日本は「独特」という言葉をよく耳にします。ガラパゴスともいわれるし、OECDなど世界と比べて日本は極端にかけ離れた統計結果が出ることも多々あります。また、外国人が日本に興味を持つのは確かに観光資源も多いのですが、独特の文化やしきたりが現代でもずっと続いていることは一つあるのでしょう。
私の知り合いのカナダ人夫婦が来週から日本に2週間旅行に行きます。初めての日本ということでいろいろ質問攻めでした。両方のスタンダードがわかっているので「困るだろうなぁ」というポイントはいくつか指摘しておきました。若い人が来る場合はいかようにもなるのです。私の東京のシェアハウスや外国人向けサービスアパートメントなどに滞在する外国人は多くが30代前半までの若い人なので対応力がありますが、ある程度の年齢の方が個人旅行するとなればこれは別です。
そして英語のコミュニケーションが厳しいというのはシェアハウスの住民からの素直な声です。外国人でも本音と建て前を使い分ける国の人はいるものです。カナダ人などはその典型でアメリカ人のまるで包み隠さない表現とはかなり違うので外国人が本当はどう思っていたのかはほじくり出さないと分からないのです。うまくアコモデート(順応できる)ればよいのですが、そうではないと日本のイメージも真逆になってしまうのです。
さて、日本の独自性ですが、江戸時代の鎖国は現代の日本の基盤を作り上げるうえで大きな影響を今でも与えていると考えています。そもそもなぜ、鎖国をしたのか、でありますが、教科書的に外国の影響を受けたくなかった、宗教(キリスト教)が幕府より上に立つことが思想的に許されなかった、貿易の独り占め、幕府体制の保守的防御などいろいろあると思います。
江戸時代は平和過ぎて武士が戦い方を忘れた一方、芸能文化芸術が大きく飛躍しました。またその間に町人、商人の文化や経済流通も独自の発展を遂げました。が、260年はいかんせん長かったのです。日本が諸外国と比べて独自色が強くならざるを得ずガラパゴス化したのは当然であります。明治以降、その独自色はある意味、プラスに働いた部分もあります。
また明治初期、多くのエリート層が外遊に行き、そのギャップに目を丸くします。初期の明治政府は江戸鎖国時代の思想を180度転換します。挙句の果てに朝鮮半島の鎖国は良くないとし、同国を開国させようともするのです。この辺りの変わり身の早さもまた日本人の特性なのかもしれません。
その中で今でも我々の社会に深く根付いた日本の独自性はどこから来るのでしょうか?相当挙げられると思いますが、個人的に思う最も重要なのは宗教観と天皇制だと考えています。宗教観については経典に基づく一神教の影響を排除したことでアニミズムの神道が母体となります。これが「人の上に人を造らず」の思想の原点になっていると考えています。拠り所がない神道ですが、天照大神を神道と天皇家の始祖としたことで、この二つの組み合わせこそ世界唯一の独自性を生み出したと言えないでしょうか?
江戸鎖国時代はこの思想を日本人に深く浸透させたため、「明治の目覚め」はあったものの表層的な諸外国の文化、社会、政治、経済の制度導入に留まったのではないかと私は考えています。つまり、現代社会において西欧流のやり方は社会全般に溶け込み、実務的にも違和感なく浸透しているのですが、根本思想の部分で必ずしも順応しきれていないのが今の日本人ではないか、と感じるのです。
例えば男女格差の問題も企業は様々な形で女性の登用を進めていますが、それは西洋的な指針である役職者や役員、議員の男女比率という物差しで国際基準に達するかどうかを見ているだけです。では日本で女性が働かないか、と言えばとんでもない話で日本の女性は男性と同等の仕事をずっとしてきているわけです。昔の農業や漁業を見ても明白なる分業体制のもと、男女共によく働いてきたのです。
私の見る日本人、それは30年以上も外国に住んでいるからそう見えるのかもしれませんが、わかりやすく言うと頭と体が別々なのです。頭では理解し、リーダーたちは西欧基準を意識し、それに準拠するように旗を振るのですが、カラダがついて行かないのです。なので多くの人は「やらされ感」があるように感じます。
失われた30年とは何なのか、改めて考えてみるとこのギャップが埋められない時代がずっと続いているのではないでしょうか?そしてその間、日本人はより内向的になるのです。若者の外国志向が大きく減ったのはその好例でしょう。一方、韓国は社会経済的に外交的にならざるを得なくなったために経済的躍進を享受することが出来たとも言えそうです。
この題目を単刀直入に明快に答えることは難しいと思います。日本人が日本人のメンタリティをしっかり意識し、自覚していることはむしろ良いことだと考えるべきなのでしょう。日本は妙に外国、特に西洋社会に迎合せず、独自の観点から独自の社会を形成していくという意識が芽生えれば失われた30年は熟成の30年と捉えることもできるでしょう。
実に奥深いテーマであり、議論を深めたい内容であります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月9日の記事より転載させていただきました。