コロナ融資返済の憂鬱:その副作用は相当なものに

カナダにもコロナ融資がありました。一社当たり最大6万㌦(600万円)で当初3年以内返済のルールが4年に延びて23年12月頃が一つの山場になります。この貸付にはアメとムチがあり、4万㌦借りた会社は3万㌦返せば残り1万㌦はカナダ政府が債権放棄、6万㌦借りた会社は4万㌦返済すれば残り2万㌦を債権放棄してくれます。健全な会社から見ればカナダ政府が1-2万㌦をタダで配ってくれているようなものでかなりお得なディールでした。

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2週間ほど前、カナダCBC放送がこのコロナ融資の返済状況について報じていたのですが、既に完済した会社はわずか13%に留まるそうです。確かにまだ、返済期限は来ていませんが、実際にどれぐらい完済されるのか、記事のトーンは厳しい内容を伝えています。仮に返済できなければ未済部分についてかなり高い金利が課されます。もちろん債権放棄もありません。アメとムチとはこのことなのですが、欧米ではよくあるパタンです。

私の会社はこの融資は受けませんでしたが、支援先企業2社がこれを受けており、1社は既に完済しており、もう1社も全く問題ない状況です。どう返済したかと言えば返済期限の1年半前から毎月定額をきっちり返していくようにしたのです。どんなにキャッシュフローが苦しくてもそれを最優先して実行したのです。なぜ、私がそこまで返済に固執したか、といえば降って湧いた様な融資のお金は身銭にならないからです。ましてや無利子無担保ローンほどおいしいものはないのです。支援企業に対する私の役目は鬼になることです。絶対に気持ちを緩めさせないようにすることです。完済した今、身軽となり、次の攻めのプランを一緒に練っています。

ネットニュースを見ていたら「『新型コロナ融資後』破産 市内大手の呉服店 負債約6億4千万円【新潟】」という記事に目が留まりました。内容は見出しの通りですが、コロナの時期は販売イベントが出来ず苦労した、とありますが、そもそも呉服業が成長業種だと思える人は少ないわけでコロナまでに決算上の黒字ないし、キャッシュフロー上のプラスがない限り、コロナ融資は「恵みの雨」でしかないわけです。負債が6億4千万円もあるのに22年度の売り上げは1億8千万円しかないというのです。何のために融資をしたのか、というのが私の素朴な疑問です。

残念ながら内情は火の車という企業は本当に多いものです。キャッシュフローが全然回らない、金策に奔走、見せかけだけの売り上げで利益がないといった話はよくあります。ごく最近、中堅建設会社のユービーエムが負債30億円を抱えて破産したのですが、この会社は2015年に売り上げが6億しかなかったのに21年に104億円にまで膨れ上がっています。理由はほとんど利益がないまま、安値受注したことが原因。ではなぜそんな利益が出ない仕事をとってくるのか、といえば従業員に給与を、という美しい言葉かもしれませんが、実際にはアマゾンやソフトバンクが成長期に大赤字経営を何年も続けてある時からふっと浮上したように「我慢すれば水面上に浮上できる」と勘違いしたのだと思います。この会社も先の呉服屋も経営のセンスがなさすぎるのです。

そしてこのような会社は日本にものすごく多いのです。従って、コロナ融資返済が始まった今、ギブアップ組は相当出るだろうとみています。帝国バンクによると2月20日時点での情報としてコロナ関連倒産は累計で5181件となっており、うち破産が4557件と全体の88%も占めているのです。破産ですから再建の見込みなしなのです。事実、このうち会社更生法を申請できたのはわずか2社、民事再生法が144件しかないのです。つまり、箸にも棒にかからない会社がコロナのゼロゼロ融資で一息ついた、というだけでその返済の重荷が破産への背中を押したと考えています。

コロナ融資は多くの国で行われましたが、私はその副作用は相当なものになると予想しています。もちろん大手はびくともしません。問題は企業の大半を占める中小企業で、それらの経営が詰まれば大手がどんどん太るという構図になると思います。特に飲食と建設、食品関係の倒産、破産が群を抜いて多い点は事業主の高齢化も含め、時代の移り変わりの背中を押されているともいえそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月10日の記事より転載させていただきました。