トヨタのEVシフトへの本気度:自動車大手の巻き返しが始まる

宮古島での陸上自衛隊ヘリ墜落事故は「不可解」のコメントが並びます。墜落の仕方、墜落から5時間後に事故と断定発表、あるいは3月30日に着任した陸自第8師団長は他に優先度の高い業務があるはずなのになぜ宮古島視察を優先したかなどあるようです。調査を待ちたいと思いますが、個人的には事故だろうと思います。ヘリはプロペラ機と違って何かあれば一瞬で落ちるし、低空で飛んでいたので救命具をつける余裕もなかったのは不思議ではないのですが、やっぱり不可解部分は残りますね。

では今週のつぶやきをお送りします。

株式市場は再び視界不良

今週の北米の株式市場は「やる気度ゼロ」。イースターホリディ前の木曜日の3市場の出来高も散々で普段の平均の127億株に対してわずか90億株。その前日も101億株程度です。金曜日は市場がお休みにもかかわらず3月度のアメリカ雇用統計が発表になりましたが、可もなく不可もなくの結果でコメントはありません。とりあえず12日の消費者物価指数の発表を待つことになりそうです。今週の初めにOPEC+の想定外の原油減産発表で原油価格が急騰し、NY市場では80㌦台を回復するもその後はだらだら。金も2040㌦程度まで上がり、史上最高値が視野に入ったと思ったらそれからだらだら。

この視界不良の一因は景気の先行き不安で、来週から始まる1-3月の決算の出方を見たいという模様眺めが強まっているように見えます。基本的には決算は悪いと思いますが、既に織り込みつつあるのであく抜けすることも考えられるし、実際の数字が想定以上に悪ければもっと売り叩かれるシナリオのどちらにも振れます。こんな状況なので投資家も手が出ないのかもしれません。もう一つは信用収縮の可能性ですが、これは日を改めて取り上げます。

概括すると個人的にはハイテクはまだ割安感がある気がします。面白いと思ったのがメタが今週発表したSAM(Segment Anything Model)というAI。これはChat GPTが文章なのに対してメタのそれは画像認識なのです。例えば写真を見て「猫を探せ」といえば猫の写真を拾い出し、切り取れます。これは同社のインスタの次世代モデルになりうる興味深い開発です。同社もフェイスブックからインスタ、仮想通貨は失敗したけどメタバースに画像AIと踏ん張りを見せていると思います。こういう粘りが日本企業にも欲しいですね。

トヨタのEVシフトへの本気度

トヨタの新社長が記者会見し26年度にEV150万台の目標を公表しました。22年度の同社のEV販売は2万4千台ですので4年で62.5倍です。新規に10車種投入するとのことです。EVだけに関して言えばトヨタは完全に出遅れ、かつ、先頭どころか第2集団の背中すら見えない位置につけています。ここから4年で大挽回を図れるのか、佐藤恒治社長の腕の見せ所になります。以前にも意見しましたがEV部門と内燃機関部門は会社を分けた方がよいと思います。工場は当面は共同利用でもEV専用のシャシーを作るでしょうから徐々に切り分けしたらよいと思います。

日本ジャガーの社長をしていた英国人と住宅内のEVチャージャー設置について立ち話。「EVチャージャーの将来が読めない」。私は充電器を住宅の駐車場に一人1台づつ設置する意味はなく全台数分の1割で十分と明言しました。充電時間は確実に短くなるし、1000キロも走ってくれれば街乗りの人は1か月充電しなくてもよいのです。また、ある自動車修理関係の人曰く「テスラは電気製品。だから新品の時はいい。だけどメンテは電気製品の修理並みのレベル。自動車会社のクルマはメンテが必要だという前提でインフラが充実している。だからEVを買うならテスラ以外が良い」と。

私はいわゆる自動車大手の巻き返しがあるとみています。テスラが今回アメリカで再度値下げしましたが、市場シェア確保に動いているのでしょう。ではここで一つの歴史を思い出してもらいましょう。T型フォードとGMの覇権争いです。時は1920年代です。フォードは大量生産で黒いT型フォードを安く売ることに専念していました。当初は市場を席巻しました。が、GMの素晴らしい巻き返しにあっという間に逆転を許したのです。理由はGMは色をそろえ、GMACによる自動車ローンを初めて提供するなどあらゆるマーケティングを展開したのです。つまり、人々は移り気だし、世の中のスタンダードは変わるのです。トヨタは出遅れたのですが、トレンドを見ているはずなので巻き返せると期待しています。

佐藤恒治社長と豊田章男会長 トヨタHPより

中国を持ち上げるフランス大統領

マクロン大統領はウクライナ問題の初期の頃からこの戦いを終わらせることに注力していました。一時は「弱腰」とも指摘され、蚊帳の外に置かれましたが、彼の現在の姿勢は日本の戦前の外交官、幣原喜重郎に通じるところがあります。では中国はといえば、私の見る限りではこちらも停戦派だとみています。ロシアでプーチン大統領に停戦案を示すもその後が見えてきません。一部の情報によると習近平氏はロシア訪問の後ウクライナにすぐに行くオプションはあったようですが、岸田首相がいたのでそのプランが無くなったとされます。真偽のほどは分かりません。

ただ、その後、ゼレンスキー大統領が習氏との会談を受け入れていると表明しているので中国が仲介に入る公算はより高まったとみています。一方、ゼレンスキー氏が今週、ポーランド ワルシャワ入りしドゥダ大統領らと会談しました。ポーランドは第二次世界大戦のとき一時的に国が消滅した過去を踏まえ、ウクライナの存在はポーランドにとって緩衝帯という重要な意味があります。今回のウクライナ問題でも最も明白な姿勢を出しているのが同国であります。また、フィンランドがNATO加盟を果たしたことで体制の違う国が直接的に国境を接するという「嫌な」状況も生まれています。

では両国の落としどころはあるのでしょうか?ひょっとするとまとまる気がします。ゼレンスキー大統領も12項目の停戦案のうちいくつかは飲めないとしているものの箸にも棒にもかからない状態ではないのです。その為にはマクロン大統領はポーランドを説得すべきでしょう。そしてポーランドがウクライナの背中を押すのです。ポーランドのメリットは緩衝帯を維持できるのでNOとは言わないでしょう。ドイツのショルツ首相も全くの弱腰です。と言うより大戦のトラウマがあるので嫌なのでしょう。ここはアメリカが何を言おうがユーラシア大陸で話がまとまるならそれに越したことはありません。逆に岸田氏はG7でマクロン氏やショルツ氏の声をどう受け止め、調整するか、西側のポジションの方向性を決定づける極めて大きな重責を担うことになります。私が総理なら事前に習近平氏と電話会談を申し入れるでしょう。

後記
当地で建築中のグループホーム。予定工期残り6か月で出来高42%。工事責任者に「これ、絶対に工期内に終わらないだろう」と迫ると「役所の度重なる中間検査に部材待ち、スタッフ不足で遅延していたが今後は取り戻せる」と妙に強気。建築工事は出来高曲線というS字カーブがあり、数理的にほぼウソをつかない工程予測が可能です。私は年内に終われば御の字かなと。ただ、予算は収まっているのでほっとしています。RC造では当初予算の5割から8割増しがザラにある中、せめて予算通り、安全に品質を確保してくれれば十分です。これがカナダの仕事のやり方と期待度です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月8日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。