銀座高級腕時計店の強盗事件から思うこと

谷本 真由美

先日、日本では銀座の目抜き通りにある高級腕時計店が、強盗に襲われるというショッキングな事件がありました。

私はこの事件をニュースで見ていて、私の著書である「世界のニュースを日本人はなにも知らない4」でも指摘している日本の平和ボケの例の一つだなと感じました。

まずこのお店の前を事件の最中に普通に歩いている人々がたくさんいたことです。

犯人達がガイ・ホークスのお面をつけていたので、テレビの撮影か何かと思ってしまった人がいたようです。コスプレした集団のびっくりかなと思った方もいたのではないでしょうか。

しかもその方々が強盗たちの作業をスマホで撮影して眺めているのです。

Prostock-Studio/iStock

私はこれを見ていてゾッとしました。

欧州ではこういった強盗集団やテロリストが爆弾や化学物質、銃、ナタや斧を持っているのが前提ですから、店舗に近づいたり眺めるような人はいません。

とっさに取るべき行動はまず逃げることです。

しかし、日本人はこういう事件に遭遇することに慣れていないので、いかに危険性が高いかということがわかっていないのです。

犯人がそういった危険物を持っているということを言うと、冗談を言っていると思う日本人があまりにも多いのですが、これは海外の強盗事件や銃乱射事件を見ていれば納得できるはずです。

またお店のドアを閉めようとしていた女性がいましたが、これも危険極まりない行動です。犯人が爆発物を持っていた場合は爆発に巻き込まれます。口封じのために化学物質や銃、刃物で危害を加えてきます。

2点目に日本人はコスプレに慣れてしまっているあまり、街中の怪しい格好をした人間に警戒心が全くないということです。

欧州や北米ではコスプレの下に銃器や武器を隠して人を襲う犯罪者がいます。そのため街中でコスプレをして歩いているような人間は職務質問に会うことが珍しくありません。

ハロウィンの時期であっても仮装した人間の近くには近寄りません。覆面で顔を隠してあるので犯罪に及ぶのが簡単だからです。子供にも仮装した人間には近寄っていけないとしつこく教えます。

コスプレをするのは学校や会員制のクラブなど、限定した人が入れる場所だけです。

どうかコスプレした人間の中には危険人物が少なくないということを認識してください。

3点目に銀座の事件動画に映っていた人々の多くは、ロングスカートやハイヒールの人がいたということです。手には手提げを下げています。

つまりこれは襲われた場合に逃げられないということです。

欧州や北米は街中では女性も大変スポーティな格好をしていることが多く、ヒールを履いている人は多くありません。これは犯罪があった場合に走って逃げるためです。そしてリュックを背負っている人が多いのです。手提げカバンでは走って逃げる際に邪魔になります。

これだけ多くのテロや乱射事件に遭遇していれば、なぜかということはお分かりになると思います。命に関わることですから、ファッションを優先することができません。

4点目に、犯人の中に未成年がいたことに驚いている方がいるようですが、これは欧州では何年も前から当たり前のことです。

特に私が4年間住んでいたイタリアでは、強盗や空き巣の少なからずが未成年でした。未成年であれば罪が軽くなるため指示役が作業をやらせるのです。簡単に無罪になりますから、また犯罪を繰り返します。

事実、私の知人の日本人の家もフランス人の家も、夏のバカンスの時期に空き巣に入られて部屋が空っぽになるほど物を盗まれましたが、犯人は複数の未成年でした。海外からやってくるプロの窃盗団 も少なくないのです。

彼らは短時間で作業する訓練を受けているので実に鮮やかに作業を行います。ただし 武器を持っていることも少なくありませんから絶対に抵抗してはいけません。

景気は今後ますます悪化していきますから、こういった事件は増えていくはずです。日本の皆さんには安全はもう過去の話だということを前提に、普段から逃げやすい服装やカバンにして、怪しい人間をなるべく早く察知する勘を磨き、店舗やオフィス、自宅の物理的なセキュリティを強化していただきたく思います。

また、逮捕に当たった警官の方々が丸腰に近い状況なのにも驚きました。

警察官の方々の命を守るために、どうか普段からボディアーマーなどの防護やボディカムなどの装備に投資をしていただきたいものです。日本はもう安全な国ではなく有事も迫っているのですから。