会社の賞味期限:GAFAMの冴えない決算は次への地殻変動か

アメリカの大手ハイテク5社、GAFAMの決算が冴えなかったことは単に一時的な減少にとどまらず、次への地殻変動に向かっていくように感じられます。たまたま決算時期ということもあるのですが、日米共にあらゆる意味でコロナの呪縛からの解放を受けて過去3年間に起きた様々な社会現象は人々の価値観をも変え、会社の賞味期限を突き付けたのかもしれません。

各社のCEO Wikipediaより pressureUA/iStock

私はフェイスブックもツィッターもやりません。友人や同僚のアカウントを時々覗かせて頂いていますが、見れば見るほど「絶対にやらないだろうな」と思うのです。理由はウザいから。確かにSNSが世の中に出来た時、人々は興奮し、繋がる喜びに満ち溢れていました。朝から晩までツィッターにしがみついている人も多数いました。それらを見るとヒマだな、と思ってしまうのです。私には申し訳ないけれどそんな余裕はなかったのです。必要なのは正しい質の高い情報だけ。SNSをする時間があるならCBCのニュースを読んだ方がまだ意味があると思っています。

では私はひねくれ者か、といえばそういう訳でもないと思います。例えば若い人にはツィッターをやらない傾向がでています。いわゆるSNS系のコミュニケーションツールがあまりにも多く、たまたま、大手が提供するサービスは利用者が多く、広がりがあることで参加者を増やしたのですが、結局のぞき見志向なのだと思います。

故に今後もSNSは残りますが、それが今後爆発的に成長するかと言われれば個人的には疑問は残るのです。例えば私が所属するNPOではスラックというアプリを使っています。この団体のメンバーとやり取りする時だけスラックに入らなくてはいけないのが面倒なのですが、結局、棲み分けをしながら参加メンバーを限定しているとも言えいます。

アマゾンへの期待度が下がってきているのは何故でしょうか?オンラインショッピングは確かに便利でこの十数年で買い物の仕方を激変させました。コロナの時には外に出られないから更にオンラインショッピングは便利だったのです。しかし、今はいつでもそこにあるから必要な時に必要なだけ、になりつつあり、飛びつくものではなくなったのです。

国内を見てみましょう。栄枯盛衰を語るならその筆頭はソフトバンクGでしょう。孫正義氏の投資モデルはインキュベーションしてまだ育ち始めたビジネスを片っ端からかっさらっていく手法でした。なぜそれが成功したのかと言えばその当時はそれらのアイディアに高額の値札がついたからです。もう少し育てて独り立ちできそうになったところでIPOなり、売却して多額の売却益を得るわけです。あるいは既に上場していればその株をごっそり買い付け、会社が成長して株価が上昇した時に儲けるシナリオでした。

これにはある前提があります。それは怒涛の資金がハイテク銘柄に向かうこと、これが条件です。今、ハイテク系の投資家は痛手を負っています。金利もこう高くては資金そのものが調達できません。そしてマネーはいつもハイテクだけに向かう訳ではないのです。つまり、孫正義氏の投資はある意味、一本足打法であり、その根幹が揺らぐ今は防戦でしかないのです。

日産が24年ぶりに呪縛から逃れられました。ルノーとの対等な関係です。では同社に成長を期待できるか、これは現時点ではわかりません。が、過去5-6年間の同社の閉塞感は他社との競合に於いて相当のハンデになってしまっています。それはトヨタも同じで、重層構造の下請けと業界関係者が作り出す構造変化へのかじ取りの難しさにあえいだともいえましょう。その中で私はEV 対 内燃機関という構図の中で日本独特のガラパゴスを生み出す気がしています。マジでそう来るか、というような商品開発をしてそれが東南アジアあたりを巻き込んでブームになるシナリオです。つまり、欧米発の流行を断ち切り、アジアからアジアのための商材を出す、このシナリオが描ければ日本の産業は面白くなると思います。

賞味期限と言えば長らく就職先としては不人気だった銀行もそろそろ覚醒する時期にあると思います。黒田流金融処方は銀行経営を圧迫し続けました。そして銀行は国債の売買でどうにかしのいでいましたが、ここにきてそれらは含み損として満期まで塩漬けになるかもしれません。ただ、金利が上昇すれば銀行は儲けやすいのは事実です。それ以上に銀行は経営姿勢そのものを変えるべきでしょう。

私が4-5年前、日本で不動産事業を展開している最中、書籍の輸出業をやると言ったら銀行から「三行半」を突き付けられました。「もう融資は受けられませんよ」と。理由は利益率が下がることと事業リスクがあるから。これが日本の銀行なのです。

その一方で、銀行は住宅ローンや投資信託をむやみに売りつけます。そうではなく、もっとビジネスをするべきです。例えばりそな銀行はそのあたりに踏み込み始めています。地銀はSBIの北尾吉孝氏が新風を入れています。会計士だって会計をやるだけではなく、コンサルで稼いでいるのです。銀行も当然、そこに目を向けるべきです。そしてそれを通じて銀行員の実業の厳しさを肌身を持って感じてもらう必要があります。

社会や経済を俯瞰する、これが私は大事だと思うのです。ダメだと言われたところが突然開花すると思えば絶好調だった会社が崩れることはある程度予測できる部分です。日本にはまだまだチャンスはあると思います。それには欧米に追随するのではなく、アジアからの発信を強めていく、これが重要になると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月10日の記事より転載させていただきました。