『エリザベス女王~幼なじみ・元側近が語る秘話~』(NHKBSプレミアム)という番組が4月29日の9時30分から放送されていた。
そのなかで1975年の訪日について、『英国王室と日本人:華麗なるロイヤルファミリーの物語』(小学館 八幡和郎・篠塚隆)でも紹介したようなことが扱われていた。
この訪日については、すでに「エリザベス女王新幹線乗車をストで中止させた国鉄労組」でも少し紹介したのだが、放送で多くの人が興味を持たれていたので、少し細くしておきたい。
すでに上記記事で『エリザベス女王は、昭和天皇との会話は実り多いものだったようで、「女王は孤独なものです。重大な決定を下すのは自分しかいないのです。そしてそれから起こる全責任は自分自身が負うのです」「この立場について教えを受けるために地球を半周して来たのです。感謝で一杯です」などとおっしゃった』ということを書いたが、もうすこし詳しく紹介すると以下のようなことだ。
女王は孤独なものです。重大な決定を下すのは自分しかいないのです。そしてそれから起こる全責任は自分自身が負うのです。法律的には色々な免責その他の方途はあるかもしれませんが、女王として道義的に負う責任に変わりありません。
私には数多くの助言者がおります。私の夫はその最たるものです。そして王室関係者、政府関係者が献身的に、責任を持って事にあたってくれます。心から感謝しています。しかし歴史に裁かれるのは私であると覚悟しております。
この立場が分かっていただけるのは、ご在位50年の天皇陛下しかおられません。私も在位23年でかなり長いのですが、陛下は私の倍以上です。
戦争と平和を国民とともに歩まれた方ですので、この陛下のお言葉から、私は私自身にも分からない将来のことについて教えられることが多いでしょうし、自分が教えを受けられるのはこの方しかいないと信じて、地球を半周して来たのです。
十分報われました。陛下のひと言一言に、私は多くの、そして深いものを感じました。感謝で一杯です。(『皇室』第47号、扶桑社、2010年。この『皇室』という雑誌はまじめな立場から皇室問題を扱ったもので非常に良い雑誌だ)
首相外交でもそうだが、皇室外交も、別に儀礼的なやりとりをしたり、訪問国の国民に手を振ったり、産業や観光地をまわって双方の国民を教育することも大事だが、首脳同士や君主同士で悩みを打ち明けアドバイスをもらうのも大事な目的だ。
英国王室との交流についても思うのだが、昭和天皇は別として、英国の女王や王族と国王のあり方について腹を割った会話はできているのだろうか?
少なくともそういう会話をしたと平成の両陛下やエリザベス女王が仰ったこともないし、今上陛下の留学医などを見ても、紅茶を入れてもらったとか、オペラを見に行ったとかいう話はいろいろあるが、君主としての心構えをどのように教えられたかといった話は出てこない。
昭和天皇の欧州旅行や皇族たちの留学記などを見ると、何を学んだ、どんなアドバイスを昭和天皇はジョージ五世から得たかなどということがかなり詳細に出てくる。
表には出てないが、本当はかなり突っ込んだ話をされていたということならいいが、そうでないとしたらこれからは改善されるべきだ。
また、本当は突っ込んだ話をしていたというなら、戦前より情報公開が後退しているということになり、それはそれで問題だ。
皇室の方々が海外でどういう教訓を得たということは、ある程度は国民と共有するべきだし、また、こういうように思うがどうかと皇室の方々が話し、それに対して、それはぜひ取り入れてほしいとか、国情の違いもあるから採用できないとか議論してこそ進歩があるのだと思う。
君主は生まれながらに優れた資質を持っているわけではない。それを育てる伝統、側近、政治家、そして国民がともに成長させていくシステムがあってこそ、その存在価値がある。
■