天下り規制を骨抜きにした民主党

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産経、朝日、毎日がそろって社説で「OBによる天下りあっせん禁止」を求めています。

【主張】元次官の人事介入 天下り規制の強化を急げ
 本田勝・元国土交通省事務次官(東京メトロ会長)が上場会社の「空港施設」に対し、許認可権限をちらつかせて同省出身の副社長を社長に就任させるように求めていたこと…
社説:国交省OBの人事介入 天下り規制ゆがめる圧力 | 毎日新聞
 公権力をかさに着た、露骨な人事介入と言わざるを得ない。  国土交通省元事務次官の本田勝氏(69)が昨年12月、民間企業に対し、同省出身の副社長(63)を社長に昇格させるよう要請していた。本田氏は現在、東京メトロ会長を務めている。
(社説)「天下り」介入 自浄能力見えぬ国交省:朝日新聞デジタル
 国土交通省の元事務次官が「天下り先」の企業の役員人事に介入していた。役所の方針であるかのようにほのめかしており、行政の公正性を揺るがす行為だ。報道で露見した後の国交省の調査も不十分で、理解に苦しむ。…

論調が全く異なりがちな産経と朝日・毎日の意見が合致するほど、今回の国交省OBの事案はあまりにひどい話です。

天下り規制を第一次安倍内閣で導入した際(2007年)に担当していましたので、コメントしておきますと、

1)まず「職員によるあっせん」だけの禁止では必ず「OBによるあっせん」が出てきて骨抜きになるとの危惧は当時も議論されていました。

しかし、当時は、

  • 退職後まで長期にわたって行為規制を課す必要性・合理性(いわゆる立法事実)が必ずしも十分でなかったこと
  • 一方、OBだけであっせんを行うのは基本的に難しく(それでは、退職勧奨と連動できない)、一般には必ず職員(人事当局)もあっせんに関わるはずであること

から、「職員によるあっせん禁止」だけにとどめました。

2)残念ながらその後危惧は現実化し、「OBによるあっせん」がどこの省庁でも当たり前になりました。

これは、天下り規制が骨抜きになったというだけにとどまらず、「OBが人事に関わって実権を持つ」という極めて不健全な状態をももたらしています。

ここまで立法事実が積み重なった以上、「OBによるあっせん禁止」を導入すべきです。

3)こんな状態になってしまった要因は、当時の民主党の対応です。

2007年の天下り規制は、「職員によるあっせん禁止(→違反行為がなされていないかを監視委員会で監視)」+「官民人材交流センターへのあっせん一元化(→透明性の高いプロセスでの再就職へ移行)」でした。

これに対し、当時の民主党は、「これではザル規制だ」と強く批判し、批判だけならよかったのですが、批判を行動に表し、監視委員会の国会同意人事を拒み続け(2012年まで)、官民人材交流センターは形骸化しました。

結果として、天下り規制は導入されたものの、監視機関は実質不在、一方、移行すべき出口はふさがれている状態になりました。その間に「OBによるあっせん」という悪しき慣行が全省庁で確立したのです。

4)ここまで異常な慣行が強固に確立し、明るみにも出た以上、単に「OBによるあっせん禁止」にとどまらず、より透明性の高い再就職(本人の能力・実績に基づく再就職)への転換のため、規制を再構築する必要があります。

(なお、以下は岸博幸さんと話した際の動画ですが、この点概ね同意見でした)