朝活@カフェムゼウム。
ゼセッション(分離派)諸氏の行きつけだったカフェ。クリムトのベートーヴェンフリーズがあるゼセッション館から一分。
当時は、モースが内装手掛け、彼の椅子に座れた。想像してうっとり。どんな雰囲気でどんな会話がなされてたのかしら。
ここのお菓子はラントマン。安定のザッハートルテとおいしいメランジェで、俺様指揮者に備えて鋭気を養う。
3分歩いてムジークフェライン(楽友協会)へ。
ウィーンフィルハーモニー&クリスティアン・ティーレマン。三日目の今日は、昨日に続き、ブルックナー”シンフォニー8番”。日曜定期午前公演。
ロビーには、ベートーヴェンが死を前にした病床で、薬を飲んだ時に使われたというスプーン展示。
最前列。前すぎて奏者はヴァイオリンとセロ一部しか視界に入らないけれど、指揮者がしっかり見え、前にこの辺りでヤンソンス見た時に気に入ってた。
俺様ティーレマンの動きを堪能しよう、と思っていたら、コンマスのライナー・ホーネックに釘付けになる80分になる。
ホーネックの音色、すーごーいー!
元々このオケのヴァイオリンは、全員で一音みたいなイメージで、一人の巨人が音を紡ぐように聴こけるのだけれど、ホーネックの音がピーンとすごくクリアに響いてくる。目の前の第二ヴァイオリンと違って、楽器の向き的にも、真正面に音が飛び込んでくる席だというのもあるのでしょう。ホーネックの明瞭で存在感たっぷり、そして饒舌なのに周りと調和する音が感動的で、ティーレマン見てるとつい彼の音色に反応して少し視線を左下にずらしちゃう。
オペラグラス越しに弓や手、表情をアップで見ると、8K映像見てるよう。そして心地よい音響。天国だ・・・。
弦セクション全ての厚みと凄み、統一感が圧倒的。骨太で密が濃い室内楽を聴いている感覚。今日はフルートとホルンのソロが普通というのもあるけれど、ウィーンフィルはやっぱり弦(そしてティンパニ)、と改めて感じる。
昨日ものすごかった二楽章は、今日も最高というか絶頂。強く深く雄々しく輝かしい。旋律が怒涛のごとく押し寄せてくるような圧巻の二楽章後、周りでたくさんのため息が漏れる。後ろからはため息と共に、”こんなの聴いたことない・・・”という呟き。横のマダムも、感動に堪えないという目でこちらを見ながら頷いてくる。
昨日の席は金管が響きすぎるけど、ここはヴァイオリンがとてもクリア。クリアでありながら、他の楽器の音ととけあって、うねるような圧倒的な音の波動が全身を包んでくれる。つま先をそっと木製の舞台につけると、楽器や音の振動が伝わってくる。
背の高いティーレマンを一列目から目にすると、文字通り見上げる感じ。シャンデリアの輝きを背景に、ムジークフェラインに威風堂々と君臨してる。脱帽、お見事です。
オーケストラ、ホール、指揮者、プログラム、そしてコンマス(言わせて~。ほんっとにホーネック素晴らしかった)がものすごく高いレベルで揃った、極上演奏会。麻薬?媚薬?洗脳?恍惚?とても正気じゃいられない、魂を持っていかれる至福の80分。は~、これだからウィーンはやめられない。パリでは残念ながら得られない感動と興奮と狂乱。
前日の演奏会はこちらです。(過去の演奏会の様子のリンクもあります)
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。