財政破綻は必ず起きる
毎年巨額の国債を発行して止まない日本政府。日本の負債総額はおよそ1240兆円。名目GDPは550兆円。即ち、日本の負債はGDPの225%ということになる。負債大国の日本。日本の国債は円建て国債だから安全だ、財政破綻することはない、という経済専門家も多くいる。果たしてそうであろうか?
現在までの毎年の国債発行高がこの先も維持されるとして、一方のGDPが仮に毎年2%の成長を遂げたとした場合に10年先の負債総額はGDPの400%を軽く超えてしまう。中部社研の2021年の経済レポートによると、この先10年間に400%を超えると、国の財政破綻確率は50%と試算している。500%を超えればその確率は60%になるという。
https://www.criser.jp/bunnseki/documents/29_report_gyanburuwotudukerunihonzaisei_2021.03.09.pdf
一方、2025-2035年の間に関東直下型地震と南海トラフが起きる可能性は70%。この二つの地震が連鎖的に発生すれば富士山が再噴火することはほぼ間違いないであろう。この二つの地震の発生による損害そしてその復興費を予測すると、日本が財政破綻するのは間違いない。この復興費を賄える資金はもう日本にはないからである。
しかも、それは国債を発行して賄える費用ではない。国債で賄おうとしたら一度に巨額の国債を発行せねばならず、それを民間の金融機関が引き受けるだけの資金的な余裕はない。これまでさんざん引き受けて来たからである。まだ余裕が仮にあったとしても、それを引き受けようとはしないであろう。なぜなら償還が期待できないからである。
それを日銀が直接引き受けられるように法改正をすれば可能に見えるが、その法改正は容易にできない。またそれをしようものなら日本円への国際的信頼は失われ円の暴落が始まるのは必至である。
スペインにRUMASAという銀行を抱えた企業グループがあった
日本円という自国国債だから財政破綻しないという推論の無理についてひとつ具体例を挙げることにする。
1961年にスペインでRUMASA(ルマサ)という企業が誕生した。創業者はホセ・マリア・ルイス・マテオ氏で、アンダルシア地方のへレス・デ・フロンテラ市で父親がシェリー醸造所を経営していた。彼はこの事業を土台にして事業を拡大。1970年代にはスペインでRUMASAの傘下にある企業は400社を数えるまでに成長。全社の従業員は6万人を数え、スペインのGDPの1%を担う企業グループに成長した。このグループ全体の年商は3500億ペセタ(20億ユーロ)。
この企業グループで彼が築き上げた「妙案」は、このグループの中に27行の銀行を加えたことだ。地方の中堅銀行を彼の傘下に入れたのである。その中で最大の銀行はバンコ・アトランティコであった。それ以外にホテル、ワイナリー、総合デパート、食品、薬品、化粧品、建設、不動産などの会社が存在していた。スペイン代表のファッションブランドとして世界的に知れているロエベ(Loewe)もその傘下に加わっていた。
筆者が言及した「妙案」というのは、彼の傘下の企業のメインバンクは常にこの27行にさせたのである。即ち、資金操作、融資、手形割引などでこの27行が協力したのである。そして取引も400社の中で出来るだけ多くさせて、在庫調整でもグループ企業内で実施。実際には赤字経営でもグループ銀行の支援もあって黒字に転化させていた。
しかし、経営不振を隠せないところがあった。社会保障費のグループ全体でユーロにしておよそ6500万ユーロ(78億円)、税務署への未払金(従業員の所得税など)が1億1600万ユーロ(140億円)などが滞納金として存在していた。また、スペイン銀行が要求していた会計事務所からの監査も拒否し続けていた。このグループの企業が正常に機能していれば、良い企業だというイメージを維持すべく公的機関への滞納金も存在していないはずだし、監査も受け入れていたはずであった。(Rumasa ウィキペディアから引用)。
スペインで社会労働党政権が誕生した3か月後の1983年2月に政府はこの企業グループの経営不振はスペイン経済に多大の損害をもたらすとしてRUMASAを政府が押収したのである。それは違法であるという意見もあったが、最終的に憲法裁判所が押収は合法であるという判決を下した。
アーサーアンダーソンが監査した結果、グループ全体の負債総額はユーロにして15億ユーロ(1800億円)という結論をくだした。今から40年前の出来事であった(3月13日付「ABC」から引用)。
彼は政府の押収に不服申し立てとして200以上の控訴をしたが、相手は政府だ、全て却下された。その彼も尊大さと偏執性とで家族からも見離されて2015年9月に84歳で亡くなった。
筆者は彼とマドリードの空港ですれ違ったことがある。ダブルスーツ姿で胸ポケットにはチーフで飾り、体全体にエネルギーが満ち溢れいる印象を受けた。あれは1980年代のことで、RUMASAの全盛期の頃であった。
アルゼンチンに似ている日本
筆者がRUMASAの例を挙げたのは、27行の銀行をグループ内に抱えてそこから必要な資金を仰ぎグループ企業に資金面で協力させたということ。即ち、グループ企業内の枠から必要以外は出なかったということだ。
これは直接比較はできないが、日本政府が必要時に赤字財政を補填するのに国債を発行して民間金融機会を介して日銀に頼っている今の日本政府の姿と筆者には二重に見えるのである。
その一方で、日本政府の負債は留まることなく増加している。外部から監査に入ることはない。それはこれまで9回のでデフォルトをしたアルゼンチン政府のやり方と良く似ている。即ち、アルゼンチン政府の毎年必要なだけの資金を補うべく紙幣を発行し、ドル建ての国債を外国に売り、財政緊縮をしたことがない。そして、歳出は留まることがない。
日本は、国債は円建てで、米国の1番目か2番目の債権国であり、対外資産は400兆円あると言っているが、それらが容易に現金化できるわけではない。しかも、国債もいずれは民間金融機関が引き受けられなくなる。即ち、日本政府に資金が不足して支払いができなくなり、公務員への給与の支給もできなくなるということなのである。
当選するための票が必要な議員に対して、有権者に犠牲を強いる財政緊縮に本格的に取り組むことなど全く期待できない。
破綻すれば自分のお金も銀行から自由に出せなくなる
こららのことを鑑みると、日本政府は上述した大地震が発生すると財政破綻するということ。仮に地震の発生が少し遅れても破綻から逃れる可能性はない。
筆者が残念に感じるのは、これから将来に夢を描いて成長して行かねばならない子供たちにとって未来がなくなるということだ。
何故なら、一旦破綻すると、銀行から自由に自分のお金でさえ引き出せなくなる。企業が多く倒産する。失業者が増える。インフレの上昇もある。そして、円建て国債の負債を返済して行かねばならない責務が今の子供たちが大人になった時に背負うようになる。
このような厳しい未来に仕向けているのが今の政治家である。そして、これまで国の将来の発展を考えることなく無責任な議員を当選させてきた日本の有権者にも責任がある。