岸田政権が花粉症問題に手を付けることを表明した。その後も矢継ぎ早に対策を打ち出している。長年、熱心に活動してきた山田太郎参議院議員の質問に答えた形だ。ちなみに私は前回の記事のお陰で読売テレビ「朝生ワイドす・またん!」にも出演させてもらった。
(前回記事:花粉症対策こそ働き方改革(その1))
岸田総理が「国の社会問題」「花粉症の対策に取り組む」との発言をしたが、相当世論を意識している。今回の背景にはやはり、「異次元」子育て支援を打ち出したことが、支持率アップにつながっていることに起因すると思われる。ある意味、味をしめたということだろう。価値観が分かれるテーマを進めるよりも、国民の生活のために頑張ればそれなりに評価されるということだ。
花粉症の問題は、これまでも各省庁の担当者は頑張っていたのだが、なかなか縦割り組織で苦戦してきた。そこに首相は強力なリーダーシップを発揮して問題解決を図ろうとしているのだ。自民党の山田太郎議員や事務所の秘書さんたちが以前から熱心に活動していたことも見逃せない。
政治的な意味では、小池都知事との政策競争もあったと思う。前回の子育て施策においては小池都知事の18歳以下の子供に月2万円の給付をアピールされてしまい、結果的に一本取られた感じだった。しかし、今回、「花粉症ゼロ」を掲げて5年以上あまり成果がでていないことへの意趣返しのような感じになった。素晴らしいーカウンターというところだ。
スギ・ヒノキをもっと伐採するしかない!
日本の国土面積(3,779万ヘクタール)の約7割を森林面積(2,505万ヘクタール)が占めていて、自然林と人工林があって、人工林の面積は1,020万ヘクタールで、森林面積全体の約4割になる。
終戦直後や高度経済成長期に伐採跡地に造林されたところで、伐採し、活用するべき時期を迎えたスギやヒノキが多いのが、花粉がまきちる原因になる。
しかし、私有林は所有することが負担になったり、間伐できなくなったりしている。そのため、下生えがなくなり、地表の栄養を含んだ土は雨で流れ、杉の成長も止まったりしている。
以前の記事で書いたように、安価な外国材が流入し、林業が儲からない、間伐しても輸送コストがかかり経済的に見合わなくなってしまった。国産材の需要が低くなり、行政も予算不足で問題解決に立ち向かえない現実が長く続いてきた。問題構造をまとめると以下の図のようになる。
深刻な被害、国民の3割だったのが約5割に?
しかし、この問題構造が継続していて、何が起きたかと言うと花粉症患者の増大だ。被害はすごい。東京都では10年ごとに調査をしているのだが、昭和58ー62年は花粉症罹患率が10%、平成8年で19%.平成18年で28%、平成28年で48%となっている。岸田首相が言ったように深刻な「社会問題」といえる。
健康面での被害は程度も度合いも様々であるが、国民へは違う次元でも大きな負担を与えている。
第一に、仕事の労働生産性の低下が激しいことだ。一定期間、皆さんの仕事の生産能率が落ちまくってしまう。グラクソ・スミスクラインが2008年末に実施した調査では、生産性の損失が1日当たり平均5949円(その根拠は「作業が2時間遅れる」こと)だそうだ。
第二に、花粉症対策での家計の出費がある。わざわざマスクを買ったり、花粉症の薬を買ったり、しなくてはならないからだ。結構な額になる人もいるし、余計な経済的負担である。
第2回「花粉症意識・対策実態調査」(アサヒ飲料実施)によると「花粉症対策」にお金をかけている人は花粉症自覚症状者全体の80%であり、金額1ケ月平均は2,300円/月とのこと。また、旧科学技術庁の「スギ花粉症克服に向けた総合的研究」によると、医療費と市販薬、マスクなどの医療関連費は合計で約2259億円である。本村賢太郎さんによる「花粉症対策に関する質問主意書」よると7500億円の経済影響とも言われている。結構な経済的損失だ。
SDGs推進、働き方改革と林業再生で「新しい資本主義」!
最近の動きとしては、「ハクション議連」が再開したり、各省庁横断型の取組みが進むなど、「結果」を残すため邁進している岸田政権。今後も是非ともリーダーシップを発揮してもらいたい。働き方改革の文脈、林業の再生、山間地防災対策、SDGsへの貢献と言う意味で、まさに「新しい資本主義」のメインテーマと言えるからだ。
まずはスギ・ヒノキの大規模伐採を進めて、花粉がでない林へ置き換える、そのスピードを「異次元」なレベルで加速することが先決であろう。伐採した木材の利用についても、チップ化でのバイオマス発電への活用、施設建設時の木材利用促進などSDGsに貢献できる。ヘルスケア産業への研究開発支援などもSDGsである。
財源は?と思うだろう。国の保有する資産の売却、事務事業の見直し、政策評価や行政事業レビューを本気でやれば可能である。岸田政権に期待したい。