最近、私の仕事時間の一定割合を奪うのが一方的な要求や理解不能な連絡への対応です。なぜそんなおかしなことが起きるのか、少し実情を皆さまと一緒に考えてみたいと思います。
12月末に設置完了した弊社の駐車場のEVチャージャーのうち6台分がなかなか稼働しません。アメリカの運営会社に連絡してもなしのつぶて。忘れた頃に機械の内部のチップ交換が必要だと連絡が来て、そのチップがカナダに配達されるのに2か月以上かかり、そこから更にチップを機器に入れ替えるのに3週間かかっています。日本では絶対にありえないでしょう。
昨年夏、電話会社に依頼して事務所のインターネット回線を光ファイバーに切り替えた際にIP電話に切り替えると更に全体の料金が安くなると売り込まれ、お願いすることにしました。が、その作業はいつまでたっても行われません。苦情を言うにも電話は1-800の番号なのでかけるたびに待たされた挙句、話のヒストリーを一から説明します。それでも何ら対応はされません。その上、何故かそのシステムがいつの間にか稼働していることになっており、勝手に請求書が。「それはないだろう」と文句を再三言うも未払いの請求書は債権回収のサービサーに回され、毎日督促の留守電。ある時、サービサーをつかまえて事情を説明して電話会社に突っ返しました。
日本のケースもあります。ある日突然、シェアハウスの広告ウェブサービス提供会社から「サービスの一部を停止させて頂く」と。理由が記載されていないもののそこには1枚の請求書が添付されています。開けてみると1年前の支払い済みの請求書。ただ、その請求額にダブりがあったため、そのクレームをするもこれもなしのつぶて。しょうがないのでダブり分を差し引いて振り込み、銀行の振込み確認証のコピーまで付けて相手先の経理部の担当者に送るもなしのつぶて。1年経って「あれは未払いだからサービス停止!」。ふざけています。厳しいメールを即座に送ったところ、平身低頭な詫びの返事がきました。
実は書き出せば似たような話はもっとあるのですが、これらにある程度共通している問題があります。それは責任所在が不明瞭なのです。特に初めの2つのケースは北米が最も不得手とする「担当制ではなく、誰でもどの仕事でも対応できる」仕組みを導入しようとしているところに無理があるのです。北米はレストランでもサーバーさんは担当制になっていますよね。あれが北米の歴史的なやり方なのでそれを変えるのはコペルニクス的転換とは言い過ぎですが、それぐらいの変革なのです。
北米で仕事をしたことがある人はご存じだと思いますが、通常は業者の担当者が決まっており、逆に担当以外は全然わかりません。担当が2週間の休暇に出かけて「おい、その間、どうするんだ」と言っても「残念ですが…」というのが北米での第一歩目の洗礼です。ところが、最近見られるのは担当になった人がすぐに会社を辞める、だから担当制を止めて皆でカバーしようという発想でしょう。
そうはいっても、業務、特に法人相手はカスタマイズされているので他の人が突然入り込んでも分からないのです。取引履歴もあるし、会社のやりかたもあります。それを電話やメールだけで解決するのは大変なのです。
これらの問題解決に様々なITやテクノロジー、更にはAIも投入されます。これをよく見ると。労働生産性が一定水準を保っている理由は実際の人間がやる労力の部分は以前と比べて落ちているものの、それらテクノロジーが出来ない部分をカバーしているのではないかという仮説が成り立つのです。
労働生産性の計算式は(生産量)÷(投入した労働力)です。そこにはITとかAIと言ったファクターは入りません。つまり、技術は明白に生産性を上に引き上げているのに労働力がそれを引き下げてかどうか検証できないのです。
アメリカの労働統計局に労働生産性の流れが記載されているのですが、興味深いことに一番高かったのは1947-73年の間でした。74年に石油ショックやベトナム戦争の余波で生産性の指標はそれまでの半分以下になりますが、2000-2007に向けて上昇し、戦後のピークに肉薄します。が、08年のリーマンショック以降、生産性指標は再び半分まで落ち込みます。問題はそれ以降、数字の戻りが鈍いのです。明らかに何かがおかしいのです。
例えばリモートワークの弊害はあるのでしょう。これを過渡期と見るのか、労働生産性はもう昔のようにならないと考えるべきなのか、実に悩ましいのです。
ところで私は6つも7つも事業をしており、賃貸の顧客だけでも数百人いて定期的に賃料を頂いているわけですが、絶対に間違えないという自信があります。顧客とのやり取りと資金回収は私ともう一人で手分けしてやっているのですが、お互い数百のアカウントを熟知し、履歴も分かっているのです。備忘用のログもあります。私どもはハイテクではありません。業務の効率化は高いと思いますが、特別のソフトウェアを使う訳ではありません。でも1セントたりとも絶対に間違えないという仕事を長年しているので顧客からは圧倒的信頼があるのです。
結局、機械に頼り過ぎず、執念をもって仕事をすることが最も重要ではないか、と今更ながら思うのです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月13日の記事より転載させていただきました。