国会の質問通告遅れ、改革待ったなし

MasaoTaira/iStock

国会の質問通告の遅れが官僚の過酷な働き方の温床になっている状況が明らかになった。

国会で質問に立つ議員が各府省に事前に質問通告する仕組みがあり、与野党の申し合わせでは前々日の正午までに通告することとなっている。しかし、実際にはこの申し合わせが形骸化しており、質問通告がギリギリになることから、霞が関の深夜残業の原因となっている。

この実態の改善については、僕自身も繰り返し求めているが、河野大臣や関係者の取組、一部の国会議員の理解などもあり、改善を求める報道も近年多くみられるようになった。

この点、2021年1月に与野党が質問通告の早期化に努めること、官僚が議員に質問内容の詳細を聞き取る「質問取り」について、電話やオンラインに切り替えることでも合意した。

「質問通告は2日前に」 一部野党が始めた試み、実現までのハードルは… | 毎日新聞

「質問通告は2日前に」 一部野党が始めた試み、実現までのハードルは… | 毎日新聞
 国会議員が委員会などの質問内容を事前に省庁側に伝える「質問通告」について、通告を早めに終わらせる動きが広がりつつある。答弁準備のための深夜や未明に及ぶ官僚の残業を解消させるのが目的だ。衆参両院では1月に各党が通告を早期に終えるよう努めることで一致した。通告後に官僚が議員に詳細を聞き取る「質問取り」

国会の質問通告が早期化されれば、官僚の深夜残業が減ることになるし、オンラインレクを徹底すれば、官僚のテレワークも活用が可能となる。

霞が関の働き方の過酷さが、社会的に認知され解決すべき課題という認識は広まっており、国会もこれに対応した形が示されていたが、その後の実態はどうなったのだろうか。

【内閣人事局の実態調査】

このたび、内閣人事局は、令和5年1月20日に「国会対応業務に関する実態調査」を公表した。

調査期間は昨年秋の臨時国会会期中の令和4年11月14日~12月10日である。

この調査から分かったポイントを以下のとおり、まとめてみた。

1.質問通告は早くなっていない
■ 最終の答弁作成着手可能時刻(注)の平均 19:54
■ 全ての答弁作成が完了した時刻の平均 26:56
(注)委員会開催日と前営業日との間の土日祝を除いた平均時刻。
■ 前々日正午までに質問通告があったのは、864件中163件と18.9%

2.オンラインレクも進んでいない
■ オンラインレクの実施率は7%

3.質疑時間に対して多くの質問を通告する実態がうかがえる
■ 質問に立つ議員は、質疑時間が割り当てられており、概ね1問5分程度の計算になるが、実際には各府省は質問時間内に処理しきれない数の答弁作成を行っている実態が明らからになっている。質問時間に対して多くの質問通告を受けた官僚たちは、前夜答弁作成に多大な労力を割かれるが、当日はいわゆる「空振り」になり徒労に終わってしまう。

【質問主意書によるさらなる質問】

この調査が公表された後、鈴木宗男参議院議員が二度にわたって、質問主意書を提出して、さらに詳細にたずねている。

この質問主意書に対する政府の答弁の中で、特にポイントと考えられる点を以下のようにまとめてみた。

1.官僚の超過勤務手当
年間約1,471億円の予算(令和5年度予算案)が官僚の超過勤務手当にあてられている

2.官僚の交通費(深夜のタクシー代など)
年間約18億6,090万円(令和3年度の支出)

3.国会への政府からの申し入れ
「政府はじめ各府省庁は実態調査結果に基づき、働き方改革の観点からも衆参両院の議院運営委員会に提言できると考えるが、認識は如何」

という質問に対して、

「ご指摘の「提言」を行うことについては今後検討してく考え」

と答弁している。

まとめ

2021年1月の与野党申し合わせにも関わらず、質問通告の早期化は進んでおらず、オンラインレクも広がっていない実態が明らかになった。

こうした実態を放置すれば、官僚の過酷な労働環境は改善されず、人材流出や採用難にもつながる。そして、超過勤務手当やタクシー代など税金の無駄遣いにもつながる。

改善は待ったなしと思う。

改めて、与野党は真剣に国会質問通告の効率化に取り組んでほしい。

以下のようなことが必要と思う。

  • 質問通告の申し合わせである2日前の正午までの通告を義務化する
  • 義務化が難しいのであれば、議員ごとに質問通告時刻を公表する(委員会開催日決定日も)
  • 通告質問数を質疑の持ち時間に応じたものにする
  • オンラインレクを原則化する

また、これまでも申し合わせが守られないという事態が繰り返されているが、そのような事態を繰り返さないためには、フォローアップと見える化が必要だ。内閣人事局には、継続的な調査を求めたい。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年3月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。