インボイスをめぐって、また国会で議論があった。今回の論点は、消費税は「預かり金」かという問題である。
財務省の見解でも消費税は「預かり金」ではなく対価の一部。預かるというのは擬制で、転嫁は義務ではない。10%分を税務署に払えばよく、最終価格に転嫁しなくてもいい。https://t.co/PBUxQcEj3D
— 池田信夫 (@ikedanob) March 20, 2023
消費税は「預かり金」ではない
ChatGPTに「消費税は消費者からの預かり金ですか?」ときいてみた。
消費税は、厳密には消費者からの預かり金ではありません。消費税は、商品やサービスの購入時に課される税金であり、政府が公共サービスやインフラ整備などの財源として使用します。企業や個人事業主は、消費税を消費者から徴収し、税務当局(国税庁など)に納付する義務があります。
一方、預かり金とは、顧客から預かった資金を一時的に保管している金額で、企業が顧客のために使用する資金です。預かり金は、企業自体の収益や経費とは直接関係ありません。
消費税は、企業が税務当局に納付する義務があるため、消費者からの預かり金とはいえません。ただし、企業が消費税を消費者から徴収してから税務当局に納付するまでの間に保管しているという意味では、一時的に預かるという見方もできます。しかし、その目的と性質が異なるため、消費税を消費者からの預かり金とは通常は呼びません。
これが正解である。こども向けの説明では「消費税は消費者からあずかったお金です」と説明するが、これは擬制である。この図でもわかるように、消費者に納税義務はない。
財務省の説明
消費税を納税するのは消費者ではない
消費税法は、次のように定めている。
第5条(納税義務者) 事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、この法律により、消費税を納める義務がある。
ここに書かれているように、納税義務を負うのは事業者であって消費者ではない。したがって消費税という名前が正しくない。これは多段階の付加価値に課税する付加価値税なのだ。
日本でも中曽根内閣が1987年に5%の売上税という名前で閣議決定して国会に提出したが、小売業界の反対で廃案に追い込まれた。このため竹下内閣は「小売店は消費者の負担する税金を預かるだけだ」という建て前で「消費税」という名前に変えて税率を3%に下げ、その表記も本体価格と税額を別々に表示する「外税」にした。
これが失敗だった。今度は「消費者が税を負担するので家計が苦しくなる」という反対運動が起こり、1989年の参議院選挙では社会党が第一党になった。
「益税」を防ぐためにインボイスは必要だ
しかし事業者が消費税を価格に転嫁する義務はない。値上げするのは業者の自由なので、10%の代わりに5%転嫁してもいいし、転嫁しなくてもいい。今年4月から、内税表示が義務化される。ただし利益(付加価値)には10%課税されるので、転嫁できなかった差額は業者の負担になる。
それを根拠にして今年10月から義務づけられるインボイス(請求書)に反対する業者がいるが、これは逆である。売り上げ1000万円以下の事業者が消費税を納税しないのは合法だが、こういう免税業者が(負担していない)消費税を価格に転嫁する「益税」は詐欺の一種である(違法ではないが)。
益税を避けるために、インボイスは必要だ。これが義務化されると「免税業者が取引できなくなる」と漫画家などが騒ぎ、一部の実施が延期されたが、この解決法は簡単である。漫画家も原稿料の10%を納税し、その税額をインボイスで出版社に請求すればいいのだ。免税は権利であって義務ではない。
消費税は多段階の付加価値税なので、すべての段階で納税額を確認する必要があるが、今はインボイスが義務づけられていないため、粗利に1割課税する丼勘定の「第2法人税」になっている。売り上げを納入先の帳簿と照合して不正を防ぐために、インボイスは必要だ。それに反対するのは、払うべき税金をポケットに入れている業者である。