世界的にインフレが進む中、先進各国では賃上げを要求する大規模なストライキが実施されています。
【参考リンク】米でストライキ8割増、人手不足やインフレで強気の要求
【参考リンク】英国で33年ぶり大規模ストライキ、スナク政権の火種に
【参考リンク】ドイツ7空港で大規模スト、約30万人に影響 ミュンヘン安保会議にも
一方、日本ではストどころか春闘は順調そのもの、決裂の“け”の字も出ないまま無風通過となりそうです。こういう従順な姿勢こそが「失われた30年」の原因だという声もありますね。
どうして日本人は自身の属する組織に対して強く主張しないんでしょうか。やっぱり一部の人たちの言うように「和をもって尊しとなす」みたいな価値観が染みついてるからなんでしょうか。
いい機会なのでまとめておきましょう。
日本でストライキが行われないのはそもそも労使のスタンスに違いがないから
まず大前提として、会社が負担できる人件費は経営環境で大方決まっているため、気合や根性でどうにかなるものではないです。
会社をずっと存続させつつ、人材を含めたいろいろなものに投資をして利益を伸ばしていこうと考えたら、人件費の合理的な水準はだいたい決まっているものなんですね。
「定年を引き下げる」とか「解雇しやすくする」とか、あるいは「社会保険料を引き下げる」といった具合に、環境の方に手を加えれば手取りを増やすことは可能でしょう。
でもそれらは政治マターであって労使で交渉するテーマではないですから。
では、他国でストやってる労働者は何を要求しているのか。簡単に言うと彼らの主張はこんな内容になります。
「会社の存続とか成長なんて俺たち労働者が知ったことか。黙っていますぐこれだけ払え」
会社の経営に責任を持つのは経営者でリスクは株主に、労働者としては今すぐこれだけ必要なんだから払え、というスタンスなんですね。実に労働者らしい分かりやすい姿勢だと言えるでしょう。
ところが。我が国の企業別労組はそういう風には考えません。10年20年後、いや更にそれ以上にわたって組織が安定して存続し、成長していくことに軸足を置いて判断します。
なぜかと言えば終身雇用だから。会社はただの腰かけなんかじゃなく、新卒カード使って入社して人生預けた運命共同体だから、後先考えない経営なんてされたら労組が困るわけですよ。
サラリーマン社長なんて大体数年でリタイヤするし、株主も株売ったらサヨナラですけど、サラリーマンは人生かかってますからね。
日本の企業別労組は経営者以上に経営者目線に立って、自分たちの賃上げを考えているということになります。
経営にダメージを与えるストライキなんて頭の片隅にすら存在してないはずです。
数年前に安倍さんが官製春闘で労使に賃上げを呼び掛けた時に、連合幹部が不快感を表明したことが一部で話題となりました。
「労組なのに賃上げを嫌がるなんてどういうこと?」と疑問に思う人が多かったようですが、彼ら連合が経営者より経営者寄りの視点を持っていると考えれば違和感はないはず。
政治の都合で賃上げされれば、リスクを引き受けるのは自分たちだとよく理解していたんでしょう。
以降、
ストライキとは、その国の労働市場の流動性、健全さを示す目安である
ビジネスパーソンは“一人インバウンド”を目指せ
Q:「内定後の辞退を減らすには?」
→A:「入社の付加価値を高めるか、面接時に本気度をチェックすべきです」
Q:「転職すると伝えたところ強く慰留されました」
→A:「部下の離職は管理職自身の評価にマイナスなのです」
雇用ニュースの深層
Q&Aも受付中、登録は以下から。
・夜間飛行(金曜配信予定)
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2023年2月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください