世界保健機関が狙う「全人類監視体制の構築」

明林 更奈

現在、世界保健機関(WHO)の内部で、かなり危険とも思われる議論が「密かに」行われているのをご存知だろうか? それが「国際保健規則(2005年改訂)の再改訂」と、「WHO CA+(通称、パンデミック条約)の締結」に向けた議論だ。

前者は2023年2月20日から24日まですでに実施されており、続いて2月27日から3月3日までは後者が議論されるということがWHOのウェブサイト上で公表されている。

これらのWHOにおける議論の動向については、「今後、各国の憲法や法令が無効になるような事態になるかもしれない」「情報統制が強まるのではないか」などといった懸念が国内外の多くの専門家や一般市民らから挙がっている。

しかし、大手マスコミがこれらについてまったく報じてくれないこともあり、具体的に何が論点になり得るのか、あるいはWHOで一体何が起こっているのかという情報を明確に得ることは難しいのが現状だ。実際、これらに関する疑問点があっても、それを誰に相談したら良いのか分からず、もやもやしている読者も多いであろう。

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こういった状況のなか、これらの問題を大変わかりやすく説明してくれる動画が公表された。それが、2023年2月21日付けで英国の独立系報道機関「UK Column」のウェブサイト上に掲載された、作家ジェームズ・ログスキ(James Roguski)氏へのインタビューである。

ログスキ氏は過去数年間、起きている時間のほぼ全てをWHOの公表文書や公開会議の情報収集ならびに分析に充ててきたというWHO問題の専門家である。現在、世界中の人々の目から隠れるようにしてWHOが密かに推進していると思われる計画について、ログスキ氏は以下のように語っている。

不適切な新型コロナウイルス対応と、効果ある対処法の隠蔽

WHOは過去3年間での新型コロナウイルスの対応、つまり、ロックダウン、マスク着用、外出禁止令、ワクチンなどの手法がいずれもうまくいかなかったということから何も学んでいない。そればかりか、資金を大々的に活用することで、うまくいかなかった方法を拡大して展開しようとしているように見える。

新型コロナウイルスの死者が欧州や米国で多く出たのは、治療法が不適切だったからだ。アフリカはWHOの介入が弱く、治療の自由があったことから他の地域と比べて圧倒的に新型コロナウイルスの被害も小さかった。しかし、このようなことは議論されていない。南アフリカで約4,000人の患者を治療し、一人も死者を出さなかった医師の治療法は2020年9月にウェブサイト上で公開されている。この治療法が世界的に知られ、実践されていればパンデミックはその時点で終わっていたはずだ。

WHOが目指す人類監視システム

国際保健規則の再改訂が目指すのは、実は人々の健康に関するものではなく、監視やモニタリング、レポーティング、非常事態宣言、さらには人々の生活のコントロールである。

WHOが導入したがっているのは、ワクチン接種状況やテスト状況を追跡できるグローバル・ヘルス・デジタル・パスポートに代表される、グローバルID追跡システムなのだ。

採択されれば「即座に」法的拘束力を持つ再改訂版「国際保健規則」

国際保健規則の再改訂については2022年7月に会合があり、最初の数日は公開されたものの、途中2日間は非公開となってしまった。その間に何が議論されていたかはまったく不明である。そしてやっと再び議論が公開になったと思ったら、わずか30分ほどで急に決定事項が公表されたのである。公表された内容は、『再改訂版の国際保健規則が採択されれば即座に法的拘束力を持つ』というものである。『即座に』というのは、総理大臣の署名や各国の議会での承認が不要だということを意味している。

現在、WHOは各国のアドバイザーに過ぎず、法的拘束力は持たないが、『再改訂版の国際保健規則が採択されれば即座に法的拘束力を持つ』などとされてしまえば話しは全く別物となる。そうなれば今後、WHOが支配権を握り、各国は主権を失う可能性さえあるのだ。

国際保健規則の再改訂について各国は、もし修正したい点があるのなら2022年9月30日までにそれらを提出するようにと求められていたのに、それら提出したのはナミビアなどを含む16カ国にすぎなかった。英国、カナダ、オーストラリアなどは提出していないのである。

国際保健規則が再改訂されれば、世界規模で健康のあり方が変わり得るだろう。この再改訂案には”shall” (しなければいけない)という単語が263箇所も使われていることに注意すべきだ。

英国は意見書を提出しなかったが、修正点を出した他の国々は全部で300箇所以上、条項の約半分におよぶ修正を入れており、さらには6つの新しい条項ならびに添付まで追加している。

2023年2月7日にはWHOで本件に関するブリーフィング会議が行われたのだが、奇妙なことに各国代表として参加している人物は誰一人ネームプレートを付けていなかった。後に調べたところ、彼らはいずれも選挙で選ばれた人々ではなく、ほとんど無名の人々であったことがわかっている。

パンデミック条約は2023年にも採択される?

世界で起こるのは以下の二つのうち、何れかである。一つ目はメディアによるプロパガンダで人々の頭に植え付けられる『予測プログラミング』と呼ばれるものである。その事例の一つに挙げられるのが、2023年2月に発生したオハイオ州列車脱線事故に酷似したシナリオの映画が2022年に公開されていたことだろう(筆者注:ネットフリックスで公開された映画『ホワイトノイズ』のことだと思われる)。一方の二つ目は、誰にも感知されないように推進させられるものだ。WHOがやっているのはこの二つ目のケースであり、静かに秘密裏に物事を進めようとしているのである。

なぜWHOは秘密裏に物事を進めようとしていると言えるのか。まず、2022年1月18日に米国バイデン政権がそっと提出した文書をWHOは2022年4月12日までウェブサイト上で公表しなかった、という事実がある。

さらに、2022年の総会では、本来、再改訂版の国際保健規則への修正案は総会の4ヶ月前までに提出しなければならなかったのにもかかわらず、総会開始後になって数カ国により修正案が提出され、秘密裏に議論された挙げ句にそれが結局取り入れられてしまったということがある。こういったことは一切報道されないため、ほとんどの人がその事実を知らない。そのため、2024年5月の総会で採択が予定されているパンデミック条約についても、次回の2023年5月の総会でひっそり採択されてしまう可能性さえあると思われる。

WHOが目指す『1984』の世界

これらの指摘が明らかにしているのは、実はコロナ禍を収束させたくないらしいWHOの本心に加え、健康情報や行動履歴を含むあらゆる人間の監視追跡システムを密室の中で秘密裏に構築し、それを各国国民の意思を無視する形で法的強制力をもって押し付けようとするが如きWHOの恐るべき実態である。

その先にあるのは、私たちが持つ大切な「国家主権の剥奪」と、プライバシーを完全に無視した「全人類監視体制の構築」であり、どう控えめに見てもジョージ・オーウェルが『1984』で描いた全体主義の世界そのものに他ならないのではないか。

こんなWHOのやり方に対して問題提起をしてくれているログスキ氏は、「WHOには、世界の人々が反対の声を多数挙げる中でひっそりパンデミック条約を採択するだけの大胆さはないであろう。だからこそ、我々一人ひとりがこの状況をしっかりと認識するべきだ」と語っており、その実態をまずは多くの人に知ってもらうために、WHOに関する自身の調査結果をウェブサイト上で惜しげもなく公開してくれている。さらに自身の連絡先まで堂々と公開し、世界中のどこからでも、立場に関わらず遠慮なく質問してくれるようにと呼びかけている。

同氏はさらにズーム会議を一日二回開催し、WHOに関する世界中の様々な疑問に答える場を提供しているとのことだ(このズーム会議の詳細はログスキ氏のウェブサイトをご確認いただきたい)。このような専門家との直接対話の恩恵を受けられる機会が得られるのは、テクノロジー進化のポジティブな側面と言えるだろう。

WHOに関する不明点はログスキ氏に連絡を

こんなWHOの計画についてさらに理解を深めたい、それらの重要情報をできるだけ多く周囲に広め、政治家などに陳情したいなどと考えている読者の方は、ぜひ一度ログスキ氏に連絡をとってみることをお薦めする。なお、著者はこの記事を書くにあたってSNSを使ってコンタクトしたところ、送信後わずか15分以内に返信をいただくことができた。

ありがたいことに、ログスキ氏は政府関係者に連絡するためのメールのテンプレートまでウェブサイト上に用意してくれているので、そちらもどんどんと利用させてもらうべきであろう(ちなみに日本の国会議員にコンタクトする際には、メールよりも1枚紙でのFAXが有効だと聞いたことがあるので念のため申し添えたい)。

ちなみに、2022年5月のWHO総会の各国代表の名簿はこちらのリンクにあり、日本からの参加者も確認できる。それらの参加者はすべて、厚生労働省や外務省、財務省の職員やJICA関係者であるようだが、記載されているのはなぜか姓のみであり、名前は全員イニシャルでしか書かれていないため、確認作業のハードルがまたさらに上がってしまうと感じた。

これもおそらくは、すべての議論をできるだけ秘密裏に行いたいWHOの妨害工作の一つなのではと邪推の一つもしてみたくなるが、とにかくこのように何から何までが秘密主義で不透明とも思える手法は国民の「知る権利」を阻害しており、看過してはならない問題ではないか。

コロナ禍において大手マスコミによる報道が肝心な時にほとんど機能しないことが明らかになった今、私たちの基本的人権である自由とプライバシーを守るためにも、一人でも多くの国民がWHOで秘密裏に進められているこれらの危険な動きの実態を知り、実際に声を上げていくべきであろう。

明林 更奈
ジャーナリスト。一橋大学卒業後、金融機関にてESG関連業務を担当。国内外の国際会議等に参加し、また欧州やアジア、アフリカ等世界各国での現地視察も行う。その中で日本における企業のESG対応や報道に大きな危機感を持ち、複眼的・重層的な議論ができる社会形成に貢献すべく発信している。