コスパの悪い一票を大切に投じたい --- 松橋 倫久

私は精神障がい者です。令和元年と二年に、萼堂塾という政治塾で学ばせていただきました。当時は精神障がい者がもっと生活しやすくなるように、自分がなんとかしたいという気持ちもあったのですが、体調的に自分で活動していくことに限界を感じ、また家族と相談の上一有権者として政治に関わっていこうと決めたのでした。

自分でアクションを起こさなくても、障がい者福祉を一所懸命やってくれる候補者がいれば、その方に一票を投じ、自分の代わりに障がい者のための政策をやってもらうことができます。もちろん、世の中には障がい者のみが存在しているわけではなく、様々な思惑や利害を持った有権者がおられます。

Panorama Images/iStock

選挙に参加する際に、政治や政策や法律や経済を学んで、一票を投じる人は少ないと思います。勉強してもしなくても、一票の価値は同じです。そういう意味では、勉強して一票を投じることは、コスパが悪いと言えるかもしれません。何にも学ばなくても投票はできるので、わざわざ学んで投票しても、学ばずに投票する人が多数であれば、数の力に押されてしまいます。

政策に関してしっかり学んで投票するという行為は、大変にコスパの悪い行為だとは思うのですが、僕はそれでもしっかり学んで選挙というものに望みたいと思っています。4月には統一地方選挙が実施されます。選挙が近いので、今から新しいことを学んで投票に活かすことは難しいかなと思っていますが、せめてマニュフェストや公約をしっかり確認し、また現職の方については実現できたことを確認し、投票したいと思っています。

統一地方選挙の事だけではありません。選挙はその後も度々実施されます。私は、政策や法律についてしっかり学んで、コスパの悪い一票を大切に投じたいと考えています。そういう有権者が増えていけば、政治家もまたしっかり勉強するはずです。今の政治家が十分に学んでいないとするならば、その原因は有権者にあると思います。政策を検討ししっかり選ぶことをやらないと、考えずに投票する人が多数の状態の選挙では、政治家は有権者をなめてかかります。

とはいえ、誰しも生活があります。私のようにニートであれば勉強する時間も確保が容易です。フルタイムで働いている人は、そんな時間ないよというのが本音かもしれません。なので、その人なりのできる範囲でいいと思うのです。選挙公報をしっかり読んで投票する、といったことでも良いと思います。演説を聞く機会があるなら、演説の内容で選んでも良いのです。まずは関心を持って選挙に臨むという姿勢が大事ではないでしょうか。

政策の勉強といっても、やり始めればキリがありません。ですが、やらずに選挙に臨めば、それに見合った候補者しか出てこないということになります。一人一人が、少しでも良いから政治に時間と労力を割く。そうすることによって、政治の世界も変わってくると思います。

松橋 倫久
1978年青森県生まれ。東北大学経済学部を経て、青森県庁奉職。在職中、弘前大学大学院を修了。統合失調症の悪化により、2016年青森県庁辞職。現在は療養しながら、文芸の活動をしている。