ウクライナを巡るデヴィ夫人の正義と、地球の行方

デヴィ発言

ウクライナ訪問から帰国したデヴィ夫人が、2日、都内で取材に応じ「ウクライナを負けさせるようなことは絶対あってはいけない。そうなれば、民主主義の墓場となってしまう」と強調、ウクライナへの継続的な支援の重要性を訴えた。

夫人はまた、ウクライナ戦争等を巡る森元首相と鈴木宗男参議員の一連のロシア擁護発言に連日のTwitter投稿で物申し、議論を呼んだ。

これらに対し、宗男議員はフジテレビのインタビューで「そっくり、のしをつけて、あなたが老害じゃないですかと言いたい」「歴史の勉強はあなたよりも私はしている。政治家として外交の現場に立ってきた」等と応戦している。

左:デヴィ夫人 右:鈴木宗男議員
本人Twitterより

夫人の言及する北方領土については、そもそも「日米露三国同盟」ないし三国協商のようなものが実質的にでも成されない限り返ってくることは無い。安倍・トランプ・プーチンの良好な関係が長く続けばその可能性はあったが、今の状況では当然に無理である。

地球の秩序

さて、ウクライナを支援する夫人の考えは、西側の多くの指導層および一般国民と同じく次のようなものだろう。

「ロシアを屈服させないと侵略一般が許容され、中国の台湾進攻等を招き世界危機になる」

これに対し、西側の少数派として下記のような見方があり、筆者もそれに属する。

「ロシアを屈服させると中露同盟が強化され、台湾進攻を含め世界危機になる」

1年近く続いているウクライナ戦争について筆者は予てから、①戦争犯罪、②侵略と所謂「居留民保護」等、③地域及び地球のパワーバランス、の3つの視点で見る事が必要だと考える。

①の戦争犯罪については、ブチャの虐殺など西側ではロシアの犯行がほぼ確定されたというのが一般的な見方なのに対し、ロシア側は逆の声明を出しており、第三者および両側関係者を含めた検証が必要だが、少なくとも継戦中にはなされることはないだろう。

②の侵略と所謂「居留民保護」等については、ドンバス地方等のロシア系住民が殺害を含む人権侵害をされていた等というロシア側の主張が侵略の不当性をどの程度減殺するのか、あるいはしないのかが裁かれなければならず、何れにしても1日も早い停戦が望まれる。

最後の③の地域及び地球のパワーバランスについては、西側がウクライナへ軍事援助を強化し続けて行き、もし夫人が望むようにロシアが屈服に追い込まれるなら、プーチンが核を使う可能性がある。

そして核使用、不使用どちらの場合に於いても仮にロシアが敗北すれば、ボロボロになったロシアは恐らく中国に頼りジュニアパートナーとして属国になるしかなくなると筆者は見る。

市場大国の中国に食糧・エネルギー大国のロシアが合体し、それに他のBRICS諸国や東南アジア、アラブ、アフリカ諸国等の「グローバルサウス」が連携(既にその兆しが出ている)し、更にゴールド(金)を含めたバスケット制でドルに対抗する域内流通通貨で大経済圏が形成されれば、西側は詰むだろう。西側は中露間に楔を入れ、ロシアと和解し自陣へ引き入れるべきだ。

筆者は、正義とは即ちより良き秩序の事であると考える。夫人の正義感と行動力は尊重したい。その上で、僭越ながら更にもう一段高く長期の視点で地球の行く末を想って頂きたいと願う。