変化に強くなるメンタルの作り方

黒坂岳央です。

時代の変化はあまりにも速すぎる。ChatGPTは史上最速でアクティブユーザー数1億人に到達し、これはTikTokやInstagramよりはるかに速く、そしてすでに時代を大きく変えた。後に真のAI元年の黎明期、もしくは一般的にAIが使われるようになったエポックメイキングとして記録されるだろう。

厳しい資本主義社会、国際競争社会を生き抜くためには「変化に対応する力」が求められるのはずっと昔から言われてきたことだが、ここへきてあまりの変化の速さに変化への対応力が再認識されることになったと感じる。

個人的に変化に強くなるためのメンタルがあると思っており、本稿でそれを言語化することに挑戦したい。

Bulat Silvia/iStock

1. 「正しさ」にこだわりすぎない

SNSでは日々、自分の正しさを主張する人達で争いが起こっている。YouTubeやブログ記事には「あなたは間違っている!」と鼻息荒くコメントが書き込まれることは日常茶飯事だ。

個人的には「正しさ」はあまりこだわりすぎない方が良いと思っている。なぜなら何が正しく、何が誤りかなどどんどん変化するからだ。

人間のハードウェアとしての栄養やダイエットの常識は普遍の真理と思われがちだが、昨今でもバンバン「かつての常識」はひっくり返っている。「ダイエットしたければカロリーを控えましょう」とあちこちで言われ、みんなが成分表のカロリー数を見比べて食事を決めている中、「太りやすさを決める要素はカロリーではなく、実は血糖値だった」という意見が出てきた。

また、「エスキモーは糖質がなくても健康だ。糖質は毒でしかないから全部カットせよ」という意見があると思えば、「完全糖質カットは日本人の体には良くない」という反対意見も出てくる。これでは一体、何が正しいのかもうわからなくなってくる。「まんべんなくいろいろ食べ、できるだけ少食に抑え、生鮮食品を取り入れ加工商品少なめ」とファジーな結論になりそうだ。だがこの結論さえも今後はわからない。

栄養や健康だけではない。ビジネスの世界でも「これこそが正義」と言われたものはある日、テクノロジーの進展でアッサリ使われなくなってしまう。だから「自分の主張が正しい。自分の行動が正しい」と必死になりすぎることは逆にリスクだと思っている。

自分が正しいということに固執してしまうと、視野狭窄で思い込みが激しく、あらゆるエビデンスを自分の正しさの裏付けになるツールとして集中的に集めて結果的にどんどん裸の王様のような状態になっていく。

だから自分自身、できるだけ正しく、信頼のおけるエビデンスをつけて意見は出したいと思うが、それでも自分が間違っている可能性は絶対に排除しないように心がけている。そうしないと変化し続けることなどとてもできないためだ。

2. いい面を見る

大きな変化が起きると、大抵の人はネガティブな気持ちになるだろう。変化を受け入れるためには自分の過去の実績、行動、判断を否定しなければならず、新しい技術や知識をラーニングする必要性に直面するからだ。

しかし、どんなものごとでもいい面、悪い面がかならずある。ChatGPTもたとえばExcelのマクロ職人のような仕事で極めて簡単な作業の一部は、職を奪われる可能性はある。だがChatGPTにどう指示していいか分からなかったり、難しい専門性の高いマクロについては「マクロ作成指示職人」として新たな生存戦略が確立できる可能性はある(少なくともしばらくは)。

変化は常にチャンスとリスクが内包する。多くの場合、リスクばかりに目が向けられがちだ。しかし、リスク以上にチャンスも必ずあるはずだ。

筆者は昔、屈辱的な形で会社からクビを言い渡されたことがある。当時はトラウマになってしまうほど心に傷を負った。しかし、長い目で見ればそのおかげで自分の市場価値やマーケットニーズを常に意識するようになり、市場感覚が深く身についた。それは今も生きている。塞翁が馬、変化はピンチ、そしてピンチはチャンスなのである。

3. 苦しいのは自分だけではない

人生、生きていれば様々な変化の中で、変化に由来する悩みに直面する。昔は経済力がなかったために、「お金さえあれば解決できるのに」「お金があれば悩みはなくなる」と経済力に立脚する悩みばかり持っていた。

幾ばくかの蓄財を経た今、経済的な悩みは消えたが、その代わりにお金では絶対に解決不可能な課題だけがやってくるようになり、最近はそれについて日々悩んでいる。その悩みについて知人のビジネスマンに話をしたところ、その人物もまったく同じ悩みを抱えていることを吐露、それを聞いて一気に気が楽になったのを感じた。悩んでいるのは自分だけではない、と分かっただけでホッと気が楽になった。

苦しさを感じた時はその悩みで検索するといい。そうすれば同じような悩みを抱えている人が必ず見つかる。

先日聞いた話では、会社をバイアウトして十数億円の資金を得た起業家がファイナンスに由来する悩みで苦しみ、精神科医に相談したがあまりに内容が専門的すぎて解決に至らなかったという。だが、検索すると同じような悩みを抱える起業家が見つかり、同じく気が楽になったといっていた。

世界は広い。世の中で自分だけ苦しんでいる悩みなどないだろう。探せば他にもいる。それをすることで根本的解決には至らないと言われるかもしれない。だが、少しは気が楽になることで、再び前へ進む活力を得られるのではないだろうか。

以上3つが筆者が意識するメンタルの作り方である。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。