ラジオの聴取率が下がり、テレビの視聴率も下がった理由は生活環境の変化の中でのパイの奪い合いではないかと思います。もっと面白いものがあるぞ、という訳です。近年のテレビ不信の主因はユーチューブの普及なのだと思います。私も5-6年前にケーブルテレビの契約を止め、巨大なテレビ画面は時々ネットフリックスで映画を見る時ぐらいになりました。あとはパソコン画面でユーチューブを流しながら食事をするという感じで使っています。
そのユーチューブも最近は再生回数が下火だと日経が報じています。確か、同様の指摘は他のメディアでも複数ありました。トレンドとしては確かなのでしょう。個人的には以前ほどハマることは無くなりました。理由の一つはユーチューブにコマーシャルが増えたことです。もちろん、お金を払ってコマーシャルフリーにすればよいだけなのでしょうが、それだと頑張っているユーチューバーに失礼かな、と思っています。
フィットネスの際は、ユーチューブの音楽を再生しながらトレッドミルなどを利用するのですが、せっかく良い曲で調子づいていたらブチっと切れてコマーシャルに切り替わるとせっかくランナーズハイになりそうなところでくじかれてしまいます。
私は皆さんが個性を出して頑張っているユーチューブ制作の姿に応援したいので支援しているのですが、社会全体で見ると明らかに下落傾向が強まっています。日経の記事でも「ここ数年は過去ほどのヒットは少ない」とし、様々な分析も行われています。一部はTikTokに流れているということもあるのでしょう。
が、それは年齢層ごとにもう少し分析した方がよいかもしれません。我々の年層が家に帰ったらテレビをつけるのが当たり前だったように若い方はスマホで動画をみるのが当たり前というか生活の一部なのだと思います。ただ、どこかで潮流は変わるような気がしています。
では何になるのでしょうか?明白なトレンドが出ない時代を迎えるかもしれません。たとえば音楽再生に於いてレコードが売れているらしいという話題を1-2か月前にさせて頂きました。昨日の報道ではアメリカではついにCDの売り上げ枚数をレコードが超えたとあります。
ではレコードが音楽の主流に復権するか、と言えばそれもあり得ません。レコードはやっぱりオタク系だと思うのです。ただ、オタク度が比較的浅い人も興味を持っていること、あるいはレコードという物体そのものを知らない若者たちには物珍しさも手伝い、一時的に注目を浴びているのだとみています。
余暇時間の使い方という点でふと目に留まった日経の記事が「米国で『リアル書店』人気復活 コロナ契機、開店相次ぐ」というものです。記事では独立系書店からチェーンまで増えており、アメリカにおける21年販売数は8億2千万冊と過去最高だと報じられています。
私どもが先々週の週末にフェアに出展してアニメ系書籍を中心に販売したところ、引き続き良好な推移で確実な手ごたえを感じています。ではどんなものが売れるのか、といえばいわゆる文字が一杯詰まったものではないのです。アニメ系に絞っているので原画集、絵コンテ、ビジュアルガイドなど主に「観る書籍」です。装丁も立派で価格も当地では円換算して5-8000円ぐらいするものでもそれなりにはけていきます。買うのは99%が非日本人。残念ながら日本の方の本離れの方が激しい気がします。
我々は余暇の時間の使い方、あるいはメディアや情報源という範疇に於いて十分すぎる選択肢を持ちつつあり、どれかが他を抑えて圧倒することはないのだろうとみています。日本でも書店受難の時代となった一つはアマゾンに原因があると思います。ネットで買えるのは便利そのものですが、書店の良さはそこに30分もいるとあれも、これも読みたいという気にさせるのです。だけど、インターネットの向こうにある書籍案内を見ても衝動買いはしない、これが世間一般の活字離れを生んだ遠因ではないかと思います。
幸いにして本はアマゾンというイメージは陳腐化してきました。あくまでも選択肢の一つでしかないのです。書店の平積み具合、手書きのコメント、人だかりを見ると私はドキドキします。アマゾンでは決して味わえないのです。
映画でもネトフリもいいけれど映画館はまた独特の雰囲気があります。音楽はコンサートやライブハウスなどは全く違う世界を提供します。コロナから解放されて選択肢も増えて自分の好みをハマれるというのは幸せでもありますが、事業者や運営者側からすればどれだけ個性を出すか、なかなかチャレンジングだともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月12日の記事より転載させていただきました。