統計学でジャンケンに勝つ確率を少し上げる方法(サトウ マイ)

仕事でもプライベートでも、ありとあらゆる種類の判断を求められる中で、もっとも役に立つツールが「確率・統計学」です。難しそうに見えて、実は使える場面はたくさんあり、簡単に計算することも可能です。

例えばスーパーのレジで行列に並んで無駄に時間を取られてイライラする……そんな生活の身近な場面でも統計学は役に立ちます。サトウマイ著「はじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち!?」から一部を抜粋・再構成して紹介します。今回は日常でもよくある、ジャンケンで勝つ確率を上げる方法です。

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じゃんけんで勝ちたいなら「パー」をだせ!?

運に関するゲームで、私たちの一番身近にあるのは「じゃんけん」ではないでしょうか?

手だけを使って、3種類の手の出し方(グー・チョキ・パー)の組み合わせによって、勝敗を決めるシンプルなゲームです。コイントスやクジなどと違い、道具を用意することなく短時間で決着がつくことから、世界各地でじゃんけんに似たゲームが存在します。実はこのじゃんけんに、統計的な必勝法があることをご存じでしょうか?

人間のクセというのは、話し方のクセ、歩き方のクセ、考え方のクセ、そして、選択のクセです。じゃんけんにも、出し方のクセというものがあります。「人によって違うのでは?」と思うかもしれません。

しかし、大きなくくりでとらえると「出す手の確率」が偏っているのです。平等なルールであるはずのじゃんけんですが、身近に「あの人、じゃんけん強いな」といわれている人がいるときは、ここで紹介する「じゃんけん必勝法」を使っているのかもしれません。

2009年に日本経済新聞に掲載された、桜美林大学の芳沢光雄教授による「ジャンケンに関する研究結果」によると、学生725人による、延べ1万1567回のジャンケンの結果、それぞれ出された手の回数は以下のようになりました。

グー :4054回
チョキ:3849回
パー :3664回

これをパーセンテージにすると、以下のようになります。

「グー」を出す確率 :4054/11567=35.0%
「チョキ」を出す確率:3849/11567=33.3%
「パー」を出す確率 :3664/11567=31.7%

グーを出す人が一番多く、次にチョキ、パーの順です。自分がグーを出したときに勝てるのは、相手がチョキを出したときですので、勝つ確率は33.3%です。

同様に、

自分が「チョキ」を出して勝つ確率:31.7%
自分が「パー」を出して勝つ確率:35.0%

となります。つまり、「パーを出すのが最も勝ちやすい選択」ということです。

この勝率の差は「誤差の範囲」ではないかと思うかもしれませんが、統計的に意味のある差であることがわかっています(これを「有意差」といいます)。心理学的には「人間は警戒心を持つと、拳を握る傾向がある」という説のほか、「チョキはグーやパーと比べて出しにくい」という説もあります。

クセというのは、人が無意識時により出やすいので、相手が酔っ払っているときや疲れているときはチャンスかもしれません。また、こちらからじゃんけんを仕掛けるときは「最初はグー」という掛け声をスピードアップし、相手に考える余裕を与えないようにすることで、クセがより出やすいのではないでしょうか。これが、じゃんけん初手(最初になんの手を出すか)での戦略です。

あいこになったら何を出せばいい?

この研究では、「あいこになったときは、次になんの手を出せばいいのか?」についても調べています。その結果、あいこになったとき、次も同じ手を出す確率は22.8%ということがわかりました。

例えば、自分が一度目に「グー」を出し、相手も「グー」を出しあいこになったとします。すると、次に相手がまた「グー」を出してくる確率は22.8%だということです。

もしランダムで「グー・チョキ・パー」を出しているなら、それぞれの確率は1/3(約
33%)になるはずですので、22.8%というのはかなり低いことがわかります。「なんとなく、同じ手ではなく違う手を出したくなる」という選択のクセがあるようです。

それでは、「相手が同じ手を連続して出す確率は低い」ということを利用して、あいこの次の手で勝つ確率を上げる方法を考えてみます。

例えば、自分と相手が同じ「グー」を出してあいこになったとします。次に相手が出す手が「グー」である確率は22.8%ですから、それ以外の手(「チョキ」か「パー」)を出す確率は77・2%(=100%−22.8%)です。ということは、「チョキ」を出しておけば77・2%の確率で負けないということになります。

同じように、ほかの手についても負けない確率の高い手を考えると、一度目にあいこだった手が、

「グーの場合」 :二度目は「チョキ」を出す
「チョキの場合」:二度目は「パー」を出す
「パーの場合」 :二度目は「グー」を出す

これが最善の手となります。覚え方は簡単です。「2人でじゃんけんをしてあいこになったら、次に自分はその手に負ける手を出す」ということです。

サトウマイ 合同会社デルタクリエイト代表社員 データ分析・活用コンサルタント
国立福島大学経済経営学類卒業。一般企業就職後、26歳で独立、データ分析・統計解析事業を始める。現在は企業のマーケティングリサーチや需要予測調査、商品開発支援などを行っている。数学アレルギーから学生時代より文系の道に進むが、統計学と出会いアレルギーを克服。株式会社野村総合研究所主催の「マーケティング分析コンテスト」入賞。学生や社会人向けに、データ分析をリアル謎解きとして楽しみながら、仕事に役立つ実践的なトレーニングを行っている。 URL http://delta-create.co.jp

[サトウマイ]のはじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち?

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年4月7日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。