Chat GPT、是非論:出来すぎるチャットポッドが波紋を呼ぶわけ

技術開発は人々の生活やビジネスの効率化、あるいは高度な便益ある社会の実現を短期間に達成させ、より多くの幸福をもたらすと考えられています。一方、その弊害も当然ながら指摘されています。例えば多くの人がスマホ漬けになっているのはその一つの例でしょう。

是非論がありながらも企業がなぜ、これほどまでに技術革新に挑むのでしょうか?我々人類は500万年前に生まれ、極めてゆっくりしたスピードで進化してきました。我々が歴史の教科書で学ぶ数百年前には世界中で様々な政治、文化や経済、社会が生まれ、探検、発見、改善、進化、そして時には戦争や疾病で退化することも経験してきました。これらは全て人間が自分たちのレベルでやってきたことです。

openai.com より

ところが1940年代あたりに実用のアナログコンピューターが生まれ、その概念はひたすら進化し、90年代にアナログからデジタルに変わったことで飛躍的発展を遂げます。我々がウィンドウズ95を手にした時、それは明白な時代の境目に立ったとしても過言ではないでしょう。その後の約30年間の進化だけを見ても加速度がついてきたのは肌感覚としてもわかります。その上、工場では自動化、ロボット化が進み、技術革新と共に人間の存在についても考える機会を与えてきたと思います。いわゆる1%対99%の問題の根源もここにあるかもしれません。一般大衆には「君たちの仕事は将来存在するのか」と挑戦状を突き付けています。

仮にどんな是非論があろうとも技術革新を「止めるべきだ」という人はいません。2015年にイーロンマスク氏やサム アルトマン氏などが設立したOpen AIという人工知能研究所が大きく進化したこともさほど話題になることはありませんでした、少なくとも今日までは。同研究所は2019年にマイクロソフトから10億㌦(1300億円)の投資を受けたことで開発に弾みがかかったようです。その成果品はDALL-E、DALL-E2、そしてGPT3です。GPTはGenerative Pretrained Transformerの略です。

いま、このGPT3が出来すぎるために様々な波紋を呼んでいます。それがGPT-3.5をベースにしたChat GPTというチャットポッド(人工知能を活用した自動会話プログラム)です。要するにこのマシーンと会話することで何でも回答を引き出せるのです。学校の宿題が全部できる、投資の指南をしてくれる、さらに作詞作曲小説に詩まで書いてくれます。その活用の仕方は無限に広がっていきます。このプロトタイプが発表されたのが22年11月末で既に1億人がダウンロードしているとされます。

学校の宿題はChat GPTで、という流れが出来て、使用禁止や宿題を手書きに戻すというような動きは既に一部ではあります。そのうち、学者が研究をせずにこのChat GPTで研究論文を書き、手口が巧妙過ぎて誰も発見できないという問題も生じるでしょう。

我々はパソコンやスマホを使ってピンポイントの情報を得ることができます。例えば移動に際して最も早い経路を探したり、詳細な天気を聞いたり、文章の表現や文法を直してもらったりといった部分部分のサポートを享受しています。しかし、Chat GPTは部分ではなく全部を手伝ってくれることから人間不要とまではいいませんが、考えたり、行動するにおいて何も判断を求められないし、する必要もありません。果たしてそれが500万年かけて培ってきた人間の求めるものなのか、人類滅亡の前兆なのか私には危惧するものがあります。

私は人間はコンピューターの時代を迎えた際、人間以上の能力や適性を持った部分について「外付け」してきたと考えています。その第一弾がスピードある情報量、第2弾が無限の記憶容量です。私はChatGPTは第3弾である「演算機能の外付け化」だと思っています。つまり、第2弾である図書館に行き、読書、知見、経験をして得たインプットに基づく人間がやってきたまとめ作業を不要とし全部Chat GPTに任せればよくなるのです。そんな馬鹿な、と思うかもしれませんが、原理的にはそういうことです。

何故、人類はこういう進化を遂げたのでしょうか?私はキリスト教にある労働は罰則であるという発想があるのではないかと考えています。つまり、人間はいかにして楽をするか、です。西欧の世界では楽をすることを目標として進化が進みます。休暇やバケーション旅行の発想は典型です。一方、アジアでは制御の思想です。中国が顔認証を普及させているのもその一例でしょう。日本でも様々な規制が発展を妨げているとされます。ここに技術開発思想の大きな違いがあるように感じます。

是非論をするまでもなくChat GPTは既に存在し、更に進化を遂げています。マイクロソフト社は本日、そのChat GPT同社製品に搭載することを発表し、グーグルとのライバル関係を明白にしています。

この技術がさらに進化すればコンピュータープログラマーもいらなくなるかもしれません。自律進化を遂げるのです。ここまでくるとSFの世界ですが、あまり笑っていられないと思います。このブログだってそのうちひろが書いているそぶりを見せて、実はChat GPTで書いているかもしれません。そうしたらきっとツッコミどころがなくてつまらないかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月8日の記事より転載させていただきました。