落ち着いてきた日本の政治:総選挙に打って出て岸田氏の信任を問うべきか

安倍政権の2018年頃からモリカケに桜の問題で国会は揺れ、コロナ対策で菅政権も揺れ、岸田政権は出だしこそよかったものの旧統一教会問題と相次ぐ閣僚の不祥事などで支持率は大幅にダウンしました。

しかし、日経とテレ東が調査した2月24-26日の内閣支持率は2か月連続で上昇、43%となり、「支持率低下の底打ち」を確認した形となりました。今後、よほどのことがない限り、岸田政権は引き続き、淡々と首相としての仕事を続けていくことになりそうです。私が首相就任前から予想し、何度もこのブログで長い政権になると申し上げてきましたが、そうなりつつあるとみています。

支持率が上向いてきた岸田首相 / 衆議院議場 衆議院HPより

醜聞の議論で国会が空転するなどの無駄と思考停止が起きていないことが個人的には最大の評価点です。極論かもしれませんが、2018年頃から5年近く、国会が100%のチカラを発揮できていなかったのです。癖の強い首相の場合、歴史的にも野党がワンワン吠えることが多く、また、構造問題に手を付ける際も苦労してきました。特に消費税増税といった国民に直接的影響があるイシューは首相の座が揺らぐとすら言われてきたのです。

ところが岸田政権下において構造問題には当面、手を付けることはなさそうです。また岸田氏の性格から野党は戦いにくいところもあります。よって国会で舌鋒鋭く対立することが少ないのです。それ以上に岸田氏がラッキーだと思うのはモリカケサクラで世論を二分し、コロナ対策では手探り状態が続き、国民は不満の連続だったのが国も開き、マスクも間もなく取れ、ようやくプラス思考のサイクルに入ってきており、今後も暫くはこの好循環が続く局面が予想できる点でしょう。

また岸田氏の大好きな外交面でも活躍する場が多くなっている点は重要です。特に今年はサミットの議長国として岸田、林氏両名の仕切りは重要です。特に議長となれば相手を知らないで大国のトップを相手に会議を進行し、まとめ上げることは容易ではありません。結局、仮にどれだけ批判があろうとも両名の積み上げてきた人的関係の構築をひっくり返すほどの外交ができる人材はそうそういないのです。

サミットは5月19日から21日に広島で開催されます。それまでに岸田氏がこなす重要な作業がふたつあるとみています。一つはウクライナに行ってゼレンスキー大統領に会うこと、もう一つは韓国徴用工問題で決着をつけることであります。

では首相はいつ、ウクライナに行くか、です。まずかなり隠密に行動しなくてはいけません。また安全対策上、ロシアに事前通告する公算は高いとみています。一方、ロシア、ウクライナ双方共、春に向けて総力を挙げた戦いが見込まれることから行くなら早い方がよいでしょう。国会で「緊急性ある海外渡航」を事由に国会への事前通告の省略に関してコンセンサスを取りつつあるように見えるので春分の日の3月21日にひっかけた渡航になるのではないかと勝手な予想をしています。それを逃すと5月のゴールデンウィークになりますが、その頃の戦況が見えないのでその選択肢になると一種の賭けになるかと思います。

もちろん、岸田首相がウクライナに行ってどうなるものではありません。個人的にはどうやったら停戦に持ち込めるか、プーチン氏を抑える方が重要だと思いますが、G7の輪と議長という立場となれば自分だけが戦地に行ったことがないというのは会議を進めづらいのだろうと思います。

また、G7では北朝鮮問題も大きく取り上げられるとみています。尹錫悦大統領をサミットに招待する予定になっているので両国間の最大の懸案の一つ、徴用工問題は韓国内で一旦終止符を打つ算段に出て、日本側と一定の折り合いを探るだろうと期待しています。一方、北朝鮮は刺激されると必ず、ミサイルを飛ばすのでG7の頃にかなり際どいことをする可能性は否定できません。それを今後は「強い言葉で非難する」から実行力を伴う何かをするかも一つの着目点になるかと思います。

最後に総選挙に打って出て岸田氏の信任を問うか、の点についてはあり得るとみています。やるなら秋までがそのタイミングになりそうです。G7が成功裏になれば、もっと早い夏もアリかもしれません。岸田氏の対抗馬の芽が出てくる前で岸田氏の功績が一定評価されるうちにやると考えるのがナチュラルだと思います。評価されていないじゃないか、という声もありますが、今後、数カ月で支持率が5割に向かって行けば大丈夫だと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月28日の記事より転載させていただきました。