パリジャン御用達、老舗名門ショコラトゥリー『フーケ』

加納 雪乃

パリに数多くある素晴らしいショコラトゥリー(チョコレートショップ)。私自身、ショコラに目がないので、今日はあそこのを明日はこちらのを、と日々せっせとショコラ摂取に励んでいる。仕事柄、「ショコラトゥリー巡りをしたいので、おすすめを教えてほしい」と言われることもよくある。

パリの名門ショコラトゥリーの多くは、日本に既に出店していたり ”サロン・デュ・ショコラ”などでも買える機会があるが、今回は、古くからパリジャンに愛されてきた知る人ぞ知る名店「フーケ」を紹介したい。

パリオペラ座近くの小道に建つ「フーケ」。建物裏手にアトリエがある。

創業1852年。ナポレオン三世の統治が始まったばかり、パリの街はまだ複雑に入り組む小道ばかりだった時代に、食材店としてスタート。以後、手作りのショコラやパート・ド・フリュイ(フルーツゼリー)の名店として着実に歴史を積み上げ、昨年170年を祝した名門中の名門ショコラトゥリーだ。

家族経営で店を発展させてきた。

その顧客リストを紐解くと、画家のクロード・モネやアートコレクターのガートルード・スタイン、デザイナーのクリスチャン・ディオール、歴代フランス大統領といった錚々たる名前が連なる。

多くのショコラトゥリーが、人気が高まるにつれ、製造アトリエをパリ郊外に移し、大規模化・機械化する中、「フーケ」は今も、創業時と同じ場所に店とアトリエを構え、職人たちが昔ながらの製法で手作りしている。

「フーケ」が最も得意とするのは、プラリネ。プラリネは、アーモンドやヘーゼルナッツ、ピスタチオなどのナッツを、ローストして飴がけしたあとに、砕いてペースト状にしたもの。

出来立ての、フルール・ド・セル(塩の花)を効かせたアーモンド・プラリネ。

ショコラトゥリーの中には、市販のプラリネにチョコレートコーティングするところもあるが、「フーケ」では、創業当時から変わらず、昔ながらの小振の銅鍋を使って手作りでさまざまな風味の上質なプラリネを作っている。

砕いたアーモンドをまぶしたプラリネの制作風景。

出来立てプラリネにチョコレートをコーティングしたボンボン・ショコラは、歯応えよいナッツの香ばしさと甘みにショコラの上品な風味が重なり、嗅覚、触覚、味覚を大きな喜びで包んでくれる。

ピエモンテ産ヘーゼルナッツ、ゲランド産塩、ブルボンヴァニラ、そして最上かつフェアトレードのクーヴェルチュールショコラなど、質の妥協を許さない食材を、卓越した職人技で極上のショコラに。

丸いフォルムのエレガントなギフトボックス。会社の贈答用などの注文も多い。

ブティック裏手のアトリエで働く職人たちは、20歳でここに見習いで入りそのまま20年間働き続けているという責任者をはじめ、ここで長く働く人が多い。「”手作り”という、職人にとって一番大切な部分を、とても高いクオリティで行うことができる心地よい職場」と笑顔を見せる。

季節は春、復活祭直前。フランスのショコラトゥリーが一年で一番忙しい時期で、アトリエには、卵や雌鳥、うさぎといった復活祭にちなんだモチーフのショコラオブジェ作りが最盛期。

復活祭モチーフショコラが並ぶ。

ブティックにも、ショコラオブジェやいろいろな風味や食感のプラリネを詰めた小さな卵型ショコラもずらり並び、「フーケ」を愛するパリジャンが続々と、おいしいショコラを求めてやってくる。

クラシックなショーケースをおいたブティック。

LOUIS FOUQUET
LOUIS FOUQUET