放送法めぐる行政文書の問題が加熱しているが、この文書が「捏造」か否かも議論の対象となっている。安倍政権下で総務大臣を務めた高市早苗(現・経済安保担当大臣)は、安倍晋三(元総理大臣)と電話した記録などについて「捏造だ」と繰り返し、主張されている。
総務省が公表した当該行政文書には「高市大臣と総理の電話会談の結果」(平成27年3月9日(月)夕刻)という頁があり、そこには「大臣室・平川参事官から安藤局長に対して以下の連絡」があったとの記載がある。
それはどのような連絡であったかと言うと「政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話(日時不明)」「総理からは、「今までの放送法の解釈がおかしい」旨の発言。 実際に問題意識を持っている番組を複数例示?(サンデーモーニング他)」「 国会答弁の時期については、総理から、「一連のものが終わってから」とのご発言があったとのこと」などであったという。
次頁にも「電話」についての件が掲載されており「安藤局長」が「山田総理秘書官」から聞いた内容が記されている(平成27年3月13日・金・17時45分)。そこには「政治的公平に関する国会答弁の件について、高市大臣から総理か今井秘書官かに電話があったようだ」との一文が見える。
この「電話」というのは、前掲の「政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話(日時不明)」を指すのであろうが、高市大臣が安倍総理(当時)に電話したのか、それとも今井秘書官に電話したのかさえも、よく分からない記述となっている。しかも、語尾は「ようだ」という「不確実な断定」となっている。
前掲の「政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話」の件にしても「日時不明」という曖昧さ。更には安倍総理の発言内容の記載にしても「番組を複数例示?」と「?」が付いている。つまり、本当に総理が「問題意識を持っている番組を複数例示」したか否か、この文書を書いた本人もよく分かっていなかったということだ。
捏造とは「ありもしないことを、事実であるかのようにつくりあげること」である。私は本文書の作成者が、当時、何らかの意図や悪意をもって、この文書を書いたとは思わない(また全ての内容が嘘だとも当然思わない)。ただ、伝聞の伝聞を記している箇所(前掲・3月13日の文書も、山田総理秘書官→安藤局長→文書記述者)もあり、そういった点に関しては、どれだけ「真実性」を持っているかは要検討ではないか。
「捏造」というよりは「不正確」なことを記した可能性もあるのではないか。文書のどの辺りの内容が「捏造・不正確」なのか、はたまた「真実・正確」か。「行政文書」に登場する重要人物を全て国会に呼んで証言してもらう。それも「真実」を明らかにする上での1つの重要な手法なのではないか。