岸田総理が「しゃもじ」にかけた思いは?具体的支援策と制裁は?

こんにちは、音喜多駿(日本維新の会 参議院議員 / 東京都選出)です。

先週の金曜日の衆議院に引き続き、本日は参議院本会議で岸田総理への帰朝報告質疑が行われました。出番が連チャンですが、私は外交防衛委員会の理事として登壇。

岸田首相がゼレンスキー大統領にしゃもじ贈った理由 維新・音喜多駿氏「ロシアを『めしとる』意味あるのか」
https://news.yahoo.co.jp/articles/73b8f3373bd0129eed5c69d0ad304a4643030af6

>岸田首相は「必勝しゃもじに加え、平和を祈願するという意味合いを込めて、宮島御砂焼(おすなやき)による折り鶴をモチーフにしたランプです」を、しゃもじと折り鶴のランプを贈ったと説明した。

>しゃもじは広島の名産品で、縁起物として知られる。日露戦争や日清戦争の際、出征兵士が「めしをとる→敵をめしとる」の語呂合わせで厳島神社に奉納したことが由来で、必勝の験かつぎにも使われている。

注目度が高いしゃもじの質疑報道ばかりがニュースになってしまいましたが…

これを追及することはまったくメインではなく、ウクライナへの具体的支援をどう考えていくのかという質問の前段で聞いたものでした。

岸田首相、戦地訪問前の報道「あり方を不断に検討」(日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA271GW0X20C23A3000000/

>日本維新の会の音喜多駿政調会長は自衛隊法が自衛隊が「できること」を示す「ポジティブ・リスト」方式で、明示されていないことへの対処が難しいと指摘した。

>首相は「実力組織である自衛隊がどのような役割を果たし、そのために何ができるかは国会の民主的統制の下に置かれるべきだ」と話した。

>「自衛隊による海外の活動はこれまでも立法措置を講じることによって実施してきており、こうした考え方を維持したい」と慎重な姿勢を示した。

また、自衛隊法の縛りで今回の総理訪問に自衛隊が同行警護できなかったことから、自衛隊は「できないこと」を法律に規定する「ネガティブ・リスト」方式にすることなどを提案しました。

与党自民党も同じ問題意識をもっていましたが、総理は自衛隊法そのものを改正することには慎重。個別法で対応すべきとの考えのようですね…。

明日には参議院でも予算が採決され、統一地方選も本格化していきますが、参議院では決算委員会が開催されます。

一括質問・一括答弁では深まらなかった点について、しっかりと政府与党の考えを質し、政策提案を続けていきます。

質疑の動画全編

それでは、また明日。

【以下、代表質問原稿の全文】

日本維新の会の音喜多駿です。会派を代表して、総理の帰朝報告に対して質問をいたします。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国家の主権と領土の一体性を侵害する露骨な侵略行為であり、力による現状変更を重ねるロシアの不法行為は断じて容認できません。日本政府においては、民主主義陣営と固く結束し、ウクライナと連帯するべきであり、今回の総理の訪問には敬意を表します。しかし、訪問のロジスティックスに問題がなかったか。訪問の成果が具体的に何であるのか、明確な貢献が今後どこまできるのかについて、丁寧に確認をさせていただきたいと思います。

各国首脳がウクライナ入りする際は、それぞれ各国の軍人や軍の特殊部隊が警備を担当しています。しかしながら日本の場合、防衛省・自衛隊が移動や警護に関与していなかったことが明らかになっています。SPなどは同行したということですが、警護の点でウクライナ側に多くの負担を強いてしまったのではないでしょうか。今回のウクライナ入りにつき、自衛隊による警護は行われず、ウクライナ政府が全面的に責任を負って実施したことにつき、妥当と考えているのか、総理に伺います。

この点、自衛隊による警護が行われなかった理由は、自衛隊法です。自衛隊法に、要人警護のために自衛隊を海外派遣する規定がないために、今回総理のウクライナ入りに自衛隊は全く関与ができませんでした。安全保障環境が激変し、不確実性が増す時代において、自衛隊法の仕組みを再考する時期に来ていると考えます。自衛隊は「原則禁止、一部許可」のいわゆるポジティブリスト方式の下で活動することが求められていますが、「原則許可・一部禁止」のネガティブリスト方式に改めるべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

ロジスティクスの観点では、情報管理についても万全であったか疑問が残ります。ポーランドで総理が列車に乗る様子がテレビで放送されましたが、これがもしテレビカメラでなく、ある国のスナイパーだった場合、深刻な事態になった可能性がありました。一方で、一部の閣僚からは、「なんで総理が安全な地域に戻ってから、報道しないのか」というような、報道に統制をかける声も聞こえます。しかし、これはひとえに政府の情報管理能力の問題であり、報道の自由について政府や閣僚が介入することはできる限り避けるべきだと考えます。

今回のウクライナ訪問について、一部閣僚から報道のあり方に疑問の声が上がっているところ、外務省の発表も先行していたことを踏まえれば、報道統制と捉えられるような発言はいささか問題といえないか、総理に伺います。

そのうえで、今回の訪問に際して情報管理について、報道規制の発想ではなく、報道機関が把握してしまったというセキュリティの視点で問題がなかったか、検証するべきではないかと考えますが、総理の見解を伺います。

次に、ウクライナ支援の内容面について伺います。総理は、「必勝しゃもじ」を送られたとのことですが、このしゃもじには「飯を取る」すなわち、敵を召し取るという意味が込められており、日露戦争にも由来するものであると言われています。ウクライナに対して、ロシアという「敵を召し取る」という強いメッセージを込めているのか、総理の贈答品に込めた率直な想いを伺います

そういった強い想いがあるのであれば、ウクライナへとの強い連帯を、具体的な支援という形で進める必要があります。我が党は、総理がウクライナ入りされたちょうど同じ日に、国会議員が歳費やボーナスを自主カットして積み立てる「身を切る改革」によって捻出したお金を原資に、ウクライナに日本製のピックアップトラック20台や缶詰などの食料品を贈呈することができました。これは、ウクライナ側のニーズが非常に高いものであり、全権特命大使も「我々が本当に求めていたもの」と喜んでくださいました。ウクライナ大使館など関係者と接触していくなかで、具体的な要望が複数あり、日本政府とウクライナ政府の間のコミュニケーションが不足しているのではないかと率直に感じています。

ウクライナのニーズにつき、政府として詳細な聞き取りは十分に行えているでしょうか。また総理は今回の訪問で、どのような具体的ニーズを汲み取ってきたのでしょうか、伺います。

殺傷能力のある軍用品でなくとも、即時に使える「具体的なモノ」を現地に届けることは、日本政府の決断があればケタ違いの規模で可能なはずです。よりスピーディに、事態に応じてウクライナのニーズに合わせた、日本独自の適切な支援をしていくべきと考えますが、総理の見解を伺います

次に首脳会談でも議題にあがった対露制裁について伺います。今年のG7の議長国でもある日本は、リーダーシップを発揮して対露制裁を進める必要があります。総理も今回の首脳会談において、厳しい対露制裁を継続することが不可欠であり、特に制裁回避・迂回対策が重要である点に言及した上で、2月のG7首脳声明で合意した制裁の実施調整メカニズムを早期に立ち上げ、G7議長国として積極的に取り組んでいきたい旨を述べられたとのことですが、具体的にこの2023年2月のG7首脳声明で合意した対ロシア制裁の実施調整メカニズムをいつ立ち上げるのでしょうか。また、既存のG7による制裁と比較して、どのような特徴を有しているか、総理に伺います。

そのうえで、ロシアの軍事侵攻は一年を経過しました。戦争を長引かせずに、迅速な停戦・撤退を促すためにも、より厳しい制裁を視野に入れていく必要があります。G7がロシア産の石炭・石油輸入のフェーズアウトや禁止を進める中で、天然ガスの輸入禁止やサハリンプロジェクトからの戦略的撤退など、日本がさらにエネルギー分野での制裁を強化していく余地はあるか、総理に伺います。

日ウ共同宣言についても伺います。国際刑事裁判所ICCは、総理のウクライナ入り前の17日、プーチン大統領に逮捕状を発行しました。ICCには、人道危機における抑止力として大きな役割を果たしています。一方で今回の日ウ共同宣言の7項目(こうめ)において、「戦争犯罪及びその他の残虐行為の不処罰はあってはならないことを強調した」とありますが、この10日ウ共同宣言の7項目に、ICC逮捕状への言及がなかった理由を総理に伺います。ウクライナがICC締約国でないことも理由の一つと考えられますが、これを機にウクライナの参加を呼び掛けることも一案ではないでしょうか、総理の見解を伺います。また、「国際法に従って」とありますが、これにICCへの協力が含まれるのか、併せて総理に伺います。

日ウ共同宣言の25項目(こうめ)では、台湾海峡の平和と安定の重要性についても確認しており、覇権国家である中国とロシアとの接近も警戒される中、台湾との連携はこれまで以上に必要不可欠です。すぐさま防衛行動の訓練をともにすることは難しくとも、ミサイルの飛来などに備えた国民保護の訓練の点で進んでいる台湾とのナレッジの共有や共同訓練の実施を模索するべきではないかと考えますが、総理の見解を伺います。

中国の動向もしっかりと分析し、ロシアと中国との過度な結びつきを警戒する必要があります。12総理がウクライナ訪問をした直前に中国の習近平主席はロシアを訪問しています。中国のウクライナ問題における立場をどのように分析しているか、総理に伺います。

中国がアメリカに代わって世界の覇権国になることも警戒する必要があります。13イランとサウジアラビアの関係正常化に続いて、中国がロシアとウクライナの間の仲介外交に本格的に乗り出すことも考えられるのか、中国の狙いをどのように分析しているか、この点も総理に伺います。

最後に、インド訪問について伺います。総理は、インド世界問題評議会におけるスピーチで、14官民合わせて750億ドル以上を投じると表明されました。この点、インド政府が中国からの投資を限定的に許可したことを踏まえれば、今後は量だけでなく、投資の質の点で独自の戦略を取っていく必要があると考えますが、総理の所見を伺います。

FOIP実現のためには、官民一体となって取り組む必要があり、現地法人の声も聞く必要があります。そして、15FOIPの根底にあるものは価値観外交であり、インドで活動する本邦企業から「法制の運用が不透明である」という声が多数あることを踏まえれば、開発やインフラ整備だけでなく、法の支配に基づく法制運用支援や高等教育支援なども進めるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか、総理に伺います。

そして、価値観外交をすすめるために、16インド外交においては、人権担当の補佐官の役割も重要になってくるのではないでしょうか。そもそも人権担当補佐官の役割について、総理はどのように捉えているか、伺います。

以上、G7議長国として主体的な姿勢を示し、後追いの受動的な対応に陥ることなく、日本の外交プレゼンスを一層高めることを期待し、私からの質問を終わります。

naotake/iStock 


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2023年3月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。