ホンジュラスの台湾との外交関係断絶に関して

日本時間の3月26日、ホンジュラスが台湾との外交関係断絶を発表し、中国がホンジュラスとの国交樹立を発表しました。かつて外務副大臣としてこの問題に関わった者として、差しさわりがない部分について、個人の視点としていくつかのポイントを指摘したいと思います。

鈴木外務副大臣のホンジュラス訪問(結果)

まず、かつて台湾と断交し中国と国交を樹立した国を含む多くの国の政府から耳にすることとして、中国政府が事前に「話していたこと」と実際に「実施されたこと」が違っているケースが多い。すなわち、「話が違う」ことが多いという現実です。

また、様々な援助案件において、あまりにも低品質なものが作られたり、受注者から労働者まで中国のもので行われた結果として自国経済へのメリットが全く無かったというケースや、いわゆる「債務の罠」のように高い金利や返済で苦しんでいるケース、港湾のような戦略的な資源や成長に資する資源を実質的に差し押さえられてしまうケース、優先弁済を強いられ結果的に他国や国際機関の融資を受けづらくなることなど、内々の不満や後悔を耳にすることも少なくありません。

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もちろん、我々も内政干渉をすることは出来ませんしするべきではありませんが、その国や国民にとって適切な判断を当該政府が下すことができるように、日本としても参考となる情報をきちんと当事国に提供することが重要です。

また、迂回したと思われる資金や場合によっては中国政府に関連する資金が、有力者に直接的、間接的にわたっているといった噂を現地で耳にすることもしばしばであることも付言しておきたいと思います。

次に、今回一部でも報道がありましたが、台湾が外交関係をネタに金づるにされるケースがあるのも事実です。中国のなりふり構わない外交攻勢の中で、しかも上に書いたように、やり口がかなりえげつない状況の中で、一部の当事国が、「台湾が外交関係を維持したかったら巨額の資金供与を」という圧力をかけているケースがあることは否定できません。

台湾一国でこうした状況に対抗することは現実的にかなり難しいので、日米などの自由主義国が、常日頃から相互に連携しておくことが重要です。具体的には、当事国に対する経済協力などにおいて、台湾との外交関係を維持していることが当該国が価値を共有している証左であって、その規模の判断に大きな影響を与えているということを明確に対象国に伝えることで、台湾と外交関係を断絶するデメリットが台湾からの経済協力の停止以上に大きな影響を自国経済に与えるというメッセージを送ることが重要と思われます。

第三に、台湾の外交における生存空間が維持されることの重要性ですが、特にわが国にとっては、感染症や航空など、様々な分野で台湾が国際機関に加盟できていない状況は、わが国自身の安全にとって極めて重大なリスク要因になりうるという点が挙げられます。

このような国際機関から台湾を排除する工作を中国が続け、また国際機関の事務局などにも人を送り込んで影響力を強化しようとしている現実がある以上、そこに抵抗するための発議を国交国として行うことが出来る国の存在は極めて重要です。

確かに、こうした議論を進めていくと、「日米などG7をはじめとした多くの国が台湾と断交しているにも関わらず矛盾しているではないか」という議論が出てくるのはある意味自然です。

しかし、1970年代であればいざ知らず、今の状況で、仮に多くの国が中国と断交して台湾と国交を樹立したとすれば、北京が「一つの中国」を堅持している以上、価値も体制も全く異なり、日台や米台のような相互の深い信頼に基づく実務的な関係を構築しえない軍事独裁大国の中国が、国際社会から孤立し、様々な条約の空白地となり、日本の民間企業も今以上にリスクにもろに曝露され、さらには核弾頭などの大量破壊兵器についても野放しということとなりかねません。それは現実的ではないし、我が国や地域の安全保障上も賢い選択ではありません。

現実的な解決策を考えれば、最も妥当なのは、中国と台湾がそれぞれ別の国家として各国との国交を持ち、国際社会の中で共存することですが、まさにそれこそが、中国が最も嫌う事態であって、そのような状況を避けるために、直ちに台湾侵略を開始しないとも限りません。

このような中では、台湾を取り巻く外交的状況の現状を維持するために、日米が他の価値や利害を共有する豪州や英国、インド、カナダ、ベトナム、フィリピン、欧州諸国などと連携し、様々な努力を行っていくより他ありません。

引き続き、日本の与党の一政治家として、台湾を取り巻く国際環境の現状維持のために全力を尽くしてまいります。


編集部より:この記事は、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区、自由民主党)のブログ2023年1月1日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。