茶懐石 秋吉(パリ15区)

大寒の日、”茶懐石 秋吉”。

OECDフランス大使公邸料理人をしていらした秋吉雄一朗さんが、パリに戻り、日本を除く世界で初めての、茶懐石料理店を開店。

ソフトオープニングに招いてくださった。おめでとうございます&大変ご無沙汰していました、秋吉さん&三鈴さん♪

まだ正式オープン前なので、扉横のガラスは養生中。

美しい扉の引き手部分に彫られた瓢箪を眺めながら、秋吉さんの修業先に思いを馳せる。一度でよいから体験してみたい。と、扉が開き、三鈴夫人の笑顔、そして中へと誘われる。

入口に、見事な木彫りの看板。見惚れていると、”高橋さんがお祝いに筆を取ってくださったのです”と。おぉぉ、ほんとだ、高橋英一氏の落款がある。

しばし鑑賞し、ようやく中へ。檜がほのかに香るなか、左手にカウンター、そしてご亭主秋吉さん。でもそちらに向かう前に、つい、右手のテーブルに飾られた器とお花、奥のお軸に目が行ってしまう。

このテーブルは正式オープン後は個室的に利用。ソフトオープンニング中は、秋吉さんの器や茶器コレクションを展示している。固く閉じたカメリアの蕾が、日本の寒椿のように凛とした佇まい。

お軸は、モチーフ美しい和紙の張り合わせに、蓬莱そして不老仙。ありがたいなぁ、じっくり眺めてあやかろう。

ご亭主秋吉さんにご挨拶し、目の前のお席に恐縮。茶懐石の作法を全く知らないので、お茶室で本式のだったらどうしようかとドキドキしてたのだけれど、フランス人も茶懐石の魅力を肩肘張らず楽しめるような工夫がたっぷり施されてる。

柱の桧がよい香りを放つ内装は、宮大工が日本で組み立ててから崩して輸送し、同じ方がこちらで組み立てた。よく見ると、ところどころに、木釘が見えている。

汲み出しのまろやかな熱さで口を清めて、折敷を受け取る。

煮えばな(富山産コシヒカリ、感動的な甘い香りと風味)&汁椀(山利の白味噌にバターナッツ葛寄せ揚げ)&向付(ひらめの昆布締めきゅうり巻き、ポン酢ジュレ)、そしてつぼつぼ(柿の代わりの棗椰子と大根)。ご飯の味、出汁を使わない汁の旨味、ひらめの繊細な締め具合などに、たまたま居合わせた友達知人と感動のため息。お供は、水芭蕉のスパークリング。

瓢亭仕込みの亭主の美しい所作を愛でながら、煮物椀(スズキのかぶら蒸し:蓋を取った瞬間の香りに目を閉じ、ため息。鰹節は本枯れを使えないので鶏を少し加えて味に深みを出している)、焼物(merou(ハタ?)の炭火焼き。柑橘の代わりに、酸味で和えたクレッソンとルッコラを添えて)、炊合わせ(大根、ホタテの半生天ぷら、山下農園ほうれん草の餡。餡を被ってもいつまでもカリサクな天ぷら、すごい)。

盛り付けが始まるたびに、奥カウンターのゲストがみんなそばに集まる。

強肴(脂乗った寒鯖の押し寿司を、開けたて炙りたての三幅の海苔と紫蘇で手巻き風に。たまらない~。テイクアウトできるそう♪)、箸洗い(とんでもなくおいしいトピナンブールのポタージュ&トピナンブールチップス&黒胡椒。このトピナンブールポタージュ、アラン・パサールに食べさせたい)、そして、今が旬の寒鰤のタレ焼き飯&たくあん・きゅうりの漬物と白菜佃煮。

日本酒は、大寒に似合う柄のお猪口を選んで、作”玄乃智”をいただく。

最後は、餡、フランボワーズ、シナモンが香るさつまいもペーストを潜ませたクレープ。花びら餅のイメージね。

そして、ご亭主が点てる、丸久小山園のお薄(銘を伺うの、忘れた)を信楽焼で。知人の茶碗は、真葛焼の骨董品。お借りして、色彩や手触りを愛でて、ごちそうさまでした。

3時間にわたって楽しんだ、茶懐石の魅力。京の茶文化の魅力を芸術的に、味わうだけにとどまらず体感できる、素晴らしいスペクタクル。

茶懐石の世界に、俄然興味が出てくる。日本で、茶懐石の経験なし。いつかどこかで巡り合える機会があるといいなぁ。京都や大阪の名店に器を創っている知り合いに相談してみよう。

貴重なひとときにお招きくださりどうもありがとうございました、秋吉さん、三鈴さん。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2023年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。