私たちはサルでも蛮族でもありませんので

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本日、国民民主党は、日本維新の会と有志の会の皆さんと、緊急事態条項のうち議員任期の延長に関する憲法改正の条文案について合意しました。

何度も言っているように、国民民主党の緊急事態条項は、権力に白紙委任を与えて権力行使を容易にするためのものではなく、安易な人権制限が起こらないよう、緊急事態においても可能な限り国会機能を維持するなど三権分立が機能するよう担保する「権力統制条項」です。

なお、憲法裁判所の関与の必要性のほか、議員任期延長以外の国会機能維持のための措置や、絶対に制約してはならない人権に係る規定等の条文案については引き続き議論を行っていきますが、合意した条文案については速やかに憲法審査会に提示し、他の会派とも合意をはかっていきます。今後とも、国民民主党は、建設的で丁寧な憲法改正の議論をリードしていきます。

なお、昨日、立憲民主党の小西洋之議員が、衆議院の憲法審査会を毎週開催して議論することについて、憲法審査会を毎週開くのはサル(猿)だとか蛮族だなどと発言しましたが、憤りを感じるとともに悲しみを感じます。真摯な議論を行っている私たち衆議院憲法審査会に対する冒涜であり、発言の撤回と謝罪を求めます。本日の発言の概要は以下のとおりです。

憲法審査会発言要旨(2023年3月30日)

まず、昨日の立憲民主党の小西洋之議員の『憲法審の毎週開催は「サルがやること」「蛮族の行為」』『衆議院の憲法審査会は、誰かに書いてもらった原稿を読んでいるだけだ』と発言した。

私たちは、サルでも蛮族でもないと思うのだが、こうした発言は我が党のみならず、与野党の合意の中で真摯な議論を積み重ねてきた当審査会に対する冒涜である。強く抗議するとともに、発言の撤回と謝罪を求めたい。森会長に対応を一任するので小西議員に対し正式に抗議していただきたい。強い憤りと悲しみを禁じ得ない。

本日、日本維新の会、国民民主党、有志の会の3つの会派で、緊急事態条項のうち議員任期の延長に関する条文案について合意を得ることができた。野党の中でこうした改憲条文案について合意できたのは画期的だと考える。

条文案の中身も本審査会での議論を踏まえたもので、憲法改正に向けた現実的かつ合意を得やすい内容になっている。本審査会にお示しするので、今後の改正案の成案づくりのたたき台としてご議論いただき、他の会派の皆さんとも合意を得ていきたい。

まず、その内容について簡単に説明したい。主なポイントは4つある。

第1のポイントとして、大規模災害など4+1の事態の発生を前提に、「選挙実施困難」要件として「広範性」と「長期性」を具体的に規定したことである。すなわち「選挙の一体性が害されるほど広範な地域において国政選挙の適正な実施が70日を超えて困難であることが明らかな場合」に延長を認めることとしている。

逆に、70日までは可能な限り参議院の「緊急集会」を活用することとしている。加えて、一部の学説が認めている、緊急集会が解散時のみならず任期満了時にも開催できることを条文上明記し、解釈論争に結論を出している。このことで、「一時的・暫定的・限定的」な対応は「緊急集会」、他方、70日を超えるような長期にわたる場合は「任期の特例延長」という形で、両者の棲み分けを明確にした。決して参議院の権限を小さくするものではなく、解釈上言われていたことを明確化したものである。

2つ目のポイントは、手続きについて、「内閣の発議に基づき、国会の各議院の出席議員の3分の2以上の議決」で特例延長を認めることとしている。やはり、通常の任期の例外を作る以上、3分の2以上が必要と判断した。

3つ目のポイントは、任期の延長期間について、できるだけ延長は例外的にすべきとの観点から、「上限を6月」として、再延長を可能としている。なお、選挙が可能となったと国会が判断した場合には、過半数の決議で延長は終了するとしている。

4つ目のポイントは、解散後、任期満了後の前議員の身分については、延長の国会議決をするために必要な限度において、任期は終了していないものとみなす規定を創設し、議員身分が復活したうえで任期が延長されるものとしている。

なお、我々は緊急事態条項は全体パッケージで規定することが必要だと考えており、残された課題、すなわち、憲法裁判所の関与の必要性、議員任期延長以外の閉会禁止などの国会機能維持のための措置や、絶対に制限してはならない人権に係る規定等の条文案については、今国会中に成案を得ることを目指すことにしている。また、緊急政令及び緊急財政処分に係る規定についても、引き続き、検討を進めることとしている。

3会派で合意を得た条文案については、当審査会における議論も踏まえた内容になっているので、これをたたき台にご議論いただき、合意に向けた各会派の協力をお願いしたい。

なお、前回、立憲民主党の篠原委員のご意見も大いに参考にさせたいただいた。感謝申し上げたい。ただ、篠原委員の発言内容に同意しかねる点もあり、やはり立憲主義の観点から心配で、ますます夜眠れなくなっている。ぐっすり寝れるためにも一つ確認したい。前回、篠原委員は、解散後に選挙ができず議員が不在になる事態への対応として、「選挙で選ばれた衆議院議員としてではなく、経験を積んだ前議員として特別な資格を与え、国政の重要事項に関与できるようにすればよい」「緊急事態なのでもう一踏ん張りしていただく」「憲法が想定せず規定していないことについて、憲法の精神に反せず、その枠内で工夫、立法措置でやってみて、数年ぐらい経ってからまとめて明文化したらどうか」と述べておられる。

前議員に議員並みの「国政の重要事項」に関与できる権限を与えるアイディアは傾聴に値するが、まさにそれこそ憲法に書くべき話であって、だからこそ、私たち3会派の条文案では、前議員の身分の復活規定について条文案に明記した。議員でないものに議員同等の「国政の重要事項」に関与できる権限を与えるような立法は、議員任期を定めた憲法45条、46条、国会が唯一の立法機関と定めた憲法41条、参議院の緊急集会による対応を定めた54条2項などに違反する立法になると考える。違憲立法の可能性もあるアクロバティックな法案措置を考えるのではなく、平時に落ち着いた環境の中で憲法を改正し、議員任期延長を可能としておくことが、よほど立憲主義に合致していると考える。そんな曲芸のような立法は本当に可能なのか。改めて篠原委員の考えを伺う。

また、奥野委員にも質問したい。奥野委員がかつて提案した「繰延投票の活用」については、野田内閣が平成23年11月2日に閣議決定した質問主意書への答弁書で、「法律制定により、国政選挙の選挙期日を延期するとともに、国会議員の延期を延長することはできない」とされており、法改正では国会議員の任期延長ができず、やはり憲法改正が必要だと考えるが、改めて奥野委員の考えを伺う。

とにかく、国民民主党は、緊急事態にこそ可能な限り国会の機能を維持することで行政監視機能や立法機能を維持し、行政権の肥大化や乱用を防止し、もって憲法が保障する基本的人権を守ろうと考えている。立憲主義を貫くためにも、憲法で定める議員任期の延長は憲法改正によって規定すべきであることを申し上げ発言を終える。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2023年3月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。