連日ネット上で各方面から批判を浴びている小西洋之議員が、とうとう逆切れしたようだ。
池田氏のこの発言を含めた一連の発言の違法性を検証しています。強力な法的措置を講じます。
なお、池田氏は森友事件に関して過去に、私が他の訴訟で勝訴している同様の名誉棄損の発言をしており、その発言も法的措置の対象です。 https://t.co/sBNglJsW8x
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) March 21, 2023
いろいろ誤解があるようなので、とり急ぎ一般論で国家公務員法の守秘義務について解説しておこう。
「職務上の秘密」とは何か
まず問題になる「職務上の秘密」とは何か。これは国家公務員法で定義されている。
100条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
2.法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長の許可を要する。
文書の内容を問わず、総務省がその公開を許可しなかった文書を外部に渡すことは守秘義務違反となる。今回の文書は小西氏自身が「極秘文書」だと強調しており、この定義による「職務上の秘密」にあたることは明らかだ。
秘密を取得した側の刑事責任は問えるか
これについては、西山事件の最高裁判決が次のように判断している。
「そそのかし」とは、右一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の秘密漏示行為を実行させる目的をもつて、公務員に対し、その行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為をすることを意味する。
西山事件の場合は「そそのかし」行為があったことは明白だが、その違法性は報道に公益性があれば阻却できる。しかし西山記者には「取材対象者の人格を著しく蹂躪した取材行為」があったため、有罪とされた。
これについては別の記事でも書いたように疑問があるが、本件は行政秘密を扱う立場にある国会議員が、それを意図的に漏洩して国会を混乱させ、高市大臣を追い落とそうとした政治利用であり、違法性は阻却できない。
「公益通報」にあたるか
小西氏も違法性は意識しており、本件は公益通報だと主張しているが、公益通報者保護法(第2条3項)によれば、公益通報の「通報対象事実」とは
個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるものに規定する罪の犯罪行為の事実
つまり公益通報とは犯罪行為を内部告発することである。本件の放送法解釈が犯罪行為に該当しないことは明らかなので、公益通報には当たらない。
国会議員の免責特権は適用できるか
小西氏は、自分には免責特権があると信じているようだ。
私の国会活動は憲法で民事、刑事責任が免責され、そもそも「国家公務員が公益通報を行うことは、国家公務員法の守秘義務に反せず、むしろ、積極的に法令違反の是正に協力すべき」が政府見解です。
きちんと勉強してから発言することをお勧めします。
なお、池田氏には最大限の法的措置を検討します。 https://t.co/ycVUWyeNVo
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) March 21, 2023
憲法51条では「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない」と定めているが、院外の記者会見やSNSで秘密を漏洩した場合にはこの免責特権は適用されない。これは森ゆうこ事件の東京高裁判決の示す通りである。
国会議員には不逮捕特権がある
いずれも自明の法理だが、6月までは国会が開かれているので、小西氏には不逮捕特権(憲法50条)があり、強制捜査するためには検察が国会に許諾請求する必要がある。本件は現行犯であり、証拠隠滅のおそれも強いことから、許諾請求が出る可能性もある。
以上は一般論であり、本件に適用できるかどうかは不明だが、公権力を行使できる国会議員が民間人を訴訟で脅すスラップ訴訟は許してはならない。小西氏が訴追されれば、彼の暴走を傍観している立民党の執行部も連帯責任を問われる。執行部が責任をもって事態の収拾にあたるべきだ。