書店は生き残れるか

2010年2月、私は次のようにツイートしたことがあります――米国で電子書籍市場が急拡大していますが、それは当たり前のことで、本に限らず全てはデジタルになって行くでしょう。海外に本10冊を持って出張するのと、軽くて小さい電子書籍端末を一つ持って出張するのとでは非常に大きな違いがあります。日本でも早く電子書籍が普及しないものかと思っています。

日本経済新聞に昨年、「国内の書店、20年で半減」(1月24日)とか、「書店の無い市町村26%に 店舗10年で3割減」(12月9日)とかと題された記事がありました。書店の存在理由云々に拘らずこれだけネットが発達してきますと、わざわざ本屋に行き新刊を見よう・本を買おうという人の数は減少の一途を辿ることでしょう。デジタル化が進み情報氾濫する社会の中で、書店の生き残りは更に厳しさを増して行くと思います。その点例えば1994年創業のアマゾンなどは此の間、所謂ロングテールという考え方で巨大なウェアハウスを幾つも作り品揃えを徹底して多様な顧客ニーズに備える等してきたわけです。

私は学生時代は、少なくとも週に一度は本屋に行っていたと思います。今は、殆ど全てネットに置き換わりました。勿論「読んで頂きたい」と私宛に送られてくる沢山の御本には可能な限り目を通すようにしています。一々書店に向かい自分で本を探すのは嘗ての森信三先生等、一人の人間の全思想・全足跡を読みたいという思いから、一人の全書に立ち向かう時ぐらいでしょう。従って今は私の場合はネットで買えないような書を探して、古本屋に行くことの方が多いです。

それから知のインフラということでもう一つ、米国では早くからインフォメーションサイエンス、取り分け図書館情報学というようなものが考究され、企業のケースで言うと製品の開発やディマンドに関するもの、あるいは特許に関連する事柄といった図書館の全情報を検索し得るシステムが拡張的・専門的に整備されて行きました。それはA企業がある研究に取り組もうとする場合、世界でそうした研究を行っている所が既にあるのかどうかを調べる為に、きちっと検索出来るようなシステムが絶対に必要になるからです。情報集積を如何に高め、分類して行くかは専門的なライブラリアンの存在でかなりメリットが齎された故、図書館は無くならないと思います。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年3月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。