実なことをされたり、モラルの欠如した相手と遭遇することはある。だがそれでもまったく怒りは湧いてこない。アンガーマネジメントの力を借りる前に、怒りという感情を完全に卒業できたようである。今後の人生でも、みっともなく怒ることはもう二度とないだろう。
個人的に心がけて良かった3つの思考をシェアしたい。
人付き合いを減らした
筆者は自他ともに認める、大変神経質な性格である。特に「言葉」については書き言葉、話し言葉問わずイチイチ意味や意図を深く考え込んでしまう。相手が深く考えずに発した言葉を何ヶ月、時に数年間ずっと反芻してしまう、ということがあった。そのため、あう人とはべったり仲良くなれるが、あわない人とはとことんあわなかった。結果、付き合う相手を選べない立場の時は四六時中、人間関係で苦しんでいた。
今は人付き合いを減らした。利害関係のあるビジネスの取引先や顧客は別だが、今は友人は5人もいない。それ以外は連絡も取らないし新しい友人も今は必要はない。だが昔は逆だった。異業種交流会とか、同じ趣味の飲み会とか頻繁にでかけていって不誠実な相手にあう度に腹を立てていた。
しかし、シンプルに人付き合いを絞れば当然、人間関係に立脚する悩みは完全に消える。怒りっぽい時期は人に会いすぎていた。会う回数を減らせばストレスや怒りは消える。無人島にいて誰かに怒ることは不可能なのだ。
他人に期待しない
「こうやるべきでしょ?」「普通はこうするでしょ?」。
かつてはこのような感覚を持っていた。しかし「べき」「普通」という言葉には相手に対する強い期待感が込められている。だが本質的に他人とはわかり合うことはできない。理解を共有できる一部分を見つけても、その他の部分はまったくのブラックボックスというのが普通だ。
だから徹頭徹尾、今は他人には何も期待しない。「期待しない」というとネガティブに聞こえるが、これは「諦めの境地」というより「執着を手放せた」という方が正確な表現である。執着は人をネガティブにする。だからこれを完全に捨てた。
「気を利かせて事前にこうやってほしい」とか「言わなくても気持ちをわかってほしい」を完全に止めただけで、ものすごく楽になり相手に怒りや失望はゼロになった。その逆に、想定外に深く共感してくれたり、気遣いをしてもらえると飛び上がるほど嬉しいと感じるようになった。
怒りはかっこ悪いと理解する
よく怒っていた時期は「自分を怒らせる相手が悪い」という思考だった。しかし、今は完全に変わった。人前で怒りを出してしまうような稚拙な態度はカッコ悪い、という考え方に変わった。
人間は焦っている時、怒っている時など感情的になる時は知性が著しく下がる。その証拠に普段は饒舌な人でも、猛烈に怒っている時は言葉が原始的になり、複雑な意思決定ができなくなる。つまり、シンプルに怒ると能力が低下するので損をする。
また、社会的に見て怒っている人を見て男らしくてかっこいい、勇ましいと思う人はいない。「感情をコントロールできないカッコ悪い人」と思われるか、下手をするとスマホで隠し撮りをされてSNSで笑いものになるだけである。よく電車内で怒っている人が、SNSで笑いものになっているのを見る度にそう思う。
しかし、分かっていても変わるのは簡単ではなかった。そんな筆者を一発で変えたきっかけが妻とのやり取りだった。
ある時、先方の不動産業者に大変不誠実な対応を受けた。相手はウソをついて約束を破り、こちらは大変な迷惑を被った。自分は内心、かなりの怒りを感じたが妻は自分を制して前に出た。相手と冷静に対応をし、穏便かつこちらに有利な条件で交渉を済ませた。
「よくあの場で怒らなかったな!忍耐力すごいな!」と妻にいうと、「こういう時は感情的になった方が負けなのよ。それに同じ内容を伝えるにも、怒りをあらわに伝えるより冷静に穏やかに、でも毅然と伝える方が不誠実な相手には効くのよ」と返ってきた。これは見習いたい、と感じてそれ以降はこの対応を真似るようになった。
◇
現在は上記3つを徹底しているので、怒ることはもうない。万が一、不誠実な対応をされても「交通事故にあったようなものだ」と割り切って、即損切りをして二度と連絡を取らなければいい。
人生は怒って過ごしていいほど長くない。どうでもいいことに囚われず、さっさと前進するべきなのだ。
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